もはや日本ではない。そう例えられるほどに外国人コミュニティーが形成されている場所というのは実はあちこちにある。『上野アメ横センタービル地下食品街』もその1つだ。
アジア圏の外国語が飛び交い、日本人にはあまり馴染みのない食材だらけのこの市場。そんな食品街を歩いていると、両手で抱えないと持てないような豚の頭が税込1000円で売られていた。そこで、角煮にしてみることにしたぞ!
※人によってはショッキングに感じる内容も含むと思われるため閲覧注意でお願いします。
・豚の頭半分
「半切豚頭¥1000」と書かれて販売されていたこの具材。見たところ、文字通り縦に半分に切られた豚の頭である。購入し、家の体重計でおおざっぱな重さを測ってみると重量は 2.1kg だった。つまり100グラム約47円である。めちゃくちゃ安くない?
・ガッツリ下茹で
とは言え、どれだけ食べられる部分があるのかは作ってみないと分からないところだ。というわけで、豚の頭が入る30cmの鍋を用意して水と酒で下茹で開始!
まず、極弱火で2時間下茹でするのが私(中澤)の流儀だが、鍋のサイズを考えて中~弱火くらいにした。なお、私の角煮レシピの詳細が知りたい場合は、分量的に今回のものは普通ではないため、スペアリブを角煮にした以前の記事をご確認いただけると幸いである。角煮だけに。
さて置き、さすがにアクが多い。まるで豚の顔を隠すように次から次へと湧いてくるじゃないか。さらに、コポコポと沸騰し始める鍋……
呪術みが凄い。
20分くらい呪文を唱えながらアクを取り続けた結果、やっと豚の顔がハッキリ見えるようになった。後5分長引いていたらヤバかったかもしれない。
・水洗い
下茹でが完了すると1度豚を鍋から出して水洗いする。普通の角煮だと優しく持たないと肉が裂けたりすることもある工程だ。だがしかし、肉が裂ける気配はない。
っていうか、しっかりした感触がトング越しにビンビン伝わってくるんだけど、これはツラの皮が相当厚いのでは? はたして、まともに食べられるのだろうか。
不安だが、ここでやめるのはもちろん豚に失礼である。というわけで、豚が風呂上りで涼んでいる間に煮汁を利用して角煮のつゆを作った。投入した調味料は、醤油、みりん、砂糖、練りしょうが。参考までに使用した醤油量を言うと500ミリリットルである。レシピ風に言うなら大さじ33杯だ。
・友よ
あとは、豚を煮汁に戻して中火で10分煮た後、ひっくり返してもう10分。ゴールはもうすぐ……これまでずっと一緒に頑張ってきた豚を美味しく仕上げてあげたい。心なしか豚も笑っているような気がする。イッケェェェエエエ!!
そして、ひと晩寝かせたものがこちらになります。
美しい……感動すら覚えるほどに豚が形を保っていた。ああ、なんて安らかな姿だろう。まるで眠っているようではないか。友よ。
・鼻と頬っぺた
ではさっそく、食べていこう。まずは鼻にナイフを入れると……
軟骨までスッと切れる。食べてみたところ、麩(ふ)のように柔らかい食感と厚切りハムのような肉の風味。このハーモニーはなかなかの珍味である。
だがしかし、相当脂っぽい。鼻部分は皮の下に脂肪のみという感じだ。そこで次は、頬っぺた部分を食べてみよう。見たところ、ここには皮下脂肪の下に赤身肉があるっぽいのだ。
ナイフを入れるとホロッと骨から外れる肉。角煮は成功しているもよう。では、味の方はどうだろうか?
口に入れると、ホロホロとした食感。繊維質が解ける感じは肩ロースに近いかもしれない。やはり少し脂身が多いが、私も知ってる身近な豚の旨みがありなんか安心する。友よ!
・閲覧注意部位へ
ところで、前述した通りこれは半切豚頭。豚の頭を縦に真っ二つに切ったものである。裏返すと頭の断面になっているわけだが、よく見ると中身がそのまま入っているじゃないか。つまり、何が言いたいかと言うと……と、その前にこの先は閲覧注意なので1回休憩入れようか。
覚悟できた? じゃあ言っちゃうからね!
何が言いたいかと言うと……
普通に脳みそが詰まっている。
映画『インディー・ジョーンズ 魔宮の伝説』では猿の脳みそを食べるシーンがあるが、あれってトラウマシーンの1つに数えられているらしい。というわけで、この記事を閲覧注意とさせていただいた次第だ。
・豚の脳みその味
それでは気を取り直して、次はこの脳みそを食べてみよう。いかに、これまで昆虫とか食べてきた私でも脊椎動物の脳みそは初めてだ。一体どんな味がするのか? パクリ。
滑らかな食感があんきもみたいだ。しかし、味的にはどちらかと言うとレバー寄りである。ウニとかカニみそみたいな味を想定していたが、特に苦みはなく味噌的な甘みもない。食感が滑らかなレバー。あと、豚って意外と脳みそデカイんだな。
・豚の目
さて、そろそろお腹がいっぱいになってきたので最後に目を食べて本記事は終わりにしようかと思う。安らかに閉じるまぶたをナイフで切り開くと、ちゃんと目もそのままついていた。さすがほぼ外国のアメ横地下食品街である。
できるだけ丁寧に目の周りをくりぬいたところ……
豚の顔本体は呪いのアイテムみたいになってしまったが……
恐る恐る目を食べてみると……
ウマー♪
魚の目みたいな殻っぽい感じがなく味は完全に肉である。鶏のモモ肉のような張りのある柔らかさとジューシーさの中から、コラーゲン的なアレがあふれ出してくるのだ。クセもなく顔の部位では1番万人受けする味なのではないだろうか。友よ……。
・豚の頭を食べて感じたこと
というわけで、豚の顔を角煮にすると、目か頬っぺたの内側が食べやすかった。脳みそは人によるかな。それにしても、一食分を食べ終えたというのに……
全然減ってねェェェエエエ!!!!
3日もつくらいは食べられる量があるので1000円はかなり安い買い物だったと言えるだろう。問題は調理したり食べたりする時にめちゃくちゃ生々しいことだが……
同時にその生々しさには生き物を食べているということを強烈に実感させられる。ひと口ごとに豚は語りかけるのだ。命を食べているのだと。肉を食べるとはこういうことだと……!
そんな豚に敬意をこめてこの言葉を言おう。
ごちそうさまでした友よ──。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.