待ちに待った攻殻機動隊シリーズの新作アニメ『攻殻機動隊 SAC_2045』が、2020年4月23日の16時からNetflixにて配信開始された。さっそく公開済みのシーズン1を全話見終わったので、感想をお伝えしようと思う。

公式HPやSNSにて出ていること以外は、ネタバレしないよう配慮したつもりだ。そして唯一の重大なネタバレについては(それこそがシーズン1の中で最も衝撃を受けたことなのだが)記事の一番最後まで書かないので、安心してほしい。

・攻殻

まず見終わった時点での、もろもろ含めての感想は……面白かった。早くシーズン2を見せてくれという感じ。12話を見終わった時には「え、ここで待たされるのかよ」と思わずつぶやいたレベルでの生殺し状態。

流石はほぼ従来通りの制作陣なだけあって、雰囲気、台詞回し、ストーリーなど、どこまでも攻殻SACシリーズだと思う。映像やストーリー、キャラ、音楽などの細かい部分についても順に書いていこう。


・映像は……

まずは予告編の時点でもファンをザワつかせていた3Dのクオリティからだ。少なくともシーズン1については、最後まで予告編通りの3Dだった。そう、公開前では賛否両論やや否多めだったように思う3Dである。

メカや乗り物、武器、建物の描写などについては問題無いと思う。しかし、人物の描写についてはぶっちゃけ2Dの方がよかったなぁというのは否めない。少佐や新キャラの江崎プリン、娼婦アンドロイドなどの若い女性はまだいい。今作の少佐はチャーミングかつエレガント……かもしれない。



しかし、この3Dのクオリティと、おっさん勢の相性はイマイチだと思う。そして攻殻の登場人物は、ほぼおっさん。3Dのクオリティ的に、おっさんたちの髪や髭がプラスチックの塊のように見える。

顔のしわの表現もなんだか違和感があり、そこは従来のセル画やデジタル作画のアニメに劣る。途中で人物の頭が吹き飛ぶシーンがあるのだが、首の断面の描写が安っぽくて、一瞬現実に戻されたりもした。

とはいえ、それなりに慣れるものだ。要は、今になってPS3のゲームをプレイするとか、一昔前のアニメを見るようなものと思えばいい。映像が最先端でなくとも、内容がよければ構わない。個人的にはそう思う。

ガンダムやマクロスだって、昔のタイトルは絵柄としては古すぎて、時には酷い作画崩壊をしているシーンもある。しかし、トータルでの素晴らしさは変わらないし、今でも新しい若いファンを獲得し得る。ビジュアル面での評価がアニメ作品の全てではないのだから。


・6話から

お次はストーリーについて。数話かけて、前作から今まで少佐たちが何をやっていたのかについてや、時代背景の説明をしつつ、ジワジワと本題に向かっていく。12話までで扱われていたテーマは、ネット炎上や移民問題など。SACらしいタイムリーなチョイスで興味深い。

持続可能な戦争(サスティナブル・ウォー)が世界の経済を支える中で、世界中が同時にデフォルトになってお金の価値がダダ下がりしているなど、凄まじい状態だ。そしてバトーは「サスティナぶる」という言葉をよく使う。流行語なのかな。サスティナぶってるパーリーピーポー。詳しくは本編か公式HPを見て頂きたい。

6話くらいで導入が終わり、7話で小休止を挟んで、物語が本格始動するのは8話からだ。ちなみに7話は、個人的に物凄くSACらしさを感じた。見た後で攻殻ファンに納得していただけるであろう感じに例えると、SAC17話「未完成ラブロマンスの真相 ANGELS’ SHARE」的な

覚えていない方のためにあらすじも書いておこう。訪英中の荒巻課長と少佐が銀行強盗に巻き込まれ、強盗に人質にされてしまう課長。しかし能力を存分に発揮して、強盗に指示を出す立場に。最終的には地元警察から銀行強盗と自分たちの命を守るという、課長メインの回である。

SAC_2045 の7話は、あれのバトー版のように感じた。視聴者の好感度も高くなる回じゃないかなと思う。1本3時間前後の長編ではなく、1話ごとに区切られる構成だからこそ挟める小話だ。

進行速度としては、公開済みのシーズン1だけでは事件の真相は全くわからない。その辺りは過去のシリーズと同じような感じ。「笑い男」も「個別の11人」も本格的な話は後半になってからだった。シーズン2でどうなるのか、とても楽しみだ。


・プリン

新キャラについても軽く触れておこう。味方としては2人。スタンダードと江崎プリン(彼女の名前はすでに上で出したが)である。どちらも良い感じのキャラで、すぐに受け入れられると思う。

スタンダードについては別にいいかなって。それよりも江崎プリンだ。名前を初めて見たときは、プリンってなんだよイタすぎて改名待ったなしだろ……江崎家のプリンってプッチンプリンじゃねぇか! 世界観どうなってんだ!! 

