
先日、10個で8000円という「いとしのきみ」なる超高額な卵が存在することを知った筆者。単純計算すれば1個800円である。普通に1回の食事分くらいはまかなえる金額。
庶民的ではない金額だが、売られ続けている以上、きっと価格相応の何かがあるのだろう。好奇心に負けて買ってみたところ、ガチに一般的な卵とは全く違うことが発覚。美味いとか新鮮とか、そういう話以前に、色が違うのだ。具体的に言うと、青いのである。何で青いのだろう……? 気になって仕方がないので調べてみることに。
・青い卵
高い卵にありがちな、厳重で豪華な包装の中から出てきたのは、やや緑がかった青い卵。まるでムクドリの卵のよう。いや、色の濃さはムクドリほどではないが、なんにせよ事前情報無しではニワトリの卵だと思えないような色だ。普通の卵と並べて見ると、青さが一層ひきたつ。
詳しく販売サイトに目を通すと、この卵は「あすなろ卵鶏」というニワトリのものらしい。そして家畜改良センターによると、「あすなろ卵鶏」は青森県が開発したニワトリなもよう。
アローカナというチリ原産の青い卵を産む種類のニワトリを、白色レグホーンと交配させて作るらしい。試しに青い卵を割ってみると、殻の内側までちゃんと青かった。そして普通の白い卵よりも殻が硬い気もする。
また、卵殻膜(殻の内側の薄い膜)もやや厚く、丈夫な気がする。少し指で引っ張ったくらいでは破けない。殻といい膜といい、全体的に防御力が高い感がある。
中身の違いについては正直何とも言えない。青い卵の方が黄身の色が濃かったが、これはエサが違うだけな可能性を否定できない。日本鶏卵協会でも「卵黄の黄色から橙色の色はカロチノイド色素によるもの」としている通りで、黄身の色は餌次第。米を食わせることで、黄身が白い卵を産ませることもできる。
・気になる
ではあらためて、なぜ青いのだろうか? 「アローカナの性質由来」で終わってもいいが……いや駄目だ。それでは根本的な答えになっていない。なぜアローカナの卵は青いのかが気になる。
ということで調べてみると、やはり疑問に思う人は世界中にいたようで、それなりに研究もなされてきたようだ。90年代にはダチョウとニワトリとの混血であるとする説や、単なる突然変異であるとする説があったようだ。
・レトロウイルス説
そして2000年代に入ると、青い卵を産むニワトリたち(アローカナの他にもいるもよう)は内在性レトロウイルスによるものであるとする研究結果が、イギリスのノッティンガム大学や中国農業大学の研究者たちから出されている。
特に中国農業大学のチームは、ニワトリが属する全てのキジ科ヤケイ属の遺伝情報を解析し、アローカナ種がレトロウイルスに感染したのは家禽化したあとの出来事であることを支持する発見もしているもよう。筆者個人は、現状ではこのレトロウイルス説が一番有力であるように感じた。
ちなみにレトロウイルスとは、簡単に言うと感染した宿主の細胞内で自らのRNAをもとに逆転写と呼ばれるプロセスを経てDNAを合成し、それを宿主のDNAにブチ込んでくるタイプのウイルス。身近なところでは、エイズの原因となるヒト免疫不全ウイルスもこの仲間。
そして内在性レトロウイルスとは、生物の生殖細胞の遺伝情報に含まれる、レトロウイルス由来と考えられるDNA配列のこと。これはレトロウイルスに感染した祖先が子孫を残した際に、レトロウイルスがブチ込んだDNA配列が代々受け継がれ、その生物に定着したものだと考えられている。
「ウイルス」とついているとなんだかヤバそうに思えるかもしれないが、我々人間のゲノムも、およそ8%は内在性レトロウイルスであるとされている。筆者も本記事を読んでいる見知らぬあなたも、内在性レトロウイルスフレンズ。
・中身の違い
青いがゆえに研究されまくってきたアローカナの卵。もちろん成分についても研究は行われていた。結論を述べると、違いは色だけなようで、アローカナの卵が他の卵よりも栄養価が高いとは特に言えないと思う。また、ときおり見かけたスペシャルなパワーがあるとか、幸運を呼ぶという主張についても、根拠は見つけられなかった。
栄養価については、1977年にアローカナの青い卵は普通の卵よりプロテイン含有量が高く、コレステロール値は低いとする研究結果が出ていた。アローカナの卵の有利性をアピールする企業やメディアによって、よく彼らの主張の根拠とされている定番的なものだ。
しかし2019年に出た、アローカナの青い卵とレグホーンの卵、そして種族不明の市販の卵を比較する研究結果では、プロテイン含有量に有意の差は見られず、コレステロール値はアローカナがわずかに高いという結果が。
相反する2つの結果が出ている以上、消費者的には青い卵に特別な期待を抱くのは早計な気がする。普段多くの人が、白い卵と茶色い卵を特別に区別しないように、今のところは青い卵もまた青いだけ……と考えるのがいいのではなかろうか。なお、アローカナとレグホーンの交雑種である「あすなろ鶏卵」については、利害の無さそうな第三者による調査結果が見つからなかった。
ということで、青い卵がなぜ青いのかについて調べていたら、思いのほか複雑で最先端な生物学的分野に踏み入ることになってしまった。え、肝心の味はどうなのかって? それはまた別の記事で。
参照元:いとしのきみ、家畜改良センター(PDF)、日本鶏卵協会、NCBI、PLOS GENETICS、Europe PMC、SemanticScholar、理化学研究所
Report:江川資具
Photo:RocketNews24.
江川資具





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