タクシー運転手に「地元で一番うまい店」へ連れて行ってもらう本企画。今回はシリーズ初の海外・タイ(バンコク)編だ。タイといえば三輪タクシー『トゥクトゥク』が名物。今日はトゥクトゥクのドライバーに「一番うまいタイ料理屋」を紹介してもらう予定なのである。
しかしながら、バンコクのトゥクトゥクは基本的に外国人観光客をターゲットとした商売。中には根性の悪いドライバーもおり、運が悪ければボッタクリ店などへ連れ込まれかねない。
そこで私はバンコク中心部を離れ、あまり観光客が行かないエリアでトゥクトゥクを拾う作戦を立ててみた。チョッピリ不安だが……ま、行けばなんとかなるだろ。
・ローカルバンコクを歩く
バンコクを訪れる観光客の行動範囲は、カオサンからスクンビット周辺あたりまでが一般的。今回、私はチャオプラヤー川の西側『ウォンウェンヤイ』と呼ばれるエリアへ足を延ばしてみた。タイへ来るのは20回目くらいだが、初めて訪れる場所である。
BTS(バンコクのスカイトレイン)を乗り継ぎ、目的のウォンウェンヤイ駅へ。
う〜ん、なんだか殺風景な駅前! 調べによるとBTSウォンウェンヤイ駅から2〜30分ほど歩いた先に “国鉄のウォンウェンヤイ駅” があり、周辺は古き良きバンコク人の暮らしが垣間見られるのだそうな。
地図を頼りに国鉄駅方面へ進むと、次第にこのあたりが “問屋街” であることが分かってきた。
お、猫ちゃんみっけ!
布、壁紙、金具に塗料……ここは様々な “ものづくり” をする人が、パーツを買いに来る場所とみて間違いあるまい。
こ、これは……! 皮肉にも先日みやげ屋で買った “タイっぽいポーチ” の原材料を発見してしまったぞ。見なかったことにしよう。
さらに歩くと問屋に混ざって食べ物屋が出現し始め……
次第に道は市場へと繋がっていく。
・そして鉄道へ
噂に聞くとおり、都市部とは全く異なる空気が流れていたウォンウェンヤイ地区。賑やかすぎず田舎すぎない、ちょうどええ塩梅の下町散策が新鮮だ。
お店の人も観光客などに興味はないらしく、キョロキョロと市場を歩く私を完全に放置してくれる。バンコクの喧騒に疲れた旅行者は、このあたりを訪れてみることをオススメしたい。
おいしそうな匂いにつられて買い食いしそうになるが、企画の趣旨を思い出してグッとガマンだ。
そうこうするうち、目的の国鉄ウォンウェンヤイ駅へ到着! 「切符が無いのにホームへ入っちゃった」と一瞬慌てるが、さにあらず。ここは改札という概念も、ホームと線路の境目もない世界……。
実はタイの国鉄は、電車とホームの距離が近すぎることで有名なのであった。踏切がないのはもちろんのこと、線路はいつでもどこでも横断可能( ※ 正式なルールは不明)。初めて来る場所だけど、いつだったかテレビで見たような気もする。
おっと、電車が来た!
この光景、鉄道ファンが泣いて喜ぶのではないでしょうか!?
ホームにもおいしそうな屋台がたくさん。お弁当を買い込んで、いつか国鉄列車に乗ってみたい。
・ついにトゥクトゥク登場
……さて。前置きがここまで長くなる記事も珍しいが、ようやくトゥクトゥク探しである。
幸いにも近くで “トゥクトゥクの群れ” を発見。ここでは元締めっぽい人物(英語OK)が間に入り、客にトゥクトゥクを斡旋するというシステムが採択されているようだ。
「このへんで一番おいしいタイ料理が食べたい」と元締め氏に告げれば、即座に「50バーツ(約190円)」と返された。なかなか良心的な価格である。トゥクトゥクってちょっと怖いけど、遊園地みたいで楽しいよね!
5分ほど走ると……ありゃ? 最初のBTS駅に戻ってきちゃった!!!
・優しさあふれるタイの味
案内されたのは数時間前に通過した場所。Googleマップによると『Go Bamee Sarapee』なる店らしい。
何屋かも分からないが、覚悟を決めて入店してみよう。
家族経営とおぼしき、10席ほどのこぢんまりとした店内。紹介でなければ絶対に辿り着かなかっただろう。
言葉が通じず注文の仕方が分からない。店員さんがメニューの写真を見せてくれ、汁なし麺を指差す。値段も商品名も不明。
おっ!!!! シンプルだけどおいしそう!!
チャーシュー、ワンタン、きざみネギ、そして黄色い細ちぢれ麺の下にはシャキシャキのナッパ。一見すると味がなさそうに見えるが、ほのかで優しい塩焼きそばのような風味である。疲れた体にジーンと染みるウマさ。付属のスープに麺をひたしてみると、コレはコレでウマい。
ガチな話をすると、おそらく「テーブルに置かれたナンプラーや唐辛子で味付けをして食べる」が正解だと推測される。これ、日本人にはハードルが高いんだよなぁ……。個人的にはそのままでも十分イケると感じたので、各自好みのスタイルで食べればよかろう。
気になるお会計はコーラと合わせて55バーツ(約209円)。シリーズ史上ダントツの最安値であることは言うまでもない。帰りぎわ、お店の方に「日本人?」と訊かれる。なぜ分かった?
なんだかんだ丸一日かかってしまった今回のトゥクトゥク旅。汗とホコリでベタベタになりつつも、新たなタイの魅力に出会えて大満足であった。みんなもバンコクへ来たら絶対にマネしてみてくれよな〜!
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
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