よみうりランドの駅から遊園地へと向かうゴンドラの途中……右手に白い不思議な塔が突如出現するのをご存知だろうか。ふもとには古風な赤い塔まである。
「遊園地のアトラクションかな?」と思いきや、よみうりランドの敷地からはずいぶん離れている。ずっとあの塔が何なのか気になっていたのだが、よみうりランドに隣接する花のテーマパーク、HANA・BIYORIを訪れたときについに謎が解けた!
怪しい施設かと思いきや、実は想像以上に由緒正しい仏塔だったのである……。
・聖なる森
実は、白い仏塔と赤い塔はよみうりランドに隣接するフラワーパークHANA・BIYORIの一部。「聖なる森」と呼ばれるエリアの中にある。
HANA・BIYORIの開園は2020年なので、新しく作った施設かと思う人もいるだろうが、白い仏塔と赤い塔は1964年よみうりランド開園当初からあり、かつては「聖地公園」と呼ばれる場所だったそう。
・お釈迦様の髪と骨がある?「パゴダ」
まず、白い仏塔の正体は釈迦如来殿(パゴダ)。なんと中には、お釈迦様のお骨(仏舎利)と髪の毛(聖髪)が祀られているという。
残念ながら撮影はNGだったけど、扉から中を覗くと金色の鐘のようなものがふたつ並んでいるのが見えた。その中に仏舎利と聖髪が安置されているそう。
ちなみに仏舎利は、スリランカのマヒンターレ寺院に安置されていたもので、1964年4月にスリランカ政府から贈られたもの。聖髪はバングラデシュのブディスト・モナスタリー寺院に宝蔵されていたもので、1964年9月にバングラデシュ政府から贈られたものだというから驚き。
お釈迦様の骨と聖髪の両方が祀られている場所は世界的にも珍しいそうな。まさかの国家レベルの贈り物……。怪しいとか思ってすみませんでした。
・ピースする仏像
見どころは「パゴダ」だけにあらず。なんとピースしているように見える仏像「妙見菩薩像」もあるのだ。
「妙見菩薩像」は鎌倉時代後期に造られたもの。海上安全、縁結び、安産、商売繁盛、開運のご利益があるといわれており、1950年には、重要文化財に指定されている。
ユニークなピースサインのように見える左手の形は「刀」を意味しているとのこと。
ちなみに、赤い多宝塔は17世紀に創建されたと推測されており、1964年によみうりランドに移設されたもの。
・仏教界の大物大集合
さらに、パゴダの下には、8体の像が並んでいる……。これは仏教の主な宗派を開いた開祖師が勢ぞろいした「八祖師像」。
天台宗の最澄、真言宗の空海、浄土宗の法然、浄土真宗の親鸞、臨済宗の栄西、曹洞宗の道元、日蓮宗の日蓮、融通念仏宗の良忍といった宗派を開いたビッグネームが一堂に会している。全員、歴史の教科書で見たことあるぞ!
AKBの神セブンみたいな感じだ。いや、仏教だから仏エイトか……。
・不思議すぎる光景
それにしても、聖なる森は摩訶不思議な光景が広がっている。異国情緒すら漂う真っ白なパゴダと、赤い和風の多重塔が並ぶ姿……。
そして、そのすぐ真横をゴンドラが走っていくという、国設定も時代感覚もおかしくなりそうなコントラストの妙。
丘の向こうには、よみうりランドの大きな観覧車と、ジェットコースターの軌道が見えて、ときおり歓声が聞こえてくる。漫画でもこんなシーンは思い浮かばないのではなかろうか。
なんというか「情報量が多い」とはこの場所のためにある言葉のような気すらしてしまう。
・なぜ造られたのか?
そもそも、よみうりランドの横になんでこうした仏教施設が? という疑問がわくと思う。
なんでも読売新聞社の経営者である故・正力松太郎氏が非常に仏教への信仰に厚い人だったそうで、よみうりランドの開園とともにこうした仏教施設を集めた「聖地公園」を作ったらしい。
プロ野球の「正力松太郎賞」などで名前を聞いたことはあったが、wikipediaで改めて経歴を見ると
読売新聞社社主、日本テレビ放送網代表取締役社長、読売テレビ会長、日本武道館会長等を歴任。また、読売ジャイアンツ創立者であり初代オーナー。
と、島耕作もビックリの経歴の持ち主。新聞社にテレビ局にプロ野球の球団に……相当な功徳がありそうである。ほええ〜。
今回紹介した場所は、HANA・BIYORIの中の「聖なる森」として訪れることができるので、不思議スポット好きにはおすすめですぞ。
参考リンク:HANA・BIYORI
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]