家カレーが好きだ。専門店で食べる本格的なスパイスカレーもウマいが、本当のことを言うと市販のカレールーで作ったカレーが一番好きなのである。で、ふと思った。これらのカレールーを全部混ぜたら、家カレーの王が誕生するのではないか。

そこで今回は、市販されている様々なカレールーを買ってきて、それらを一つの鍋にブチ込んでみることに。王が生まれる瞬間を、どうか見逃さないでほしい。

・カレールーを買いまくる

未来の家カレー王誕生のため、近隣のスーパーへ カレールー収集の旅に出た私(あひるねこ)。もちろんこれですべてではないと思うが、43種類ものルーが一堂に会する光景はなかなかに壮観である。ていうか、こんなに売ってるもんなんだな。



『バーモントカレー』や『ジャワカレー』といった定番商品から、個人的にはあまり使ったことがない粉状のルーまでタイプは様々。値段もピンキリで、もっとも高いものだと動物性原料を使っていないオーガニックカレーは、少量なのに700円近くしたぞ。王を生み出すのもラクではないということか。



・リスト

参考までに、今回用意したカレールー43種類を以下にまとめてみた(順不同)。辛さが複数ある商品についてはすべて中辛で統一。1種類としてカウントしている。さあ、あなたの家の定番カレーは入っているかな?


ハウス「ザ・カリー」
ハウス「こくまろカレー」
ハウス「こくまろバターチキンカレー」
ハウス「バーモントカレー」
ハウス「ジャワカレー」
ハウス「ジャワカレー キーマカレー」
ハウス「ごちレピライス キーマカレー」
ハウス「コクブレンドカレー」
ハウス「海の幸カレー」
ハウス「印度カレー」

S&B「フォン・ド・ボー ディナーカレー」
S&B「プレミアムフォン・ド・ボー ディナーカレー」
S&B「おいしさギューッととけ込むカレー」
S&B「ゴールデンカレー」
S&B「プレミアムゴールデンカレー」
S&B「カレーの王子さま 顆粒」
S&B「本挽きカレー」
S&B「とろける濃いカレー」

グリコ「プレミアム熟カレー」
グリコ「カレー絶品(ZEPPIN)」
キャニオンスパイス「プラチナ エクセレントカレールウ」
キャニオンスパイス「こどものためのカレールウ」
キャニオンスパイス「大人のためのカレールウ」
風と光「オーガニックヴィーガンカレールゥ」
風と光「奄美カレー」

コスモ「直火焼カレールー」
コスモ「直火焼 十五穀カレールー」
オリエンタル「米粉カレールウ」
オリエンタル「マースカレー」
創健社「インドカレー」
創健社「植物素材の有機カレー」
創健社「植物素材の本格カレー」
創健社「ひよこ豆粉のカレールウ」
創健社「お米で作った本格カレールウ」
創健社「管理栄養士が考えた こどものカレールウ」

セブンプレミアム「コクと香りの味わいカレー」
エバラ「横濱舶来亭カレーフレーク こだわりカレー」
スマイルライフ「味わい深いコクのカレー」
成城石井「おうちでホッとカレールー」
ハチ食品「カレー専門店のカレールー」
フリーデン「スパイシーカレー」
桜井食品「ベジタリアンのための野菜カレー」
「国立薬膳カレールー」


・調理スタート

紹介が終わったところで、さっそくこれらのカレールーを一つの寸胴鍋にブチ込んでいきたい。と言っても、すべてのルーを入れてしまうとサイヤ人の食堂みたいな量が出来上がってしまうため、何等分かされている内の一つを使うなどして量を調節する。



必要最低限の具材を炒めて煮込んだら……


次々にルーを投入!


必要な水の量はメーカーや商品によってバラバラだ。そのため、ドロドロになり過ぎたら追加、なり過ぎたら追加を繰り返していく。かき混ぜるたびにズシンと重みを増すお玉。コンクリ業者か私は。料理というより、もはや作業現場である。



おそらくカレールー側も、この人数で1台に相乗りするという経験は皆無だろう。普通はせいぜい2~3種類であることを考えると、鍋の中で誕生しようとしているのは間違いなくカレーの王。日本のカレー文化における歴史的瞬間と言っても過言ではない。こうして煮込むことしばし……。



さあ、今こそ姿を現せ我らが王よ。


43の選ばれしルーによる究極のカレーが……


限界を超えた空前絶後の家カレーが……


これだァァァァァァアアア!!!!!!!



…………。


ただのカレーやないかッ!


・想定外

そこにあったのは、1ミリの隙もないほどに普通なザ・家カレーだった。それどころか、親元を離れた大学生が初めて一人で作りました的な初々しさすら漂っている。なんたる肩透かし! 魔人ブウが初めて登場した時くらいの「え、コイツが……?」感である。

やはり市販のカレールーを混ぜたくらいでは何も起こらないのだろうか……? 少々ガッカリしつつ、味をチェックするため実際に食べてみることに。まあ、カレーなんてどう作ったってマズくなることはないからな。どうせこれも普通の……


いやウッマぁぁぁぁああああ!!!!


・超えてきた

な、何なんだよこのカレーは!? ウマい! ウマすぎる!! いや、冷静に考えると味の系統自体はよくある家カレーだ。しかし、味の深みやコク、スパイシーさが普通のカレーと比べて段違いである。次元が違うと言ってもいい。家カレーなのに家カレーではないというか……とにかくウマすぎる!



実は当サイトは以前、市販のレトルトカレーを75種類混ぜるという企画を実施したことがあるのだが、その時は洋風カレーやインドカレー、タイカレーなど様々な種類を同じ鍋にブチ込んだため、完成したカレーは幾重にもレイヤーが重なった複雑な味わいとなった。味のベクトルがあちらこちらに向いているというか。

それに対し今回の家カレーは、不思議とどこか統一感がある。おそらく飛び道具のような突飛な商品がないからだろう。似た系統の味が集まっている印象だ。しかし、それが43種類となると話は別。わずかな違いを地層のように積み重ね、塗り固め、反復することで、いまだかつてない重厚な味わいを獲得することに成功している。

・比類なきウマさ

試しに定番ルーを1種類だけ使ったカレーを用意して食べ比べてみた。玉ネギが入っていないという大きなハンデはあるものの、ハッキリ言ってその差は歴然である。もう味の厚みがまったくもって別物。同人誌とゼクシィくらい違うぞ。



他の編集部メンバーにも食べてもらったところ、やはりと言うべきか、圧倒的に王の方がウマいという結論にしかならなかった。「人によるかも」とか「自分はこっちも好き」とか、そんな曖昧な回答は生まれ得ない。確定した事実として、このカレーこそが家カレーの王なのだ。



よって今回の結論としては、市販のカレールーを43種類すべて混ぜると王が誕生するということになる。一体どれだけのバカ(?)が実践しようと思うのかは分からないが、ぜひ覚えておいていただきたい。

それでは最後に、今回の検証にかかった費用を発表しよう。カレールー43種類の合計金額は……



税込1万3857円……!!


ココイチで数回に渡って死ぬほど豪遊できそうな額だが、この値段を高いと考えるか安いと考えるかは、あなた次第である。

Report:あひるねこ
Photo:RocketNews24.

▼しばらくカレーだけで生きていけそうだ。

▼我らが王は眠る。

▼冷凍庫の中で。