イギリスの登山家ジョージ・マロリーは、エベレストに登る理由を問われこう言ったという。「そこにエベレストがあるから」と──。
山があれば登るのが男。そして、今、私(中澤)の眼前には登るべき山がそびえている。560円にして切り立つそばの山。『味奈登庵 山下町店』の「富士山もりそば」だ!
・何かと気の利いてる『味奈登庵』
神奈川県に多数の店舗を展開しているそば屋『味奈登庵』。その形態はフルサービス店とセルフサービス店の2つがある。山下町店はセルフサービス店で、注文は券売機での食券購入、そばはカウンターに置かれ、お茶が欲しければ給茶機。早い話が、セルフサービス店は立ち食いそば屋の形態なのだ。
とは言え、水ではなく給茶機なところが、普通の立ち食いそば屋よりちょっと気が利いている。立ち食いそば屋は腰を落ち着ける場所ではないものの、外で冷え切った体に温かいほうじ茶が染み入るようだ。冬に嬉しい気づかいである。
それに代表されるように、何かと気の利いているこの店。例えば、継ぎ足し用のつゆが小瓶でついてくることもその1つだ。そばを食べていると、つゆがなくなったり、薄まって味が変わって残念な気持ちになることってあるよなー。なにせ……
富士山もりそばは約1kgあるし。
560円でこの量おかしいだろ。しかし、実はこれも思いやり。私は以前、本店に行ったことがあるが、この富士山盛りは、そばを愛する人に好きなだけ食べてもらいたいという店主の想いから生まれたものだ。
・味奈登庵の半分は愛でできている
キュッとしまったそばの味にもそんな愛が見え隠れするようだ。もりそばでも十分に美味しく食べられるこの麺とつゆのバランスはシンプルにコスパが高い。というか、コスパが高すぎて全然減らねェェェエエエ!
並1杯分くらい食べたと思うんだけど相変わらずの山。やはり一筋縄ではいかないか。以前の味奈登庵レポート記事を読んだ人なら分かるかと思うが、私は約5年前に本店の富士山もりそばの登頂に失敗している。言わば、これはリベンジ。男の意地。悲願!
・夢にまで見た底
食べても食べても底を見せない富士山もりそば。正直、普段の食事ならここでストップだ。だが、今日は行く! なぜなら、富士山もりそばは私にとってのエベレストだからだ! うおおおおおおお!!
と、その時!
見えた!!
5年前はそばに覆われ見ることさえ叶わなかった器の底が!! こんなザル使ってたのか……。5年追い求めたその光景は、全くもって平凡であった。
・登そば家のロマン
とは言え、底は少し見えただけであり、私は限界を超えている。ここからは自分との戦いだ。もう少し……あと少しなんだ……! 箸から滑り落ちるそばを刻むように少しずつ口に押し込んでいくが……
最後の半皿を食べきることができなかった……。
やはり、そこらの大盛や特盛の比ではない。勝負には負けたが、そのコスパは十分に伝わったのではないだろうか。
思う存分そばを食べられる『味奈登庵』富士山もりそばは登そば家のロマン。なぜ注文するのか? もし、そう問われたなら、私はこう答えるだろう。「そこに富士山もりそばがあるから」と! ごちそうさまでした!!
・今回紹介した店舗の情報
店名 味奈登庵 山下町店
住所 神奈川県横浜市中区山下町45-1
営業時間 11:00~22:20(新型コロナウイルスの影響により営業時間が違う場合あり)
定休日 無休
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.