
言わずと知れた国際的超A級スナイパー『ゴルゴ13』、またの名をデューク東郷。コワモテで寡黙(かもく)、冷静で非情……葉巻をくゆらせながらライフルで標的を一撃必殺──。
そんな おっかないイメージを持たれていそうなゴルゴ13だが、ごくたまに「フフフ……」と笑うことをご存じだろうか? 普段は笑わない人がたまに笑うとちょっと感動してしまいますよね。それがあのゴルゴ13だったら 感動は倍増です。
ちょうど記念すべきコミックス第200巻が2021年4月5日に発行されたらしいので、この際だからゴルゴ13が笑った場面をぜんぶ調べてみたぞ!
・リイド社 SPコミックス版
『ゴルゴ13』のコミックスにはいくつかのバージョンがあるのだが、今回はリイド社が発行しているSPコミックス版で調査。
先述したように第200巻が出たばかりなのだが、“もっとも発行巻数が多い漫画” としてギネス認定されている あの『こち亀』と並んだことになる。しかも『ゴルゴ13』はまだ連載中なので、近い将来トップに立つことになりそうだ! スゴイッ!
それでは、本題の ゴルゴ13が笑った場面 をごらんいただこう。
・PART 1『ビッグ・セイフ作戦』(1巻)
イギリス諜報部から元ナチ親衛隊長の男を暗殺するよう依頼を受けたゴルゴ。とあるホテルの一室からライフルスコープごしに標的のいる邸宅をのぞくと、そこには茂みで覆い隠された機関砲が……。
そこで言い放ったひとことが、こちら。
ちなみにこの依頼を受ける際、札束がびっしりと入ったアタッシュケースを受け取ったゴルゴは「領収書はいらないだろうね?」と、ジョークともとれるセリフを口にしている。いまでこそ寡黙なイメージだが連載当初は饒舌(じょうぜつ)で、皮肉めいた冗談を言う場面がしばしばみられる。
・PART 2『ビッグ・セイフ作戦』(1巻)
2度目の「笑い」も第1巻から。見事に任務を遂行したゴルゴだが、国家機密が漏れることを恐れたイギリス諜報部が刺客を送り込んでくる。滞在先のホテルで銃口を向けられたゴルゴは……
その後どうなったのかは想像にたやすいだろう。ゴルゴに危害を加えようとしてタダですんだ者はあとにも先にも、いない。
・PART 3『デロスの咆哮』(1巻)
ナチの秘密警察に拉致され、20年以上も行方不明になっていたフランスの国防長官の妻と息子の消息が明らかになった。妻子は国防長官との再会を望んでいるらしいが、フランス当局は妻子について、“ソ連が用意したニセモノ” ではないかと疑う。
そこでゴルゴは “ニセモノの妻子” を暗殺するようフランスから依頼を受けるのだが、任務を遂行した直後、待ってましたとばかりにソ連の工作員があらわれ捕らえられてしまう。全てはソ連側が仕組んだ陰謀だったのだ。
ソ連側の首謀者・ボネは、フランスの依頼で妻子を暗殺したことを自供するようゴルゴに迫る。
ボネ「父と夫に再会できるのをただひとすじの喜びにしていた罪もない母子を射殺するとはね。それがあなた方の帝国主義のヒューマニズム(人間性)なのかね?」
すると、ゴルゴは……
この後、自白剤・精神錯乱剤入りのシャンパンを飲まされながらも命からがらで逃走することに成功したゴルゴ。最後はボネと一騎打ちを繰り広げ……。
・PART4『檻の中の眠り』(2巻)
アメリカ・アラスカ州ブリストル湾に浮かぶ北刑務所に収容されたゴルゴ。しかし、所長に挑発的な態度をとったことから死刑囚が入る特別房へと移されてしまう。そこで出会った死刑囚ザラスは、死刑をも恐れない大胆不敵な態度をとるゴルゴにこう投げかける。
ザラス「どうせ外に出られるんだと、言わんばかりの態度だったぜ、東郷!!」
するとゴルゴは、笑い交じりにこう切り返す。
どうやらゴルゴたちが収容されているのは、脱獄が絶対に不可能な刑務所らしい。ところが、何やら自信ありげなゴルゴ……その後、ザラスに脱獄計画を持ちかけるのだが、物語はまさかの結末を迎える。
※一部不適切な表現が含まれていますが、著作者の創作意図・作品のオリジナリティを尊重しそのまま掲載しています。
・PART5『黒い熱風』(2巻)
アフリカ・ガボン共和国で軍によるクーデターが発生。ゴルゴは、実権を握っている親米派のオーバーメ将軍を暗殺するようソ連の工作員から依頼を受ける。しかし任務遂行の直前、オーバーメ将軍は何者かによって暗殺され、ゴルゴは現場に居合わせた警察に逮捕されてしまう。
その後、軍事法廷にかけられるゴルゴだが、将軍の暗殺は軍内部による陰謀であることを暴露。うろたえる軍の幹部にゴルゴは……
実はガボン軍は見張り役の女をゴルゴにつけていたのだが、ゴルゴは “ちょいとしたテクニック” を使ってその女性を懐柔し、陰謀を裏で操る黒幕の存在を全て聞きだしていたのだそうだ。衝撃が走る軍事法廷……そして黒幕の正体は!?
