先日ある短い発表が世間に衝撃を与えた。「うまい棒」の値上げである。

たった10円で買えるのに食事になりそうな濃ゆいフレーバーで、ときには部活帰りの買い食いとして、ときにはビールのお供として日本人の小腹を満たしてきた同商品。そんな10円菓子の代名詞が、2022年4月から税抜10円 → 12円に値上げ!

通常、商品の値上げは「悲報」として伝えられるものだが、消費者のあいだではちょっと異常な事態が生じていた。だれも非難していない……だと……?


・むしろ感謝の声

発表の直後、株式会社mitorizが全国のアンケートモニター2015人を対象に「うまい棒の購入に関するアンケート」を実施。


その結果、実に7割近くが「発売以来値上げをしなかったことがすごい(69.1%)」と回答。自由回答では「長年値上げせずに頑張ってくれて感謝」「値上げしても変わらず応援しています」といった声も。


続いて「原料等の高騰なら仕方ないと思う(28.7%)」が3割近く。中には「うまい棒を知らない(2.2%)」という人もいたものの、ほとんどすべての人が好意的に捉えているという調査結果に! マジか。

というのも、うまい棒は1979年の発売以来42年間ずーっと価格を変えてこず、今回の値上げは初の価格改定だという。1本10円という価格にこだわり、コストダウンの努力を続けてきたのだそう。


値段を変えずに量を減らす「ステルス値上げ」をはじめとして、物価が年々上昇しているなぁ……というのは誰しも肌で感じているところだと思う。


ここにきて、ついに「株式会社やおきん」でも「原材料全般の価格上昇に加え、包装資材・物流費・人件費等も大幅に上昇している状況があり……」と苦渋の決断。

そりゃそうだろうよ、40年前と同じ値段では作れないだろうよ! というのが率直な感想。だって1979年の東京都の最低賃金は382円(2021年では1041円)だぞ。

マンガ雑誌だってジュースだって菓子だって、いまよりずっと安かった。周囲のものがどんどん値上がりしている中で、うまい棒だけ10円を保ってきたこと自体、信じられない奇跡と呼んでいいだろう。


・好きな味は?

同アンケートでは「好きな味」についても調査。結果は以下のとおり!


第1位 コーンポタージュ味(32.0%)


常時15種類前後が流通している中でダントツの結果。スナック菓子でありながら、まろやかで甘~い味がたまらないコーンポタージュ味。これは納得。

第2位 チーズ味(19.7%)


匂いがインパクト抜群のチーズ味。ちなみに筆者が数件のコンビニを回ったところ、「コーンポタージュ味」「チーズ味」「めんたい味」の3種は必ず発見。スペースの限られたコンビニは「売れ筋」を入れるだろうから、この辺りが鉄板なのだと思われる。

第3位 たこ焼味(9.9%)


第3位は地域差が出たらしく、第4位以下とほとんどポイントも変わらないので、団子レースといっていいだろう。

「たこ焼味」はおもに「関東」「関西」「東北/北海道」が支持。「中部」と「九州」では「プレミアムうまい棒 明太子味」が、「中国/四国」では「やさいサラダ味」が第3位にランクインしたらしい。

同率4位 サラミ味(7.5%)


同率4位 やさいサラダ味(7.5%)


同率4位 プレミアムうまい棒 明太子味(7.5%)

通常サイズ(6g)よりひとまわり大きく(9g)、1本20円の「プレミアムうまい棒」からもランクイン。「こんなのあったの!?」と思ったが、2014年登場だそう。

同率4位の「サラミ味」は1979年の発売時からある最古参メンバーだから、新旧それぞれファンがいるということに。すごいなぁ!


・うまい棒よ、永遠なれ

「お子様のお小遣いでも選ぶ楽しさを感じていただけるよう」というコンセプトを守り続けてきたうまい棒。「コスパが良すぎて感謝しかない」「遠足のおやつなど金額の決まっている時の調整といえばうまい棒! というイメージ」の声に激しく同意だ。

ここまで頑張ってきて、苦渋の値上げをだれも責めはしない。むしろその企業努力をたたえたい。ありがとう、これからもよろしく。


参考リンク:PR TIMESグルメプレス
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.