1968年発売の『出前一丁』(日清食品)は『チキンラーメン』や『カップヌードル』と並ぶインスタントラーメン界の金字塔。中国や台湾でも非常に人気が高いことで知られるが、実はヨーロッパ圏でも売られていることをご存知だろうか。
「どのスーパーにもある」ってほどではないが、例えばアジア食材店へ行けばほぼ確実に売られているぞ。しかもやたらと種類が多く、価格はタッタの0.5ユーロ(約67円)だ。いくら円安だからって、さすがに67円なら余裕で買える。ってことで全部買ってみた!
・そして泣いた
日清のEU版ホームページによると、現在ヨーロッパで発売中の出前一丁は全10種類。
今回私はマドリード(スペイン)のアジア系の店を巡り、うち7種類を購入することができた。ちょっと不安なヤツもあるが……ひとつずつ調理していくとしよう。なお、ヨーロッパでは水道水をそのまま飲用や調理に使用できる国も多い。詳しくは各自ググってみてくれ。
まずはスタンダードな赤い袋から。漢字で『麻油味』と記載されている。おなじみの『ごまラー油』のことだろう。
スープの袋が国旗っぽくてオシャレである他は、幼い頃から慣れ親しんだ日本の出前一丁と変わらないように見える。作り方は説明するまでもない。面倒なので豪快に鍋からズルリ! その瞬間……
私の脳裏に、今は亡き父方の祖母の笑顔が浮かんだ。
なんだこれ、涙が出るほどウマい……! 「あと6袋ある」と頭では分かっていても、ものの1分で完全に平らげてしまった。味は日本の出前一丁と同じだ。実は日本を旅立って1カ月以上が経過していた私。知らず知らずのうち “日本のインスタント麺の味” に飢え切っていたらしい。
・出前一丁のポテンシャル
日本から1万キロ以上も離れたスペインで、この味がたったの67円で味わえる……僥倖すぎてほぼチートなのだが、この勢いで食べ進めてはお腹を壊しそうでチト怖い。
そこでペースダウンを図るべく、今回のラインナップの中で「最もヤバそう」と感じていた『Beef (牛肉)』を2番手に持ってくることに。
ごまラー油の代わりに「シーズニングオイル」と記された透明な油が付属している。
なるほど……確かにかなりアジアっぽい動物臭さ。ただスープは個性的ながら、麺は一発で「これ出前一丁ですよね」と分かる。あまり意識したことがなかったけど、出前一丁の麺ってかなり独創性が強いんだな〜。
お次は無難そうな『Chicken(鶏肉)』。
う〜ん、普通にラーメン屋で出されても全く疑問を抱かないレベル。万人ウケするトリ塩スープはオリジナルに匹敵するウマさだ。
『 Garlic Chicken(ニンニクチキン)』はどうか。
あまりにも優しいガーリック! 個人的にはもっとガツンとガーリックしてほしかった気もする。先ほどの鶏肉麺ではやや物足りない人向けだろうか。
どんどんいこう。漢字の『豚骨湯味』の下にアルファベットで『Tonkotsu』と記されているが、もしかして『豚骨』を表すイイ感じの英語、無いのか?
ドロリとしたシーズニングに鼻を近づけると……うおっ! 豚くせぇ!!!
麺をすすると口いっぱいに広がる豚ラード臭。日本人がイメージする一般的なトンコツラーメンとはかなりテイストが異なっている。ウマいけどクセが激つよ。生粋の豚好きには嬉しい、かもしれない。
お腹が膨れてきたのをごまかすように、6食目の『Spicy(スパイシー)』。
お! すごくちょうどいい辛さ! ジワッと舌にきて、最後は少しだけ酸味が残る。辛いものが苦手な人は避けたほうが良いが、ピリカラ好きにはたまらないんじゃないだろうか。残ったスープを『おじや』にしたいぞ、またの機会に。
最後はピンクのパッケージが映える『Shrimp(エビ)』味。
どちらかといえば『干しエビ』の味わいに近く、東南アジアの屋台で注文する汁そばみたいなノリだ。ヨーロッパの人たちにとっての出前一丁って、もしかすると “手軽にアジアを楽しめるファンシーなフード” なのかもしれないなァ〜。
・円安の強い味方
以上、駆け足でお伝えしたヨーロッパ版の出前一丁。最近は「円安で海外旅行へ行けない」という声も聞こえるが、少なくとも世界には出前一丁がある。繰り返すがヨーロッパの出前一丁は1袋67円……「貧乏旅行でも食べるものは何とかなる」という件だけ、覚えておいていただけると幸いだ。
なお日清食品ホームページによると、今回ご紹介した7種類のほか『DUCK』『SOY SAUCE』『JAPANESE CURRY』『MISO』などが販売されているとのことだ(※『Garlic Chicken』は終売の可能性あり)。なぜ海外でこれほど多くの出前一丁が販売されているのかはよく分からないが、旅行の際はぜひ探してみてくれ!
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.