持論だが、お金がないときに美味しくないものを食べると、めちゃくちゃテンションが下がる。金欠のときでも、なるべく美味しいものでお腹を満たして幸福を感じたいものである。

「300円の極上幸福セット」は食い意地だけは張っている贅沢貧乏の私が、前職の超金欠時代に追求していた「そのへんのチェーン店の安くて美味しい組み合わせを紹介していく」という不況応援企画。

円安&物価高騰が財布を直撃する今、みなさんのお役に立てれば幸いである。


・はなまるうどんの「かけ」と「いなり」

当時、一番お世話になっていたのは「はなまるうどん」のかけ(小・当時105円)だった。

ロケットニュース24編集部は丸亀製麺派が圧倒的に多いが、香川出身の知人に「丸亀は香川発じゃないけど、はなまるは香川で創業してる」と聞いて以来、私ははなまる派なのである。

とはいえ、1杯105円だからといって、かけうどん(小)だけでは物足りない。

サイドメニューの天ぷらなどをいろんな組み合わせを試しつつ、最終的に行き着いたのが「かけうどん ✕ ごまいなり」の組み合わせだった。当時は2品で220円だったが、小麦の高騰などもあり今はかけうどん(小)は240円らしい……。

 ・かけうどん(小)240円
・ごまいなり 1個 110円

で、現在はしめて350円の組み合わせである。シンプルだが奥が深い組み合わせだったのである……!


・シンプルだが奥が深い

まず、かけうどんに加える薬味で自分好みに味をカスタマイズできる。ネギや七味をかけると彩りもよく、風味も増して「かけ」の物足りなさがなくなる。天かすを入れると、コクが増す。


温かいだしの味と七味のぴりりとした風味を味わったあとに……

「ごまいなり」をひとくち……。

おあげから甘辛い味わいがジュワっとしみ出し、シャリに含まれたごまの風味の香ばしさが鼻に抜ける。

口の中にまだいなり寿司の甘さが残った状態で、温かいうどんの出汁をすする……。


それはもう「あの日 あの時 はなまるで君に会えなかったら〜」と、頭の中で『ラブ・ストーリーははなまるで』が流れ出すほどの完璧な組み合わせであった。当時220円とは思えぬ満足感を感じていたのを覚えている。

たった2品の組み合わせなのに、質素でリッチ。完璧すぎるマリアージュで、私は毎日のようにはなまるで「かけといなり」を頼み続けていた。

思うに、この組み合わせはたった2品で


・うどんだしの塩気
・いなり寿司の甘み
・酢飯の酸味
・ごまの香ばしさ
・七味の辛さ
・ねぎの香味
・出汁のうまみ
・天かすと油揚げの油分


と、味覚の要素がみちみちに入っているためバランスがいいのではないかと思う。美味しさの五角形みたいなグラフがあったら、完璧に近い形を描きそうだ。うどん屋でいなり寿司を出そうとした人は天才だと思う。


・鉄板の組み合わせだけど…

記事を書くために久しぶりにこの組み合わせを食べたのだが、やっぱり今でもシンプルながら美味しかった。

かつて江戸の庶民は贅沢を禁じられ、質素・倹約を強いられたときに「粋」なる美学を生み出したという。きっと、うどんといなりの組み合わせも「粋」なのだと思いたい。

別にはなまるうどんに限らずとも、うどんといなり寿司は鉄板の組み合わせである。だが、これを全国どこでもセットで350円で食べられるというところが、はなまるの良さだと思う。

まあ、ほんとは焼き肉でも食べて、パーッとやりたいところだけど……。なんとなく500円以内で自分が幸福な気持ちになれる選択肢をいくつか持っておくと、ちょっと生きやすくなる気がする。


参考リンク:はなまるうどん
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.