
駄菓子屋といえば子供のオアシスだが、大人でも楽しめる駄菓子屋が千葉県船橋市に存在する。その名も、「リュウ君の店」。
そもそもリュウ君とは何者なのか? と思いながら実際に行ってみたところ、40歳過ぎたオッサン(筆者)が改めて駄菓子屋に感動を覚えることになったので紹介したい。
・ただの駄菓子屋じゃない
駄菓子の魅力と言えば、お菓子が豊富に揃っていること、そして子供でも手軽に買える価格の安さだろう。その2つを兼ね備えている駄菓子屋は全国に無数とあるが、「リュウ君の店」はアミューズメントパークの要素まであると言っていい。
どのあたりがアミューズメントパークかというと……
謎のキャラクター
謎のアトラクション
謎のオリジナルグルメ
いかがだろうか、この時点で「よくある駄菓子屋とは違う」ってことが何となく伝わったかと思うが、以下でもう少し詳しく見ていこう。
・謎フードの数々
まず驚愕したのは、「謎フード」と呼ばれるオリジナルメニューの数々だ。一般的な駄菓子屋は仕入れた駄菓子をそのまま販売しているのに対して、「リュウ君の店」はなんと駄菓子を組み合わせて調理することで1つのグルメにしてしまっている。
一例を挙げよう。1番人気だという「Wベー玉(250円)」は……
たこせんべいにマヨネーズとケチャップをかけて、その上から薄焼き卵を乗せ、ベーコンを2枚乗せて焼いたもの。素材自体は珍しくも何ともないが、組み合わせが独特だ。食べてみると……
うめぇぇぇぇぇぇ!!!!
普通に一品料理じゃねぇか……。ピザに近い味だが、食感はベーコンを乗せたトーストだったり、まさに謎フードだ。
なお、同じ たこせんべいをベースとしたものに「たつおスペシャル(100円)」というメニューがある。マヨネーズの上に駄菓子のポテトフライが乗っておりシンプルに美味いのだが、「たつお」は子供の常連客から取ったらしい。
続けて、駄菓子屋のイタリアンメニュー「ギャラクシィー(200円)」を見ていこう。
こちらは、駄菓子屋で売られている「ペペロンチーノパスタ」にマヨネーズとネギと揚げ玉を入れ、最後に目玉焼きを乗せたもの。
特筆すべき点は、あえてパスタ用の粉末ソースを半分だけ使っていること。これにより味の濃さを調節可能で、薄いと思ったら残りの半分を少しずつ入れ、お好みの味に調整できる。
ちなみに残りの粉末ソースを味の調整に使わなければ、空いた容器にそのまま入れて……
お湯を足すことで即席スープが完成する。
最後に注文したのは、駄菓子屋のスペシャルデザート「デストロイ(250円)」だ。このメニューは「ビッグサンダー」を砕いてドライバナナダイスを入れ、その上に生クリームを乗せ、チョコソースとスプレーシュガーでデコレーションしている。
その見た目は、想像していた駄菓子屋サイズのデザートを大幅に超えてきたと言っても過言ではない。素材は駄菓子なのに、映え感がハンパない! さっそく食べてみると……
うん! なんて言うか、ファミレスで「ミニパフェ」として倍の値段を取っても問題無いと思われるクオリティ。
・駄菓子屋なのにドライブスルー?
さて、謎フードを堪能したあとは、「リュウ君の店」が誇るアトラクションスポットへ。外に出た瞬間、真っ先に目に飛び込んできたのは……
「ドライブスルーの注文が非常に困難なドライブスルー店」???
そもそも、このお店は車も入れないような狭い路地にあるので、ドライブスルーって訳には行かないと思うが……。どういうことなのか、試してみるとしよう。まず、お金を入れて……
待つこと1分。目を疑うような衝撃の光景が!
しゅ……手動かい!!!!!
粋だ、とにかく粋だ! 普通に店内で会計を済ませた方が早いはずだが、これも「リュウ君の店」ならではの演出。なんか知らないが感動してしまった。
・恐怖の自動販売き
そしてもう1つ。目に止まったのは一見ただのガチャガチャであるが、近づいてみると……
「恐怖の自動販売き」だと???
このガチャガチャ、一体何が恐怖なのか? とりあえず、10円を入れて試したところ……
何も出ねぇぇぇぇぇ!!!!!