と思ったが、プリンは有能で、生身のタチコマ的な枠だった。タチコマからも呼び捨てや「こいつ」「お前」呼ばわりで、プリンとタチコマの絡みは面白い。実質新種のタチコマ。公式のインスタでも、タチコマの次に紹介されているしな。



ちなみに名前の英語表記は Pudding ではなく Purin なもよう。そして、江崎グリコの名前はクレジットに入っていなかった。プッチンプリンとは無関係なのだろうか? 江崎プリンの名前の由来がとても気になる。

最後は、シマムラタカシについて。重要人物だが、公式のTwitterや公式HPでも出ている。存在そのものはネタバレにならないだろう。彼のキャラデザや、他にも色々な点が、笑い男事件主犯のアオイを連想させる。



アオイは青臭くも、義憤に駆られて誘拐事件を起こすなど、大人しそうな見た目に反して中々に熱い行動派だった。しでかした事はともかく、本質は正義サイドのキャラで、最終的には技能を評価されて課長から9課にスカウトされた。

シマムラタカシは、色々と視聴者によってアオイと比較されそうなキャラだ。彼がどんな中身なのかとても気になるところ。江崎プリンの名前の由来と同じくらい気になる。12話で彼の過去が明らかになるが、トグサくんが彼に入れ込みそうで先が楽しみだ。


・ガラッと変わった音楽

SAC_2045において、過去のシリーズから最も変わったのは、ビジュアルを除けば音楽だろう。これまで担当していた菅野よう子さんではなくなっている

SACシリーズの音楽には素晴らしいものが多い。インスト曲にも「何話のあのシーンのBGM」的な感じで記憶に残るものが多く、ボーカル曲についても、イラリア・グラツィアーノさんやOrigaさんなどを起用した名曲ばかり。どうでもいいことだが、個人的には「i do」がめっちゃ好きだ。

演出的にBGMのボリュームを上げて前面に出したり、その回の締めを映像よりも音楽に任せているような場面もあったと思う。前情報で菅野よう子さんじゃなくなったことが分かった時点で、それを惜しむファンは多かった。

公開後に音楽回りが良くて注目されるアニメはあれど、公開前からここまで音楽面が注目されたアニメは中々ないだろう。SAC_2045で音楽を担当するのは戸田信子さんと陣内一真さん。

シーズン1だけでは、そもそも過去のTVシリーズよりもBGMを控えた演出が多い印象で、判断を出すのは早いと思う。とりあえず1話の4分半や、2話の16分、7話のラストなどで共通のギターリフは格好いい。音楽グループ Mili によるED曲は、映像的に今作の少佐のイメージなのだろうか? 個人的には好きである。

戸田信子さんと陣内一真さんは、メタルギアシリーズなどで音楽を担当していたタッグ。それゆえに、個人的には間違いないと思っている。きっと本作が全て終わった時には、サントラCD購入待ったなしな感じになると期待したい。


・最も衝撃を受けたこと

さて、ここまでかなり長かったが、ようやく本題の最も衝撃を受けたことについて述べようと思う。冒頭で触れた通り、完全なるネタバレだ。それも、相当衝撃的なネタバレである。まだ見ていないという人は注意してほしい。

なんと『攻殻機動隊 SAC_2045』では


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トグサくんが離婚してる


家族想いで奥さんとも良い感じで、「攻殻機動隊 S.A.C. SSS」で娘の為に命を捨てる覚悟を見せた家族想いのトグサくんが


_人人人人_
> 離婚 <
 ̄Y^Y^Y^Y ̄


9課メンバー唯一の妻帯者であるトグサ家の家庭事情は、ファンたちにとって重大な関心事であったと思う。2030年が舞台のS.A.C.20話のラストにて、息子は乳児っぽかった。SSSにて娘は6歳だったので、SAC_2045では17歳なはず。

SAC_2045の3話で成長した子供2人が写った家族写真を見ることができ、娘の方は女子高生っぽい感じ。息子は中学生だろうか? 何にせよ、多感な年ごろの離婚で子供との関係が気になる。でもトグサくん本人は活き活きしており、ワイルドみが増して、腕も上がっているもよう。離婚後も円満なのかな。

参照元:攻殻機動隊 SAC_2045YouTube、Instagram @gitssac2045_official、Twitter @gitssac2045
Report:江川資具
Ⓒ士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

▼ED曲