…………と、ここまで(1~2巻)で5回も笑っているゴルゴ。意外と笑っているなぁと思ったのだが、その後、10巻、20巻、30巻……100巻まで読み進めても「笑うシーン」が一切、見られなくなった。冷静で非情=笑わないというゴルゴのキャラクター像が確立されたのか?
──と、思っていたら!
・PART6『力は我々にあり』(107巻)
舞台は南アフリカ共和国・ヨハネスブルグ。340年以上続いた白人支配に終止符が打たれ、黒人系の大統領が誕生した。しかし、異人種共存を拒否する勢力は白人・黒人ともに多く残っていた……。
そんなヨハネスブルグへ入国してきたゴルゴだが、空港の荷物検査で機関銃の持ち込みを見破られてしまう。過激派への警備体制を強化する国家防衛省の職員は、鞭打ちでゴルゴを拷問。入国の目的を執拗に問いただそうとするが、ゴルゴは「工作機械の輸出だ……」の一点張り。
この答えが気に入らないのか、なおも続く拷問。すると……
と、笑い、
ゴルゴ「お前たちの最高の長は誰だ……」
──⁉︎ マンデラ大統領に決まっている!
ゴルゴ「白人が、黒人に仕えて、恥ずかしいとは思わんのか……?」
もちろん相手のお国事情を逆手に取った挑発である。案の定、相手は逆上するが、ゴルゴは一瞬のスキを狙って反撃し脱走に成功する。
以上、全200巻を調べた結果、6回の「笑った場面」を確認できました!
・ゴルゴの “笑いのツボ” は……
振り返ってみると 6回中4回は “拘束状態” だったことがわかる。ゴルゴ13という男は、どうやらピンチになってもその状況を楽しむ傾向にあるらしい。また、皮肉な言動にも少なからず反応するようだ。
しかしながら、いわゆる “笑いのツボ” は依然として不明と言っていいだろう。ただ、この謎の多さこそがゴルゴ13という男の奥深さでもある。
・ゴルゴ13の魅力
さて、記念すべき200巻が出たので、お祝いの言葉にかえて『ゴルゴ13』の魅力を少しだけ語らせていただくと……まずは、名言ですね。
「俺の後ろに立つな……」は割と有名だと思いますが、「俺は……本能的に後ろに立つ者を排除する……」とかは震え上がるほどクールで、カッチョイイ──ッ! 他人には絶対、事前に知らせておいてほしい本能ですね。
あと「俺は…… “1人の軍隊” だ……」というのもシビれましたね。陸・海・空(たまに宇宙)から標的を暗殺するゴルゴは、ライフル銃だけでなくあらゆる武器を使いこなし、また肉弾戦でもかなりの強さを誇る。まさに “1人の軍隊” だ。
名言については数え切れないほどあるのでこのへんにしておくが、魅力を語る上でほかにハズせないものとしては、やはり「世相を反映した物語」だろう。
連載当初(1970年~)は、冷戦状態にあったアメリカとソ連、あるいは西側各国のスパイがからむエピソードが多かった一方、近年は台頭する中国や最先端技術に関するものが多いように感じる。
そのリアリティのある話に暗殺がからんでくるもんだから、さあ大変! 読み終えると、まるで『濃密な潜入ルポ』と『壮大スペクタクル映画』を1度に見たような満足感だ。
・ゴルゴ読もうぜ
今回は、そんなゴルゴ13の「笑った場面」に着目したワケだが、ほかにも “激レアシーン” や、はたまた “お決まりシーン” が多くあるのもこのマンガの醍醐味!
これまで読んだことのない人にはぜひ一度手に取っていただきたいとともに(1話完結だから何巻でもいいぞ!)、オールドファンもこれを機に読み返して、ゴルゴの魅力を再発見してみてはいかがだろうか。
執筆:ショーン
Photo:RocketNews24.
ショーン




















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