「焼肉」というと大勢でワイワイやりたいが、コロナ禍の今はできるだけそのような形での食事を控えた方が良いだろう。たとえ1人焼肉だとしても、網の上に肉を盛大に並べてお祭り気分を味わいたいところだ。しかし私(佐藤)は気づいた。それだけが焼肉の楽しみ方ではないことを……。

最近訪ねた東京・五反田の「じゅう兵衛はらみ堂」でランチをした際、1枚ずつ肉を焼くことこそ本当の焼肉ではないか? と気づかされたのだ。ここの舟盛りランチは私の予想を超える、厳かなものだった……。

・舟盛りだと!?

お店の運営元は「株式会社うる虎ダイニング」。黒毛和牛を一頭買いする “和牛一頭流” をコンセプトに、都内で店舗展開している。その中のハラミを売りにするお店がこのはらみ堂である。もちろん私はハラミを食う気満々でお店を訪ねた訳だが、メニューを見てその考えが変わった

舟盛りがあるじゃないか! 舟盛りといえば、スシローの居酒屋「杉玉」で思わぬ当たりメニューに遭遇した経験がある。もしや、ここも当たりなのでは!? そう思い、舟盛りの「松」(税込2500円)を注文してみた。


・1度に全部のせたら一瞬で終わってしまう

テーブルにはロースターがないので、まずは七輪登場。そしてすぐに料理が運ばれてきた。ご飯・スープ・サラダ・韓国のりの佃煮、それに舟盛りの肉!


うお! 思っていたのよりもずっと上品だ。私は近頃、300グラムとか400グラムのステーキや、食べ放題の焼肉屋とかばっかり行っているせいで、量の感覚がマヒしているらしい。舟盛りと目にしただけで肉がたっぷり出てくると思っていたが、上質な肉が8切れだった


これは1度に全部網にのせて肉を焼き切ったらもったいない。1枚ずつ味わって食おう。限られた時間で大量に食う。そんな焼肉の食べ方しかしてこなかった自分を顧みる次第だ。さて、舟に搭乗している面々を紹介しよう。まずは上タン塩。


次にみすじ。


最後に三角。


いずれも凛々しい面構えをしている。色味の鮮やかさは、私の肉人生で1・2を争うレベルである。


・厳かなる作業

これをだだっ広い七輪の網の上で1枚ずつ焼く。まるでプロのピアニストが、初めて触れるピアノの音色を確かめるために、1音1音鍵盤の鳴りに耳を澄ませるような……。そんな厳かな作業だ。


上タン塩は肉厚で、中に旨味をギュッと閉じ込めている。食べると、その閉じ込められた肉汁が口の中にほとばしった。なんという上品な味わい。食べ放題の紙切れのように薄いタンとは訳が違うな。


続いてみすじを焼こう。七輪の炎をバックにして、浮かび上がる肉の姿は広告用写真のように見えなくもない。絵になるなあ~。


みすじとは腕の一部分の肉を指す。歯ごたえはあるのに柔らかで、たんぱくな味わいだ。クラスに1人はいる、存在感はそんなにないけど、めちゃくちゃ頭が良くて運動もできる優等生。そんな感じの味だ。とにかくクセがない。


最後に三角である。今まで数えきれないほどの焼肉体験に置いて、さんざん網を汚してきたが、今日この場の焼肉では汚れることはないだろう。何しろ肉が美しいのだから。


三角には恐れいった。まるでシルクのような口当たりと噛み応えだ。いや、「噛む」ということさえもムダに思えるほど、肉が静かに溶けていく。まさか舟盛りを頼んで、こんな肉に出会うことになるとは思ってもみなかった。


このコロナ禍で1人焼肉を楽しんでいる人も多いと思う。たまにはランチを奮発して、高級1人焼肉を楽しんでみるのはいかがだろうか。私は1枚ずつ焼くスタイル、「肉と対話するような静かな焼肉」を今後も楽しんでいきたいと思う。そして次こそは、はらみ堂でハラミを食おう。


・今回訪問した店舗の情報

店名 じゅう兵衛はらみ堂
住所 東京都品川区西五反田1-32-2 1F
時間 ランチ(平日)11:30~14:00(L.O.13:30)、ディナー(全日)17:00~23:30(L.O.23:00)
定休日 なし

参照元:株式会社うる虎ダイニング
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24