2020年4月20日から、ドミノ・ピザが狂ったとしか思えないようなピザの販売を開始した。その名も「いまさらタピオカピザ」である。名前の通りタピオカが乗った一品。
タピオカブームはかつてほどの熱狂を失いつつあるように思うが、商品名に「いまさら」と入っている辺り、ドミノもそこは自覚している……いや、そもそもそういう問題じゃない。時期など関係なく、ピザでタピオカブームに乗っかるのが間違ってるだろ。
しかし、実際にこうして販売に踏み切ったからには美味いのかもしれない。かつて「タピオカ醤油漬けおにぎり」という、狂気を感じるイオンのおにぎりをレビューしたが、あれはそれなりにイケた。もしかしたら今回もイケるかもしれない。ということで食べてみたぞ!
・注文
ちなみにタピオカピザは数量限定だそうで、無くなり次第終了とのこと。サイズは3種展開で……
生地の種類も豊富。選択肢は多いが、タピオカとの相性については不明だ。ノーマルで行こうかとも思ったが、チーズとタピオカの相性について強い関心があったため、今回はチェダーチーズバーストを選んでみた。
デリバリーの受け取り方については、新型コロナウィルス対策で導入された「あんしん受取サービス」を利用。これを選ぶと、ドアの前にピザを置いて行ってくれる。Amazonの「置き配」みたいなものだ。
実際にドアの前に放置されたピザをみてみたところ、注文したのはMサイズのピザ1枚のはずなのに、ピザの箱が2つ。何かと思って開けてみると、下の大きい箱は空箱だった。ピザの箱を地面に置く際の下敷き的な感じで利用しているのだろう。
・タピオカピザ
ということで、いよいよタピオカピザとのご対面である。ぱっと見た感じは、黒いタピオカがオリーブに見える。ま、タピオカなんだけどな。ちなみに、ここで先に結末を述べておこう。この記事は、美味いとも不味いとも判断は付けられないで終わるぞ!
先が長いからな。では順を追った紹介に戻ろう。ピザにはメープルソースが付属している。
一切れ手に取ってよく観察してみると、タピオカがチーズに覆われているのがわかる。マジにタピオカを乗せてからオーブンで加熱している模様。全く正気じゃない。いや……原料となるキャッサバは、主に食されている熱帯では蒸したり焼いたりしていると聞く。
もしかしたら粉にして練って茹でた物を甘いドリンクに入れて吸うというスタイルの方が、地球全体におけるキャッサバの消費方法としては稀有な可能性。ドミノのこのやり方は、一見すると狂気の産物だが、地球規模でみればメジャーなのかもしれない。いや、タピオカに加工された上でのこの調理は、やはりどうかしているな。まあ食べてみよう。
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・極まる混迷
これは、どう表現すればいいのだろう。不味いわけではない。いっそのこと激しく不味かったりした方がレビューとしては楽なのだが、マジに不味くは無い。
では美味いのかと問われると、美味いとも言い難い。いやそもそも、これはなんだ? チーズは美味いし、生地も美味い。チェダーバーストなる仕様も中々良い。
しかし、歯を通じて脳に響くクニクニとした感触。そしてなんとなく粘つく甘み。明らかにタピオカ由来のものだが、このタピオカによる食感と味がチーズと交わって生じる謎のハーモニーをどう評価すればいいのか分からない。
「美味い」と「不味い」の境界線上で、絶妙にバランスをとってゆらゆら揺れている感じがする。ではその中間の「普通」なのかと言われると、到底「普通」とは評価しがたい。美味くも不味くも無いよくわからない感じ。
ここは一つ、付属のメープルシロップをかけて食べてみよう。
今人類は、ここに新たな一歩を踏み出した。タピオカピザというだけでも前代未聞なのに、付属のメープルシロップで前代未聞が追加される仕様。これが爆誕した時の、ドミノの商品開発担当者たちのやり取りを見てみたいものだ。
食べてみると……
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・見えない出口
申し訳ない。どうやらさらなる深みにはまってしまったようだ。素の状態で美味いか不味いかを判断しかねていたが、メープルシロップ有りとメープルシロップ無しでどちらが良いのかの判断も、やはり困難な感じなのだ。
メープルシロップによって、甘くはなっていた。チーズとメープルシロップの相性は、意外なことにそう悪くは無い。しかし、タピオカとチーズとメープルシロップの組み合わせというのは、良いとも悪いとも言いかねる。そして「普通」な味では断じてない。これは、マジでなんなのだ?
どうにか答えにたどり着くため、メープルシロップ有りと無しで、交互に食べていく。クソッ、食べても食べても全く答えが出ない。そうこうしていると、いつの間にか最後の1切れに。
なんということだ。もう残り1切れしかない……あっという間になくなってしまった。これはもう1枚注文しておけば良かったかもしれない。……ん? まてよ、今なんて思ったんだ? 「もう1枚」だと? こんな意味不明なものをもう1枚食べようなどと思ったのか?
まさか……自分自身でも認識できない深層心理的な領域で、俺はタピオカピザを複数枚食べられると……そう感じていたというのか? もしかして、タピオカピザは……イケる? 理解はできないが、本能的な所で体はタピオカピザを受け入れているというのだろうか?
いや、やはり判断はつきかねる。ああそうだ、それよりも最後の1切れだ。さて、メープルシロップは……せっかくなので、ここはたっぷりかけて食べよう。美味いか不味いかはよくわからないが、なんというか、メープルシロップをかけて食べた方が良いような気がする。
・全てはあなた次第
というわけで、残念ながら筆者の理性では、美味いか不味いかの判断がつけられなかった。しかし、1枚あっさり食べきっており、体は2枚目を無意識的に受け入れる用意があったのは事実。そして、最後の1切れについては本能的にメープルシロップをかけて食べていた。
ドミノのタピオカピザは、少なくとも筆者の理解力で扱えるシロモノではなかったといえよう。理性を超えた存在であった。しかし、少なくとも拒絶反応は出なかったので、恐らくは「アリ」と言っていいのかもしれない。
これまで筆者はそこそこな数の、意味不明なトチ狂った料理や、また日本人的には珍しい色々な国の珍しい料理を食べてきた。これまでで一番不味かったのは揚げたフナムシか、アメリカのチャイナタウンで食べた、何かの小型動物の発酵した頭部が入った肉まんだ。
一方で美味かったものは数多い。自分の好みを無視して、客観的に美味いか不味いかを判断するのはそれなりにできると思っている。しかし、ドミノのタピオカピザは、最も混迷を極める食べ物の内の一つ……だと思う。
例えば一流レストランのハンバーグのように、例え主観的には滅茶苦茶嫌いな人でも、客観的に判断するなら「美味い」と評価するのが正解……というようなものがある。その逆もまたしかり。「こういう味は、好みとは関係なく美味い or 不味いとされる」的な、味についての普遍的な判断基準である。
そこに照らし合わせても、ドミノのタピオカピザは、美味いとも不味いとも言い難い。その両サイドの分水嶺の真上に位置している気がする。無難と言えば無難。不味くは無いが、美味くもない。好みに合えば美味いのだろうし、合わなければ不味いだろう。ここまで「食べる人次第」なメニューは逆に珍しい気すらする。
参照元:ドミノピザ
Report:江川資具
Photo:RocketNews24.
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