2021年4月1日エイプリルフールに、あのカンニング竹山さんが大阪発のジャズバンド「Calmera(カルメラ)」とユニットを結成し、シングル曲のデジタル配信を開始した。

エイプリルフールだけに冗談なのかと思ったら、これがガチのガチ! 往年のキレ芸を炸裂させて、叫ぶ! 吠える! ぶちまける! あまりの熱量の高さに絶賛の声が相次いでいる。久しぶりに音楽で心が震えた。

・社会派芸人…

竹山さんは小学校の同級生だった中島忠幸さんと共にお笑いコンビ「カンニング」を結成。2006年12月に中島さんが他界した後は、「カンニング」の名を背負い、カンニング竹山として精力的に活動している。

現在は情報系のトーク番組に出演する機会が多く、「舌鋒鋭く世の中を斬る」みたいに紹介されることが多い。実は勉強熱心な一面もあり、毎日新聞を全紙読んでいるという。

いつの間にか「社会派芸人」なんて呼ばれることもあるけど、テレビで見ていて私(佐藤)は時々思う。


何か面白いこと言って欲しいなあ~……

理不尽な叫びを聞きたいなあ~……


まだ売れ始めた頃は怖いモノ知らずで、何でもキレ散らかすこともできただろう。でも今は、それができるような状況にない。わかっているけど……。あの頃の「世の中にあらがう姿」は彼にしか出せない味だった。

顔を真っ赤にして口に泡を貯めて、めったやたらに喚き散らすその姿は、笑えると同時に勇気づけられるものがあった。

それが社会派芸人と呼ばれるようになって……。社会派だけど、今は芸をしてないんじゃないかなあ。


・突然のシングル配信開始

そんな彼の様子をテレビで見るのが日常になったある日、2021年4月1日のことだ。竹山さんはYouTubeのURLを添えて、こんな内容を投稿をした。


「4月1日エイプリルフール
タケヤマカルメラ
『ヘイユーブルース~許せ、友よ~』」


また何か新しいことを始めたのかな? 数年前から始めているYouTubeチャンネルは迷走しながら、最近はまったく動画を投稿してない。その一方で、クラウドファンディングを利用した「竹山報道局」ってのを始めてみたりしてる。

「タケヤマカルメラ」って何だ? また何か違うことを始めたのかな? 正直なところ、まったく中身に期待せずにURLを開いてみて、その先の映像に度肝を抜かれた。彼の叫びを聞いたからだ。



・清々しいほどの憤り

『ヘイ・ユウ・ブルース』とは、俳優の故・左とん平さんが1973年にリリースした楽曲だ。カンニングは2004年にこの曲を2人でカバーしている。その当時、CDはまったく売れず、その憤りを原動力にして、キレ芸に磨きがかかったらしい。

そんな因縁の曲を令和の今になって蘇らせるとは……。しかも副題には「~許せ、友よ~」とある。「友」とは、中島さんのことに違いない。

実際に曲を聞くと、冒頭トツトツとしゃべり始める竹山さんは伴奏が始まると豹変し、長年溜めに溜めたであろう怒りを炸裂させるのである。その怒りは世の中へ、理不尽な現状へ、そして自分自身にも向けられたものだ。

清々しいほどの憤り、まくし立てるように言葉を紡ぐ様は、全盛期のキレ芸を思い出させてくれるものだった。キレてる! めっちゃキレてる!!

ああ、これだ。怒涛の勢いで言葉をマイクに浴びせかける姿は、あの頃と変わらぬカンニング竹山その人だ。混じり気のない熱い思いが、この心を捉えて離さない。久しぶりに音楽を聞いて心が震えている。

その歌い手がまさか竹山さんとは、にわかに信じがたい。動画のコメントを見ると、私と同じように彼に揺さぶられてしまった人たちの絶賛の声が続いている。


・あらがう男

凄まじい熱量の曲だが、この曲を制作する構想は随分前からあったそうだ。竹山さんに話を聞くと、


竹山「キレ芸と音楽で何かできないかなと思っていて、2年前くらいにカルメラさんに相談していました」


とのことだった。その後、やや時間を経てリリースに至っている。下世話な話、これで儲かるのだろうか? 率直に「これで儲かりますか?」と尋ねると、


竹山「デジタル配信だけでCD作ってないし。YouTubeに公開した動画も自分のチャンネルじゃないし。売れるような曲じゃないから、歌唱印税って言ったってね、知れてるでしょ。衣装の靴だけ自前だから、その分、赤字ですわ


なんだ、儲からないのか……。とはいえ、それでも思いの丈を全力でぶつけているに違いない。むしろ、お金抜きでも全力をかけるところがイカしている。逆にこれで「儲かった」って言われるのも困るしなあ。

とにかく「あらがう男」、カンニング竹山。これからも「ヘイ・ユウ・ブルース」で見せたような叫びを聞かせてくれ。


取材協力:カンニング竹山(Twitter)
参考リンク:YouTube
執筆:佐藤英典