『エティハド航空』は現在「行き先に関わらず陰性証明書がないと搭乗できない」という、世界でも珍しい厳格な感染防止対策を実施している企業である。エティハド航空の本拠地はアラブ首長国連邦のアブダビ。「ちょっと乗客が減るくらい屁でもない」ってな感じだろうか。
先日、私はエジプトから日本へ帰国する際にエティハド航空を利用した。中東のリッチなエアライン……とくれば当然、気になるのは機内食だ。なお行きに利用したカタール航空の機内食はガチで最高だった。これは事実上「中東エアライン機内食頂上決戦」と言えるのではないか。
・パスタ or ライス?
今回のルートはまずアブダビまで行き(約3時間)、そこから日本行きの便(約9時間半)に乗り換えるというもの。出発時刻は17時。すぐに夕食が提供されるものと推測される。
機内は満席。予想どおり、離陸後すぐに機内食が配られ始めた。機内食といえば通常「ビーフ or チキン?」といったふうにメインディッシュを選べるパターンが多いが、添乗員さんの質問は「パスタ or ライス?」。炭水化物がメインにくるパターンは珍しい。
3秒悩んだ末に私の出した答えは「パスタ」。果たして吉と出るか凶と出るか…………
これは…………
どっちだ…………?
・昔ながらのザ・機内食
メニューは『きのことマカロニのクリーム煮』『パン』『豆のよく分からん紫のやつ』『ムースっぽいデザート』の4品。正直どれも「すごくおいしそう」とは言い難い見た目をしている。実際に食べてみると……
うん…………見たまんまの味。
見事なまでにノビ切ったマカロニ、缶詰特有の臭みがあるマッシュルーム、カチカチに固まったホワイトソース……我々が「まぁ、機内食ってこんなもんだろう」とイメージする機内食そのまんまの機内食がそこにはあった。
パンは冷凍庫から出したてのごとくパサパサのヒエヒエ……
豆のよく分からん紫のやつは……シソのような酸っぱさを感じるが、正体も料理名も不明。
最後は尋常じゃないくらい甘いデザート。
・日本行きに期待
ウムム……期待していた “中東のリッチな機内食” とは少し異なる気もしなくない。が、言うてもここまでは中東〜中東の短距離フライト。本番はここから乗る日本行きである。
日本行きの機内は先ほどと異なり、全シートにモニターやアメニティなどが完備された豪華版。同じエティハド航空でも路線によってサービスが違うのだ。
ちなみに私がこの機体で最も感動したのは、片方だけ出っ張ったヘッドレスト。
これ、首枕なんかよりよっぽどストレスが少なく熟睡できるスグレモノ。座ったまま寝るのに最適なのである。長距離フライトを運行する航空会社は今すぐ全便にこのヘッドレストを導入してほしい。
・待望のディナーは……
さぁ、日本行きの便も離陸後すぐに機内食が配られ始めた。先ほどのパスタも決してダメだったわけではないが、できればここらでアブダビの資本力を見せつけてほしいものである。今回の2択は「チキンソーセージ or ミートソース?」。悩ましいがソーセージでファイナルアンサー!
えっ!?
朝食?
このとき時刻は深夜1時半。「朝か夜か?」と聞かれれば、確かに “早朝” という解釈もきく時間帯ではある。が……つい先ほどまでギンギラのアブダビ国際空港で免税店めぐりをしていた私の気分は「どちらかといえばステーキ」……ネギ入りのオムレツが優しすぎて辛い。
田舎の母を思い出すクタクタのホーレンソー。
相変わらずカチカチのパン。
そして朝食の定番ヨーグルト。
ヘルシーなシリアルバーまで……。
・泣きの3食目
しかし体に優しいメニューが功を奏したか、私はそこから6時間も大爆睡。気づけば飛行機は宮崎県上空にまで差し掛かっていたのだった。
目を開けると機内食を配る添乗員さんの姿が。このとき日本時間は16時で、区分でいえば夕食の時間帯に当たるのだろう。しかしエジプトから出発した私にとっては午前9時。まさに今こそ朝食が食べたい気分なのだが、エティハド航空の判断やいかに……
昼食風……!
メインは白身魚の乗ったアジア風焼きそば。先ほど同様、我々が「まぁ、機内食ってこんなもんだろう」とイメージする機内食をそのまま再現したかのようなお味。
カチカチさに磨きがかかったパン。
八ツ橋によく似た味のリンゴのデザート。
そして『豆のよく分からん紫のやつ』が再び登場! 懐かしさも嬉しさもゼロ!
いやはや……LCC(格安航空会社)ですら “普通においしい機内食” を提供する時代において、昔ながらの ”機内食らしい機内食” 守り続けているエティハド航空。初めて国際線に乗った時の懐かしい気持ちが蘇ってくるようだった。
そう、飛行機の中でしか味わえないモノだってある……。考えてみりゃあ、ウマいメシは地上で食べればいいもんな! ってなわけで「古き良き機内食を食べたい」って人は迷わずエティハド航空をチョイスしてみてほしい!
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.