ロケットニュース24

【実録】神と崇めるGoogle様の広告に「29800円のロレックス」が出てきたのでポチってみたら闇を見た

2021年4月4日

「よく『Google先生』と言いますが、それは少し違います。Googleは神です。インターネットの神です。ググって出てこない情報は、この世に無いのも同然。つまるところ事実上の神なのです。なので逆らってはいけません。Google様の言うことは絶対なのですから──」


Googleの事業のひとつに広告業がある。おそらくこの記事のどこかにもGoogleの広告が貼ってあるはず。この世の中、よ〜く見るとGoogleのAd(広告)だらけ。YouTubeに出てくるCM&広告、あれもAds by Googleだ。

そんなGoogle様がオススメしてくる広告、信じるに決まってる。疑うことすら冒涜だ。なにせ推してくるのは神なのだから。でも今回は、ところがどっこい……って話である。


──今、私は、神に問う。


話は昨年にさかのぼる。

前々から腕時計が欲しいなと思っていた。「これ!」といったブランドは決めていないけど、なんとなく大人っぽい高級なのが欲しいな〜的な。

実は私、生まれてこのかたG-SHOCKしか使ってこなかったので、恥ずかしながら腕時計には疎(うと)いのだ。


そんなある時──。


ボケ〜っとYouTubeを見ていたら、腕時計の広告が表示されていた。そこには「限定セール」「29800円」「超sale開催」などと書かれており、よ〜く画像を見てみると……


ROLEX……ロレックス!

これが俗に言うロレックスの時計ってやつか! でもなんか安すぎね? 2万9800円って……大丈夫かコレ? しかも広告主の名前が……


「rolleoxs」

……ってなってるし。どう読むんだ? ローレオックス? いや、でもこれは、きっと単なる店名に過ぎない。ニセモノを売る店であるわけがない。だって、この広告は……


審査もキチッとやってると思われる「Google広告」だから。神が言うんだ、間違いない! そう信じて、私は広告をポチっと押した。すると、お店のページに飛んだのだが……


待って。ちょっと待って。ツッコミどころ満載すぎて脳内の警戒アラートがウーウー鳴りまくっているのだけれど、まず最初に言わせて欲しいのは……


すでに店名がさっきの「ローレオックス(rolleoxs)」と微妙に違うってこと! ブレブレやん!! サイトを作ってる本人が自分の名前をわからなくなっちゃってる感じやん!!!!


しかも!


「私たちについて」的なページに飛んでみたところ……

また名前が微妙に変わったァ〜っ!! rolexei……ロレシェイと読むのであろうか? なんだかよくわからないが、電話番号や住所を見るに中国のお店であるっぽい。どうりでシェイシェイなわけである。アイッ。


まぁそれはよしとして(よくないけど)……


約311万円が約3万円という狂気の割引率もナイスだが、私が地味に驚いたのは「代金引換(代引き)」という点である。

こういう時、普通だったらクレジットカードであろう。もし仮に相手が詐欺師だったとしたら、今回の買い物だけでなく、のちのち他の犯行にも活用できそうなクレジットカードを使わせるはず


ところがこのお店は、なんとまさかの……


代引きオンリー!

ウソだろ!? だってだって、代引きってのは、相手がお金を払って商品を受け取らないと お金がもらえないシステムなんだぞ?

途中で「怪しい」と思われたら、受取拒否することだって可能なんだぞ? あまりにも正々堂々としすぎている。アナタ、マッスグスギテ、ソンスルタイプネ。


しかしながら、この「代引きオンリー」こそが “詐欺の店ではない” という証 (あかし)のようにも思えてくる。絶対に商品を送り届ける……的な誠意 or 意地すら感じる。

というか、疑うこと自体が間違いなのかも? だってこれはGoogleが認めたGoogle広告……。神を疑うなんて冒涜もいいとこ! イカンイカン……。Google様、サーセン!!


