今からお話するのは2019年夏のできごとである。私の出身地である鳥取県の山奥に、30年以上前の廃線跡が現存しているらしい。そして近年、その周辺が「SNS映えする」として密かに話題になっているのだそうな。マジか……ちっとも知らなかった。
さっそく地元へ帰省した私は友人のカメラマンを引き連れ、SNS映えする写真を撮りに廃線跡へ。……そこから今回の記事化に至るまで、なぜ3年もの月日が経過してしまったというのか? 順を追ってご説明したいと思う。
・ある暑い日のできごと
問題の廃線とは、かつて鳥取県中部を縦に走っていた国鉄・倉吉線のこと。私は世代的に乗ったことがないのだが、存在自体は祖父母から聞いて知っている。
倉吉市内に点在する倉吉線の名残のうち、泰久寺(たいきゅうじ / 関金町)という駅跡周辺が今回の目的地だ。倉吉駅から車で30分ほどの道のり。ちょっと分かりにくい場所にあるので、看板を見逃さないように!
話によると、この泰久寺駅から終点の山守駅へ通じる線路が、ほぼ当時のままで残っているらしい。インフルエンサーっぽい衣装でオシャレにキメて、いざ出発〜!
周囲に草木が生い茂った線路をゆっくり進んでゆく。一本道なのに道に迷ってしまいそうな、1人で来るのは少し怖いような不思議な気持ちだ。
足元に注意しつつ進むと、次第に竹林が広がってゆき……
ジャーーーン!!!! こんな幻想的な写真が撮れちゃうんです!!
・しかし緊急事態発生
この一帯で最も “映える” スポットとされているのが、線路の真ん中にニュッ! と突き出た2本の竹。光の加減や角度などを工夫すれば、あたかも「竹の妖精、現る」的ショットが撮影できちゃうというワケなのだ。
ここは奇跡の1枚を撮影し、宣材写真として活用したい! ってことでジャンジャン撮るぞ〜!
それはそうと……
さっきから耳元でブンブンと音が聞こえるのだが……耳鳴りだろうか?
いや違う……
これは……
蚊の大群だ!!!!!!!!
当たり前っちゃ当たり前なのだが、夏場の廃線跡周辺には大量の蚊が生息。薄いワンピースにサンダルという格好の私、ならびにカメラマン役の友人はケツまでビッシリと蚊に刺され、命からがら退散するハメになってしまったのだった。
そのままあえなく取材は中断。ややあってコロナが発生し、鳥取に行くチャンスを逃し続けたまま3年の月日が経過……というのが「ここまでのあらすじ」なのである。
・3年越しのリベンジ
そして今年4月上旬。ようやく私は戻ってきた。この時期であれば、さすがに蚊の心配はないだろう。
3年前は車で泰久寺付近まで行けたものが、かなり手前の地点から徒歩で向かうルールに変更されているようだ。人気の影響だろうか? しかし、この遠回りが逆によかった。
駅跡地まで続く小道。地元民ですらほぼ知らぬ裏道だが、ひょっとして、これ自体が廃線跡なのではないだろうか?
……やはり、間違いない。実は私が思うよりずっと手前から、廃線跡はスタートしていたのであった。廃線というにはあまりにも現役感ただよう雰囲気。ムードあるなぁ〜!
あ! 気づいたらバッグにてんとう虫が。ムードある〜!
鳥取で生まれ育っておきながら、私は不覚にもこのような素敵スポットの存在を全く知らなかった。映え写真目当てで訪れた方も、1km手前からじっくり散策することを強くオススメする。
ふと路傍に目をやると愛らしいお地蔵さん! ムードあるぅ〜!
・このムード、感じてほしい
20分ほど歩いてようやく辿り着いた泰久寺跡地。
3年前と比較すると、雑草や枯れ木が少なく非常に歩きやすい。夏前だからということもあるが、定期的に掃除している人がいるのだろう。
心配していた蚊の襲来はゼロ。やはりここを訪れるなら春が最適と言える。
ジャーン! 今回はセルフ撮影だけど、なかなか絵になる写真が撮れました〜!
なお線路をずっと歩いていくと、封鎖されたトンネルに行き着く。ここから先は定期的に解放されるとのことなので、中へ入りたい人は日程を調べておこう。繰り返すが蚊の多い夏場、また雪の降る季節は万全の装備で臨むべし!
3年もネタを温め続けただけの価値は十分にあった倉吉線廃線跡。近くの人もそうでない人も、インフルエンサーも鉄道ファンも、ぜひ一度訪れてみてほしい。
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]