「これ、恐怖というよりはボッタクリじゃねぇか」と思ったが、よくよく見てみると最初から「お金を入れても、何も出てこないよ」と謳(うた)っている。
それでもお金を入れる勇気があるか? その恐怖に打ち勝つことができるのか? 10円じゃなく100円でも行けるのか? もっと言うなら500円で勝負できるのか? それが「恐怖の自動販売き」たる由縁らしい。
ただ、ここに吸い込まれたお金は、お店の収入ではなくボランティアの財源に使用するとのことだ。
これらの他にも、どこか懐かしいゲームマシンがずらり。取材中もたくさんの子供たちが小銭片手に楽しそうに遊んでおり、思わずほっこりしてしまった。
・おじさんに聞いてみた
「オリジネルグルメ」「アトラクション」と続けて紹介してきたが、最後の要素である「謎のキャラクター」について、説明していこう。
そのキャラクターとは、この「リュウ君の店」の創業者「リュウ君のおじさん」だ。
ということで、インタビューを試みてみた。
──まず最初に「リュウ君」とお呼びすればいいでしょうか? それとも「リュウさん」?
リュウ君のおじさん「いや、「リュウ君」というのは、私の名前じゃなくて、飼っていた犬の名前なんだよ。だから私のことは「おじさん」でも何でもいいですよ」
──そうだったんですね。こちらのお店は始めてどれくらいなんですか?
リュウ君のおじさん「今年で22年です。昔は私もサラリーマンだったんだけど、耳に障害があって、それが原因で勤めるのが厳しくなってしまってね。それで近所の駄菓子屋がすごく賑わっているっていう話を聞いて、それなら自分でやっちゃえ! となって始めたんだよね」
──おじさんは色々なキャラクターに扮していますが、どういう目的でやっているんですか?
リュウ君のおじさん「このキャラクターひとつひとつに意味があって、全部私が経験してきたことも含めて、それぞれのキャラクターに扮して普及していこうという想いかな。交通整理とか猟師とか……あと「ガマの油売り」なんかもやったりして」
──面白いですね。今でもそれぞれのキャラクターに変装したりするんですか?
リュウ君のおじさん「今でも店の外でキャラクターに扮して紙芝居をやっているんだけど、それを子供達に見せながら、駄菓子を買ってもらったりしているね。駄菓子屋のオヤジのプロマイドなんて売っているお店は、日本中探してもここしかないと思うけどね」
──なるほど。オリジナルの駄菓子料理や、「リュウ君のお店」ならではのエンターテインメントも、そういう発想から来ているんですね!
リュウ君のおじさん「昔の駄菓子屋は、駄菓子だけ置いてあるお店なんて無かったからね。何かしら、お好み焼きとか焼き芋とか作って出していたんだけど、食品衛生法の改正とかで、どんどん減っていってしまって……。それが寂しくてね。だからウチだけは昔の駄菓子屋を踏襲していこうと思って、色々考えたんだよね」
──素晴らしいです! でも駄菓子屋って、時代が進むに連れて色々と商売として大変なイメージもあるのですが、22年もやってきたのは凄いですよね。
リュウ君のおじさん「ポリシーとして「10円玉1個から夢が広がるお店」というのが創業当時からあって。始めて4〜5年は、あまり流行らなかったんだけど、今はこうして近所の子供たちがひっきりなしに来てくれたり、海外からも噂を聞きつけて足を運んでくれる人もいる。
あとは、たまにテレビの取材とかも来てくれたりと、本当にありがたい限りだよ」
──そして駄菓子屋には珍しく、お酒も置いてあるのですが。
リュウ君のおじさん「会社帰りのサラリーマンが、オリジナルメニューをつまみに一杯やっていく人もいてね。そんな感じで大人にも楽しんでもらっているよ」
──ありがとうございました。本当に楽しかったです!
いかがだっただろうか? 船橋市には世界的なアミューズメントパークランキングにも上位に入るような施設もあるが、懐かい感情に浸れる場所に辿り着けたことが、本当に嬉しかった。
お酒を飲めるのも新鮮だが、駄菓子屋はあくまで子供たちのオアシスだ。なので、大人が行くときは節度をわきまえ、ルールを守って楽しんでほしい。
・今回ご紹介した店舗の詳細データ
店名 リュウくんの店
住所 千葉県船橋市本町5-11-14
時間 月・水~金曜日 15:30~19:00 / 土・日・祝日 13:00~19:00
休日 火曜日・第2水曜日・第4水曜日
執筆:耕平
Photo:RocketNews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]
▼お店は狭い路地を入ったところなので、わかりづらいかもしれない
▼店内はこんな感じだ。
▼外には昔懐かしいゲームマシンが並ぶ
▼おじさんのプロマイドも販売している
▼おじさん、ありがとうございました!
耕平































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