いやあ、節穴でしたね。何がって自分の目がですよ。『オッドタクシー』を全話見てそう思わざるを得ませんでした。2021年4月から13話が放送・配信されたいわゆる「春アニメ」である本作。なぜ、今さら見ようと思ったかと言うと、コミュニティーの違う2人の知り合いに別々にオススメされたから。
アニメ好きとは言え、そもそも趣味も違えばオススメもあまりしない2人。住んでる地域も400kmくらい離れています。そんな2人から同じタイトルが出たことに興味を持ったわけです。「これはちょっとキテるんじゃないか」と。しかし、私(中澤)は本作をすぐ見ようとは思えませんでした。なぜならば……
・1話切り
本作が配信開始された当時、1話を見て「これは見なくていいかな」と切った作品だったからです。だって、セイウチのタクシー運転手が変な客乗せるっていう話ですよ? 登場人物も全員動物ですよ? おまけに絵も現代的な煌びやかさはなく、色調の暗い絵本みたいな感じで、私はこう思いました。
「1話完結のぼんやり雰囲気を味わうタイプのアニメかなあ」と。そして、「ちょっと趣味じゃないな」と判断したわけです。この絵や設定や雰囲気を見て1話切りしたアニメ好きは多いんじゃないかなあ。
・いつ以来か
とは言え、興味が出たのは嘘ではないので、8月頭の連休中、暇つぶしに改めてちゃんと3話くらい見てみようとAmazonプライムで再生ボタンを押したわけです。そしたら……
ノンストップで10話まで見てしまいました。
気付けば夜ですよ。こういうアニメの見方をしてしまったのはいつ以来だろう? 思わずそんなことを考えてしまうほどに『オッドタクシー』は名作でした。
・ネタバレなし感想
で、何がそんなに良かったのかと言うと、まずはシナリオでしょうね。1話切りした際に感じたのとは逆に、『オッドタクシー』は1話~13話で大きなエピソードを描いている作品でした。しかも、物語は決して絵本のような世界感ではなく、どちらかと言うとバイオレンスが支配しています。
動物が人間みたいな社会を形成していてバイオレンスと言えば、今なら『BEASTARS』みたいなのを想像する人もいるかもしれません。が、どちらかと言うと本作のバイオレンスは北野武映画です。
しかし、動物なので、なんか悪いヤツがそこまで悪く見えない。どこか間の抜けた雰囲気が漂っていて、ストーリーがうねっていても目線は淡々としています。このアンバランスさはなんか村上龍っぽい。
もちろん、これは個人的な感想ですので、「全然違う」という声も余裕であるかとは思うんですが、アニメを見ているとなんかテキストを読みたくなってくる。全話見終わった時に、良質の小説を読んだみたいな気持ちになりました。
・Amazonレビューを見てみると
さて、そこで気になったのは、本作がどう受け止められているのかということ。そこでAmazonプライムのレビューを見たところ、2021年8月10日現在、レビューが602件と少なくないのにもかかわらず、5点満点のレビューの平均は星4.5とかなり高め。
さらに、その内訳を見てみると実に77%が5つ星。4つ星以上の高評価をつけた人は87%にも上っています。例えば『鬼滅の刃』みたいな目に見えるブームではありませんが、口コミで広がっていく静かなスパイラルが本作の良さを物語っているように見えます。
アニメを参考にして作られたようなアニメが多い今日この頃。もちろん、私はそういった作品も大好きなんですが、本作にはこう考えさせられました。オリジナリティーってこういうことを言うのかもなあ……と。
参考リンク:オッドタクシー、Amazon
執筆:中澤星児
画像:© P.I.C.S. / 小戸川交通パートナーズ
▼ここからどういうストーリーが展開されるのか。騙されたと思って見てみて欲しい