「臭いものにフタ」という言葉があるが、逆に臭いものほど嗅ぎたくなるってこと……あると思う。

当サイトでは過去に世界一臭い食べ物「シュールストレミング」の記事を何度か公開してヒットしているし、「くさいはエンタメ」というのは間違いないと思っている。

そんな中、東京・調布市にある神代植物公園で世界一巨大で臭い花「ショクダイオオコンニャク」が咲こうとしている……という情報をゲットした。なんだそれ、めちゃくちゃ嗅ぎたい! 

・数年に1度しか咲かない謎多き花

「ショクダイオオコンニャク」はサトイモ科・コンニャク属の植物で、インドネシア、スマトラ島の熱帯雨林に自生する植物。特徴をざっくりとまとめると


・世界で最大級の花を咲かせる
・開花後に猛烈な悪臭を放つため、別名「死体花」と呼ばれる
・最短でも2年に1度、2日程度しか咲かない


という感じ。要素てんこ盛りすぎる。なんか中学生男子の「俺が考える魔界の花」みたいな感じだけど、これが自然界で生まれたというのがすごい。

ちなみに、和名の由来はろうそくを立てる燭台(しょくだい)に花が似ていることから。数年に1回しか咲かない謎多き花として研究が進められ、2000年頃からじょじょにその生態が解明されつつあるらしい。国内でショクダイオオコンニャクを育てているところはわずか。葉っぱを出すところまではそこまで難しくないが、花を咲かせるのが難しいらしい。

・神代植物公園
・筑波実験植物園

は同一株から5回花を咲かせたことがあり、日本タイ記録らしい。

・特殊な形での開花に翻弄される人々

今回は芽から葉と花が同時に出たということで、かなり特殊な形での開花になっている。なんとこの咲き方は日本初! 世界でも2例目らしく、開花の目処が立てづらく大変だったらしい。

ショクダイオオコンニャクの花が咲くかもしれない……と神代植物公園の公式Twitterでお知らせされたのが、11月22日。

知らせを見てすぐに取材申請をしたときに「だいたいあと10日くらいで開花になると思います」と教えていただいたのだが、なんと実際に花が咲いたのは約30日後の12月19日!

その間、11月下旬から、いつ花が咲くか分からないということで、神代植物公園は休館日である月曜も臨時開園すること3回……。

年末の忙しい時期に、スタッフの方は3日も休日返上していたのである。本当にお疲れさまでした……。


・一番臭いタイミングでニオイを嗅いでみる

ショクダイオオコンニャクの花が咲くのは夕方から夜にかけてで、一番ニオイが強烈になるのは花が咲いた日の夜。

そこから次第に香りは弱くなり、2日後には花も枯れてしまうという。

というわけで、開花のしらせを受けて、閉園後の神代植物公園に取材に向かった。

真っ暗な森を抜けて、職員の方に案内してもらいながら、ショクダイオオコンニャクのある大温室へと向かう。職員の方に「くさいけど大丈夫ですか」と言われる。こちらとしては、臭ければ臭いほどテンションが上がるが、そこまで言われるとドキドキしてしまう。

やがて大温室の前につき、扉を開けた瞬間……。


く さ い !!


ここはまだ入り口で、ショクダイオオコンニャクの展示エリアからはまだ遠いはず。なのに、猛烈にニオッてくるのだ。私の予想では、ショクダイオオコンニャクの半径1メートルくらいでムンムン匂いがするもんだと思っていた。

しかし、何十メートルも離れて、しかもその間にドアが2つくらいあるにも関わらず、はっきりとニオイが漂ってくるのだ。これは予想以上だ!

その独特のニオイを例えるとすれば……夏の生ゴミ捨て場。

肉が腐ったようなニオイ、などと聞いていたが、私がまっさきに思い浮かべたのはゴミ捨て場だった。やがて展示エリアに近づくにつれニオイは強くなり……

泉の真ん前に、巨大なショクダイオオコンニャクが展示されていた。たしかに大きい! なんでも、閉園後の5時ごろからニオイが強烈になったらしい。

ネットでよく見る左右対称な花の画像とは違っていて、右半分に大きな葉っぱが育っていて、左半分に赤紫色の花が咲いている。アシンメトリーでなんとも特殊な形。

3メートル近い大きさの花が咲くこともあるそうだが……

今回は葉っぱと花が同時……という特殊な咲き方だったためか、やや小ぶりで150cmほど。

まるで現代アートのオブジェのようで、めちゃくちゃかっこいいではないか〜! 

夜の温室の雰囲気の良さも相まって、いろんな角度から鑑賞したくなる。まあ、臭いんだけど。


脚立を使って、特別に花を覗き込んでニオイを嗅がせてもらったところ……


めっちゃくさい! 


近くに寄ると、お祭り会場とかフェス会場に置いてある簡易トイレみたいなニオイがするではないか。

・そもそもなんで臭いにおいを発するのか

花は蜜や甘い香りを出して、虫に受粉を手伝ってもらったり、鳥たちに種子を運ばせることで繁殖していく。だいたいきれいな花を咲かせたり、甘い香りを放つもんだと思っていたが……なんでわざわざ臭いにおいを発するのか??

話を伺ったところ、花の根元の部分から強烈なニオイを発して、動物の死骸などに寄ってくる虫たちをおびき寄せて繁殖するらしい。


・不思議な植物の多様性

こうした植物を育てる理由を聞いたところ「面白さや希少性ももちろんあるけれど、ショクダイオオコンニャクは絶滅危惧種なので未来に向けて種を残したいという気持ちがあります」と答えてくれた。ロマンである。

1時間ほど展示室にいたのですっかり鼻が慣れてしまったが、帰り道、時折ふっと、ショクダイオオコンニャクの独特のニオイが香る瞬間があった。

神代植物公園では12月21日まで特別に8時半からの早朝開園を実施中。独特の香りは薄くなっているかもしれないが、本当に希少な花なのでぜひ見に行ってほしい。

ショクダイオオコンニャクの強烈なニオイからは、なんとしてもこの世界で生き残ってやるぞという花の意思のようなものすら感じた。可憐で美しく、香りのいいものばかりが花じゃない。強烈なニオイと存在感で個性を放つショクダイオオコンニャクよ、世界の不思議よ永遠に!! 


・今回訪れた場所の情報
施設名 神代植物公園
住所 調布市深大寺元町二・五丁目、深大寺北町一・二丁目、深大寺南町四・五丁目
時間 9時30分~17時00分(最終入園は16時まで)
※ショクダイオオコンニャクの開花が始まった日の翌日・翌々日のみ早朝開園実施
8時30分~17時00分(最終入園は16時まで)
休園日 月曜日(祝日の場合は翌日)、12月29日~1月1日
入園料 一般 500円、65歳以上 250円、中学生 200円

参考リンク: 神代植物公園プレスリリース
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.

▼夜の温室の雰囲気も良かった……夏に夜間開園するときもあるそう