ニンテンドーの『ディスクシステム』(1986年発売)をご存知だろうか? ファミリーコンピュータ(ファミコン)の周辺機器で、専用ソフトも200タイトル近く作られたらしい。ちなみに私は ”スーファミ世代” だが、ディスクシステムの存在は最近まで全く知らなかった。
ってことは、さぞかし大コケしたのだろう……と思いきや、実際は400万台以上(定価1万5000円)の販売を記録したとのこと。ゲーム史を語るうえで絶対に避けて通れなかったディスクシステム、慌てて35年越しの初プレイを敢行してみた!
・これが「周辺機器」ですか?
ディスクシステムは「本体」と「RAMアダプタ」からなる。ここで初心者が注意すべきは「ファミコン本体に接続しなくてはいけない」という点。ディスクシステム単体では遊べないのだ。
RAMアダプタ背面には出っ張りが付いていて、これをファミコンのカセット差し込み口にセットする。完成形は……
こう! でもいいのだが……
正式にはこう。
上にファミコンを乗っけるスタイルが一般的らしい。スポーツカーみたいで超クールだな。
ディスクシステムのソフトは『ディスクカード』と呼ばれ、フロッピーディスクによく似た形状をしている。「データ容量が大きい」「価格が安く抑えられる」「セーブ機能搭載」など、当時のファミコンカセットと比較して優れた性能を持っていた。(※ 初期ファミコンにはセーブ機能がなかった)
しかし結局、その後カセットタイプのソフトが性能を伸ばし、ディスクシステムは静かに役目を終えたらしい。なるほど……つまりビデオ史における『ベータマックス』みたいなポジションなのだな。(※ ベータマックスが分からない人はお父さんに聞こう)
・よく分からんのでジャケ買い
ソフトに関しては全く知識がないので、逆に何も調べず「ジャケ買い」を敢行することにした。行きつけのゲームショップ『レトロげーむキャンプ』(秋葉原)で色々と売られている。
思わず手に取ったのは……
1987年発売『アイドルホットライン 中山美穂のトキメキハイスクール』
古き良き「家デン」の受話器を握るミポリンがとってもキュート! この日の購入価格は580円だった。それはそうとケースの凹み部分がちょうど鼻の位置にきている問題、どうにかならなかったのだろうか。
昔のシングルCDみたいなパッケージの中に、「NINTENDO」の文字がデザインされた青いディスク。こちらもレトロでオシャレ。
昔の人ってセンスいいよな。
やや中毒性のある愉快な電子音にのってプレイ開始。
主人公(プレイヤー)は高校生男子。転校初日の校門前からのスタートという、学園シュミレーションゲームの超・王道パターンだ。おそらく教室に入ったら “のちに親友となる、陽気な男子クラスメイト” が登場するに違いない。
とか考えてたら…………ああっ!?
・早すぎィ!
なんと開始30秒足らずで「DISK を うらがえしてください。」の文字が出現。ディスクにA面とB面があることは知っていたが、こんなに早く裏返すタイミングが来るとは想像していなかった。
どうやらシステム上、セーブするたびに毎回ディスクを手動でひっくり返す必要があるようだ。もの珍しさもあってか、面倒くささは一切感じない。ただただ「これを作った人スゲェな」と感心するのみである。
・歴史的価値ありすぎィ!
さてその後すぐ、予想どおり陽気な男子クラスメイトが登場。
ゲームの流れは本っ当によくあるタイプの学園恋愛アドベンチャー。しかしコレはあの『ときメモ』登場より7年も前に製作されたものだ。あのテの王道パターンの礎(いしずえ)を作った作品なのかもしれない。
しばらくするとミポリンご本人も登場! 会話などを選択することで、物語が分岐していくシステムのようだ。ちなみに私が最も衝撃を受けたのは、進行中に突然 “ガチの電話番号” がいくつも表示されるという演出。
この番号に電話をかけると、ゲームのヒントやミポリンのメッセージを聞くことができたらしい。タイトルの「アイドルホットライン」ってそういう意味だったのか〜。個人情報に厳しい現代では、ゲームに電話番号が表示されることは絶対にありえないと言ってよい。平成初期の大らかさがしのばれる。
期待を込めて電話をかけると……無念! 「現在は使われておりません」とのガイダンスが。ま、そりゃそうか。さらにゲームクリア後には景品がもらえたのだというから、当時としては相当画期的だったのだろう。タイムマシーンが完成したら訪れてみたい時代のひとつだ。
現役世代には懐かしく、若い世代には全てがカルチャーショックなファミコン・ディスクシステム。ちなみに現在の中古本体の価格は、箱なしで1万円弱だ。興味本位で手が出せるレベルだぞ〜!
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
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▼配線がエグい
▼「セーブしたい時はセロハンテープを貼る」に絶句(プレイ途中のセーブではなく、ディスクを書き換える際のセーブのこと)