では……


\ポチ/

私は信じた。Google様と、この店を。


あとは待つだけ。


ところが……


待てど暮らせど、届かない。トップページに「3日で届く」と書いてあったが、あれはウソだったのか? ということで「商品はいつごろ届きますか?」と聞いてみたところ……


少し変な日本語だけど、「コロナの影響で税関ストップしている可能性アリ」と、丁寧な返事をしてくれた。シェイシェイ。

しかし、ふと私はここで「ニセモノのロレックスだから税関で止まってんじゃねーの?」なんて邪 (よこしま)なことを一瞬だけ考えてしまったが、そんなわけないよな。

いや、でも、一応、念のため、聞いてみっか……


すると……


ほらね! これなら大丈夫だ。だって本物だもん。ホンモノなら税関も通る。おそらく彼の言う通り新型コロナの影響なのだろう。


──そんなやりとりから22日後──


\(^o^)/やっと届いた〜!\(^o^)/

結局のところ、注文してから35日もかかったけども、ちゃ〜んとこうして受け取ることができたのだった。


が!


ふと冷静に荷物を見ると、ロレックスのわりには超絶ワイルドな梱包である。高級感、一切なし! これ、本当の本当に “本物” なのであろうか? 話の続きは次ページへGO!!


執筆:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.

【実録】神と崇めるGoogle様の広告に「29800円のロレックス」が出てきたのでポチってみたら闇を見た(2ページ目)


こ、これが……


ロレックス!


っほぉ〜〜〜〜……


\クンクンクンクン……/

なんか重油みたいなニオイがスッゴイけど、これが新品のロレックスの香りなのか……!


どうやって巻いたら良いのかわからない構造もまた、「敷居の高いロレックス」的な高級感を漂わせている。


18kって書いてあったから、これ「金」だったりするのかな……!


……てな感じで人生初のロレックスに感動しきりだったのだが、いざ会社に持っていくと、同僚のYoshioと中澤が……



これニセモンじゃね?

と、ケチつけてきたのである!

失敬な! 遺憾の意!! 今の発言を撤回せよ!!!! いいかオマエら、よ〜く聞け! この腕時計はなァ〜、あのGoogle様の広告から買った「本物のロレックス」であるぞッ!

まがりなりにもネットで、なんなら主にGoogle広告の収入で食っている我々。Google様のさじ加減ひとつで生きるか死ぬか決まる生業(なりわい)。つまるところGoogleは神! そんな神様がパチモンの広告を表示するわけがなかろう! このバカモンがーーーッ!!


とか言いつつ……


ちょっと不安になってきた。


も、もちろんニセモノだなんて思ってないよ。ホンモノだと信じて買ったんだからね。でも……やっぱ、どう考えても安すぎる。箱も想像外に質素だし、証明書的な紙も付いていない。これ、本当の本当に本物なのか……!?


そこで私は、このロレックスの真偽を確かめるべく、とある “買取専門店” に行ってみた。しかし、そこで待ち受けていたのは、神を恐れているとしか思えない謎の対応。探れば探るほど “闇” が見え…… 。話の結末は最終ページへ!


執筆:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.

【実録】神と崇めるGoogle様の広告に「29800円のロレックス」が出てきたのでポチってみたら闇を見た(3ページ目)


まず向かったのは、「満足度が高い」と謳(うた)う買取専門店。もちろんロレックスをはじめとした高級ブランド時計にも対応しているショップである。


ドアを開けると、狭い店内。すぐに店長らしきメガネの男が「どうぞ」とカウンターに通してくれた。

そして「あのぅ、ネット通販で買ったロレックスなんですけども……」と箱から時計を取り出し見せてみると、メガネ店長は眉毛を八の字に傾けながら、開口一番、


「うちの基準だと買えないですね……」


と即答した。はて? 「うちの基準だと買えない」とは? なんなんだ、その遠回しな言い方は……。もっとハッキリ言ってくれ!

ということで、私はズバっと、「それはつまり、この時計はニセモノだということですかね?」と聞いてみたのだが、メガネ店長は、相も変わらず、


「ニセモノかどうかはロレックスに行ってもらえればわかると思うんですけど、うちの基準だと買えないですね……」


と、ニセモノかどうかの明言を回避! なぜだろう? 神を否定することになるからか?

