むかしむかし、シンボリルドルフという競走馬がおったとさ。それはもうとんでもない強さで皐月賞・日本ダービー・菊花賞の三冠を無敗で制覇。競走人生で芝のGIを7勝と名実ともに歴史に残る名馬となったのじゃった。しかし……!!

不思議なことにルドルフが7勝を達成してから、どんなに強い馬が現れようともGI8勝馬は誕生していない。これまでに8勝しそうな馬はいた……希望を持てる馬はいたのだが、今の今まで破られておらず。いつしか人はこのジンクスを「ルドルフの呪い」と呼ぶようになった。

・ルドルフの呪い

これまで競走人生でGIを7勝したのはたったの6頭。テイエムオペラオー、キタサンブラック、ジェンティルドンナ、ディープインパクト、ウオッカ、そしてシンボリルドルフでいずれも名馬たちである。

そして現在進行形でGIを7勝しているのがアーモンドアイ。8勝に王手をかけて春の安田記念に挑んだ絶対女王だったが、敗れてしまったのはご存じの通り。改めて今週末の天皇賞・秋で「ルドルフの呪い」打破を目指す。今回も呪いが発動するのか? それともついに……?

・アーモンドアイで間違いない理由

信じる信じないはあなた次第だが、ずばり答えはアーモンドアイが8冠を達成すると見ていいだろう。理由は大きく3つあって、まずはメンバー構成が挙げられる。今年の天皇賞・秋はGI馬7頭と豪華な顔ぶれが揃ったが、アーモンドアイを負かす馬がいるかと聞かれたら疑問符がつくのだ。

ライバルの1番手は宝塚記念を制して成長著しいクロノジェネシス。11走で掲示板を外したことなく、10走が馬券に絡む安定感はケチのつけようがない。アーモンドアイと初対決とはいえ、いい勝負をするだろう……が、女王の前ではどうしても霞んで見えてしまう。得意の重馬場なり条件が揃わないと難しく、おそらく真っ向勝負じゃ厳しい戦いとなるだろう。

あとは昨年2着だったダノンプレミアムも人気になると思われる1頭ではあるものの、8枠11番に入ったことで減点しなければいけない。というのも、天皇賞・秋はスタートしてすぐにコーナーを迎えるだけに外枠が不利。それに加え、同馬は昨年同じ舞台でアーモンドアイに完敗している。不利を抱えた状態で巻き返せる可能性は低い。

どちらかといえば、GI未勝利ながら堅実な走りが売りで府中を得意とするダノンキングリーの方が上の着順にくるかもしれない。他には復活ムードが漂うキセキなどもいるも、アーモンドアイの2着ながら超絶レコードを叩き出したジャパンカップの頃の状態には見えない。

・得意の府中

そしてGI8勝を後押しするのが地の利。つまりは競馬場だ。ここまでアーモンドアイは府中(東京競馬場)で7戦5勝(2着、3着が1回ずつ)と得意にしている。負けた舞台はいずれも安田記念(1600メートル)で納得がいくものだった。

昨年は大きな不利を受けての3着。今年は純粋にグランアレグリアが強かった。ただ、これが2000メートルになれば話は別。多少の不利があったとしても取り返せるため、アーモンドアイの能力を信頼して問題ない。今回7枠9番と決して絶好枠ではないものの、昨年圧勝したときと同じ舞台で負けるビジョンが浮かばない。

・鞍上も盤石

最後にGI8勝を手繰り寄せるラストピースが鞍上のルメール騎手である。天皇賞を春秋あわせて4連勝中と「盾男」と言っても過言ではなく、大一番での信頼度や実力は今さら説明するまでもない。

先週の菊花賞でコントレイルをあと一歩のところまで追い詰めたのは、ルメール騎手の腕があってこそ。本命馬に騎乗することが多くて忘れがちになるが「ルメールお上手」と改めて思った人もいることだろう。今回も最良のパートナーが鞍上にいるのはジンクス打破へ心強い要素となる。

はたしてルドルフの呪いは解かれるのか。もし解かれてアーモンドアイが8勝を達成したならば、2週連続で歴史が塗り替えられている競馬界にまたしても歴史的瞬間が訪れることになる。競馬に絶対はないが、今度こそルドルフの呪いは破られるのではないか。そう、記録は破られるためにあるのだから。

参照元:JRA
イラスト・執筆:原田たかし
Photo:RocketNews24.