イギリスからロシアまで、約2018キロという記録的な距離を移動したコウモリが死亡していました。ロシアにてネコによる攻撃を受けたことが死因とみられています。
一連の情報は2021年8月5日に、イギリスのBat Conservation Trustから発表され、BBCやガーディアンなど、複数のメディアが報じています。その記録的な移動距離から、このコウモリには「Olympic bat」というニックネームがつけられたもよう。
・ロシアの村で発見
この偉業を成したのは、体重が8グラムのメスのNathusius’ pipistrelleという、ヨーロッパでは一般的なコウモリです。Bat Conservation Trust(BCT)によると、ロシア西部のプスコフ州にあるMolginoという村で、住民のSvetlana Lapinaさんが発見。
その時にはすでにネコに襲われて怪我をし、地面に落ちていたようです。その後ロシアのコウモリ保護団体に救助されましたが、死亡してしまったとのこと。しかし、腕に「London Zoo」と書かれたリングをしていたことから、このコウモリがイギリスから来たことがわかりました。
そのリングは2016年にロンドンのヒースロー空港近くの公園にて、コウモリ記録係によってつけられたもの。これらの事実から、ネコによって非業の死を遂げたコウモリが、約2018キロもの長距離を旅してきたことが明らかに。
これは、記録されている限りだとイギリスのコウモリ界では最長記録。世界のコウモリ界でも史上2番目という偉業であることが発覚したそうです。ちなみに最も長い距離を移動したのは、2019年にラトビアからスペインまで約2224キロを移動した同種のオスで、こちらについてはNatureが報じています。
・よくわかっていない
なお、これらの記録はあくまで判明している範囲内でのもの。そもそもコウモリについての記録が歴史的になされてこなかったことから、Nathusius’ pipistrelleがイギリスやその周辺のエリアでどのように移動しているかは、まだよくわかっていないそう。
状況を改善するため、BCTは2014年に「National Nathusius’ Pipistrelle Project」を開始して、今回ネコに殺害されたものを含めて2600匹以上の同種のコウモリの動きを記録しているそうです。
BCTにてコンサーベーションサービスの責任者を務めるLisa Worledge氏は声明の中で、死亡したコウモリの記録的な移動距離を「exciting scientific finding(エキサイティングな科学的発見)」と評しています。
参考リンク:Bat Conservation Trust、BBC、The Guardian、Nature(英語)
執筆:江川資具
Photo:Wikimedia Commons / RocketNews24
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