とにかく、何を聞いてもアントニオ猪木のように「ロレックスに行けばわかる」と言うので、その足で近所のロレックスへ ダダーッと行ってみることにした。


そのロレックスは、デパートの中に入っていた。高級感あふれる店構えに若干とまどいつつも、勇気を出してズズイと入店。そして、

「あのぅ……インターネットの通販で買ったロレックスの腕時計なんですけども。これ本物なのでしょうか?

と聞いてみた。すると、対応してくれた女性店員は──


「本物かどうかの鑑定はしておりません。お預かりして “修理ができるかどうか?” という判断しかできないものでして……」


との返事。しかしながら、東京・丸の内にあるロレックス(日本ロレックス 東京サービスセンター)であれば、その場で修理を受け付けているとの有益情報を教えてくれた。

さらに、修理の受付はできないが、少しだったら見てくれるとのことで、私が持参したロレックスを差し出すと、


・まず箱がおかしい
・ストップウォッチ機能の動きも通常ではない
・ベルトの部分も通常のタイプではない


と様々なことを教えてくれたうえに、「つくりが違うのは確かでございます」との明言までいただいた。そんな答えにテンポよく「では、正規品ではない?」と誘いのジャブを打ってみたのだが、返ってきたのは、


「──ご理解をいただければ(微笑)」。


最終ステージは、丸の内にある「日本ロレックス 東京サービスセンター」。重厚な扉を開き、ジャストサイズのスーツをビシっと着こなした店員さんに事情を話すと、すぐに腕時計を診てくれることに。そして、マッハの勢いで……


「こちらは社外品になりますね」


気持ち良いくらいのジャッジメントーッ!! さらに「一応、ウチの技術者にも見せてみます」との展開になったが、そこでも瞬時に「社外品」との判断が下された。

あまりの判定スピードに驚いた私は、「どう見ても社外品なのですか?」と質問してみた。すると、


「どう見ても社外品……そうですね。パッと見てわかるくらいの、ハイ。わたくしども、毎日同じモノを見ていますので、それに比べると作りがやっぱり違いますね」


と実にプロフェッショナルな回答。判定スピードも、そして接客もピカイチだ。もしかしたら、この人だったら……という淡い期待を胸に秘め、私は最後にこう聞いた。


ではこれ、ニセモノということですかね?


それに対する返答は……


「……お客様の言葉を借りるならニセモノということになります」。


──最後の最後まで、自らの言葉として「ニセモノ」と言わなかった今回の3人。一体なぜ言えないのか? 一体何を恐れているのか? うっかり「ニセモノ」と言ったら消されるくらいの闇を感じる。これが神の力なのか……!?


いずれにしても、私は神と崇めるGoogleの広告を信じ、結果として、ニセモノのロレックスを買ってしまった。つまるところ、Googleはニセモノのロレックスの広告を出していた

いや、「出していた」というのは間違いだ。なぜなら、その後も……


webページを見ていても……


YouTubeを見ていても……


なんなら自分の個人ブログにも……


私が購入した「rolleoxs」とは違う店名ならびにドメインだが、価格も、仕組みも、やってることがほぼ同じなサイトの広告を……


Googleはゴリゴリと私に推してくる。


それはまるでアジアの怪しい物売りのごとく、あの手この手で、しつこくしつこく何度も何度も推してくる。


もしも私の勘違いだったら大ごとになるので、そのつどスクショをとりつつ、広告枠を調べているのだが……


やはりいつも──


Ads by Googleなのだ。


もちろん、いちばんの悪(あく)はニセモノを売る業者である。知らず知らずのうちに怪しい広告が紛れ込んでいるGoogleもまた被害者なのかもしれない。


だが私は、あえて言いたい。


「Googleさん、しっかりしてくださいよ!」と。

「あなたが騙されてどうするの!?」と。

「このままだと、そのうち こう言われてしまいますよ」と。


「よく『Googleは神』と言いますが、それは少し違います。Googleは詐欺です」──ってね。



執筆:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
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