すでに夏は終わった……。これから朝夕は涼しくなり、あっという間に秋の訪れを感じることになる。そうなると、温かいものが美味しく感じる季節だ。おでんや肉まん、たい焼きなどが身も心も温めてくれるだろう。

たい焼きといえば、日本一薄い「たい焼きの開き」を提供するお店について2017年に紹介した。そのお店、『ともえ庵』に久しぶりに訪ねてみると、たい焼きの開きからさらに進化した商品の販売をしているじゃないか! 「生ぶどうたい焼き(1尾350円)」「練乳アイスたい焼き(1尾500円)」だって! 何それ、一体どんな味がするの!?

・生ぶどうが入ったたい焼き

生ぶどうって一体どういうこと!? お店の人に当サイトで紹介したい旨を伝えると、近くの事務所にいたオーナーの辻井さんがわざわざ説明をしに来てくれた。そこでさっそくオーナーに質問をぶつけた。


佐藤 「生ぶどうのたい焼きって中にぶどうが入ってるってことですか?」

辻井さん 「そうです。餡子の中に巨峰を入れております」

佐藤 「え!? でも、ぶどうって水分が出ますよね?」

辻井さん 「そうですね。餡子の中にぶどうを入れっぱなしにしておくと、浸透圧で水分が出てきてしまいます。そこで、たい焼きを焼く直前に、焼く分だけぶどうと餡子を合わせて、水分が出にくく調整しています」

佐藤 「なるほど! 直前に合わせるんですね。でもどんな味がするんですか?」

辻井さん 「ちょうど焼き上がりましたんで、食べてみてください」


辻井さんとお話している間に、カウンターの中では店長さんが、たい焼きを “一丁焼き” していた。7~8分かかるとのことだったが、話をしている間に焼き上げて頂いていたのだ。アツアツたい焼きを受け取ると、見た目は通常と変わらない気が……。


しかし、半割にすると……



中にいた!! 皮付きの巨峰が!

粒あんの間に、まるで当たり前みたいに巨峰がいるじゃないか。はたして味は? 食べてみると、コレがビックリするくらい合う! ぶどうの果実味と餡子の甘味がちょうど良く調和してるじゃないか。甘さのなかにみずみずしさが加わって、味がぶつかり合う感じが一切ない。それにしても、どうしてこんな組み合わせを思いついたのか?


辻井さん 「毎月、月替わりのたい焼きを作ってるんですよ。それで日々、この食材をたい焼きにできるかな? って考えていて、ある時に鹿児島にラムレーズンとつぶあんを合わせた「ラムどら」というのがあるのを知りまして、ラムレーズン(干しぶどう)と餡子が合うなら、ぶどうと餡子は合うはず。という考えに至りました。干しぶどうや半生の干しぶどうを試したり、生ぶどうも巨峰・ピオーネ・デラウェア・シャインマスカットなど、いろいろ試行錯誤を重ねた結果、2年前にこの形に落ち着いたんです」



ちなみにこの生ぶどうたい焼きは、2020年9月9日で今季は終了予定なので、気になる方はお早目に。


・豪快に棒状アイスをサンドしたたい焼き

そしてもう1つ、8月13日から発売が開始されている「練乳アイスたい焼き」だ。たい焼きでアイスをサンドしているのだが、焼き立てアツアツのたい焼きでアイスを挟んだら、溶けないの? これにもこの店ならではの工夫が施されていた。


辻井さん 「お察しの通り、アイスを挟むと食べ終わる頃には、溶けてしまって手や口が汚れます。もう1つ、試作段階で問題がありまして、市販のアイスをサンドすると味が強すぎて餡子の味をかき消してしまうんですね。そこで考えたのが、うちで提供している「練乳餅」を使うことにしました」

佐藤 「練乳餅ですか? そこにあるヤツですよね?」

辻井さん 「そうです。うちの「阿佐ヶ谷練乳餅」は、自家製練乳をさつまいものでん粉(かんしょでん粉)で固めたお菓子です。かんしょでん粉とは、わらび餅を作る時に使われる材料のひとつですね。たい焼きに挟むために、うちの練乳餅に生クリームを加えて、凍らせた時にシャリっ! とした食感になるように仕上げました。冷たいうちはアイス、温まってくるとムースみたいになるので、溶けても流れ出すようなことはありません」

佐藤 「おお! それなら汚れる心配もありませんね」


実物はたい焼きを半割にして、間に棒状の練乳アイスをサンドしたものだ。見た目は結構豪快!



食べてみると、まず冷たいアイスのシャリっとした歯ごたえがあって、後からアツいたい焼きの皮と餡子の食感が追いかけてくる。口のなかで “冷たい” と “アツい” が混ざり合ってちょうど良い温度になる。餡子にホイップクリームをかけて食べているような味わいだ。


しかし主役はあくまでも餡子。アイスの甘さは餡子よりもずっと控えめで、全然邪魔にならない。味に飽きることなく、尻尾まで食べることができる。


・御鯛印帳

それにしても、良く考えられたたい焼きだ。一瞬奇抜さが目を引くけど、食べると素材が調和していることがわかる。なお、お店では「御朱印帳」ならぬ「御鯛印帳」を出している。月替わりたい焼きを食べると、その月の印鑑を押してもらえるそうだ。


すべての御鯛印をそろえると記念品がもらえるそうなので、たい焼き好きはぜひコンプリートしてくれよな!


・今回訪問した店舗の情報

店名 たい焼き ともえ庵
住所 東京都杉並区阿佐谷南1丁目35-20
営業時間 11:00~19:00(短縮営業中)
定休日 なし

参照元:ともえ庵ブログ
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24