大相撲5月場所中の国技館内に『スイーツ親方の店』が登場したらしい。この件について正直な感想を述べるとすれば「遅い」の一言に尽きる。なんせスイーツ親方こと芝田山親方(元横綱・大乃国)が大のスイーツ好きを公言したのは何十年も昔のことなのだ。

「スイーツ男子」などが乱立するはるか以前からスイーツを愛し、スイーツに愛されてきた親方。もっと早い段階で出店していたならば、今ごろ『スイーツ親方の店』が全国にチェーン展開していたことは疑う余地もない……

・でも、ありがたい

……とはいえ、親方には親方の事情ってもんがある。部屋のことや協会のことで多忙な日々を過ごされているのだろうから、これはむしろ「満を持してオープン」と表現するのが正しい。

と、いうわけで本場所開催中の両国・国技館へやってきた。

相撲観戦のお供として有名なのは焼き鳥。しかし現在コロナ予防の観点から国技館内では飲酒が全面的に禁止されている。ロビーなど所定の場所での食事は可能(観戦中は禁止)なのだが、お酒が飲めないとなると「焼き鳥よりスイーツがいい」という人も多いのではないか。

この日(5月23日 / 千秋楽)の開場時間は12時。私はひとまず席につき、トイレなどを済ませておこうと通路へ出た。


すると……



親方の店、もう行列してるでござる!!!!!


この時点で12時16分!!!!!


・売り切れ必死

慌ててトイレを我慢し行列へと並ぶ。どうやら並んでいる間に整理券をもらうシステムらしい。「残っているスイーツ全種類ください」と詰め寄った私に「まだ全部買えますよ」と微笑むスタッフの方。よかった〜! 危ないとこやで〜〜!!


って、よく見たらコレ…………



全部パンでござる!!!!


・要するにパン屋

『スイーツ親方の店』で現在売られているのは『横綱食パン』『メープル』『小豆』からなる3種類のパン(各500円)。それも小さい菓子パンではなく丸ごと一斤売りだ。もちろんパンもスイーツと言えなくはないのだが、個人的には「ケーキ」や「まんじゅう」を想像していた。

エプロン姿の親方がデーン! と配置されたお店のポスターには「男が甘党で何が悪い!!」との格言が。男が甘党で悪いと思ったことは一度もないのだが、なんとなく「すみませんでした」という気持ちになる。

本商品は相撲協会広報部の高崎親方が企画・発案・商品化したもので、現場では「男が甘党で何が悪いエプロン」を着用した親方ご本人が販売を行っておられた。親方から直接手渡しとは、日本一緊張するパン屋……もといスイーツ屋と言っていいだろう。

ちなみに13時過ぎごろに再び店をのぞくと、全てのパンに「完売」の札が貼られていたぞ。危ないとこやで!


・もはや鈍器

さて幸運にも購入できた3種類のパンだが……


パンとは思えないくらい重い。



割と本気で「鈍器」と呼んでも過言ではない重さなのである。


本当は国技館のテラスで食べようと思っていたが、あまりの重さに恐れをなして持ち帰ってしまったほど。大量に買い込むと相撲観戦の妨げになるかもしれない。

無粋にも自宅で計量してみたところ、『横綱食パン』が343グラム。

『メープル』が376グラムと、ここまではまぁ「ちょっと重めの一斤」程度なのだが……


『小豆』……圧倒的553グラム。


・お前だったのか

「パンの中に小豆が練り込まれている」という触れ込みの『小豆』パン、ただのアンパンとは存在感がまるで異なる。だんだんスイーツというより肉の塊に見えてきたな。

何度も言うが凶器になる危険性があるため、振り回す等の行為は絶対にお控え願いたい。

薄くスライスしてみると……


スッゴイ小豆っぷり!


かつて小豆は「赤いダイヤ」と呼ばれる高級品であったと伝え聞くが、この大胆な小豆使いを昭和の人が見たら卒倒するだろう。小豆そのものが甘く煮てあり、一般的なアンパンより奥深い味わい。

『メープル』はディズニーランドに来たみたいな甘〜いキャラメルの香りが部屋じゅうに漂う。確かにこれならスイーツと言われても納得だ。

『横綱食パン』は端の部分に綱の焼印が押してある。食べるのがもったいないという人は乾燥させて保存するのもアリ。

持ち帰ったパンはトースターで焼けば数日間はおいしく食べられる。ただし1人暮らしの方はくれぐれも買いすぎに注意されたし。

2021年5月場所現在、大相撲の本場所は観客数が通常の半分(約5000人)に縮小されている。また今場所に関しては非常事態宣言の影響から開催前にチケットが「売り止め」になるなど、史上類を見ないほどの少ない観客数で開催された。

にもかかわらずこれほど激しいパン争奪戦が繰り広げられているのだから、人気の高さがうかがえるというものだ。今後『スイーツ親方の店』関連の商品がどのように販売されるのかは不明だが、見つけたら即買い必至であることは間違いない。続報を待たれよ!

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
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