
四季島、ななつ星、瑞風……「クルーズトレイン」と呼ばれる豪華寝台列車が今アツい。美しい日本列島を車窓から眺めながら、食堂車でフルコースディナーを食べ、個室のベッドで眠るなんて夢のような体験だろう。しかし、予約の取りにくさもさることながら、最低金額でも数十万円、部屋によっては100万円以上という旅行代金は高嶺の花としか言いようがない。
そこまで豪華でなくても、日帰りで近郊のグルメや絶景を楽しめる、ちょっと特別な列車が各地を走っているのをご存知だろうか。JR東日本の「のってたのしい列車」というシリーズで、足湯が楽しめたり、日本酒の利き酒ができたり、地域の特性に合わせたユニークな企画が展開されているらしい。中でも車内でコーヒーとスイーツを楽しめる、「走るカフェ」をコンセプトとしたプチ観光列車が福島にあるという。
名前を『フルーティアふくしま』といい、福島県産フルーツをふんだんに使用したオリジナルスイーツが提供されるのだとか。福島県といえば桃を筆頭に、さくらんぼ、梨、ぶどう、りんごと全国有数のフルーツ王国。
都会に行けばおしゃれな店はいくらでもあると思うが、列車がまるごとカフェなんて、そうそう体験できるものではない。しかもこのためにデザインされた特別列車で、かつ日帰りでお手頃価格というのだから、もう気になり過ぎる! 乗るしかないだろう。
・期間限定の仙台〜福島区間(大人1人5000円)
『フルーティアふくしま』の名のとおり、普段は磐越西線(福島県)を走る列車だが、今回は冬季に期間限定で設定されている仙台〜福島区間に乗車してみた。東北地方の中心ともいえる仙台発着は、各地からも乗りやすいのではないだろうか。
ホームに入線してきた列車は、赤と黒、それに上品なゴールドのカラーリング。ちょっとレトロな大正ロマンといった雰囲気で、可愛いじゃないか! 「臨時」という臨時列車の表記も非日常感があって良い! フルーティアのロゴの入った特別デザインだ。
列車は2両編成で、1人掛けシート、2人掛けシート、4人掛けシートがある。席指定はできないため、相席になることもあるし、進行方向と逆向きになることもある。ソファシートはゆったりした座り心地。満席になっても40名に満たない、本当に小さな編成でトコトコと走る。
・スウィーツサービス
14時42分、仙台駅発車。各席には食器がセットされている。旅行代金は乗車券に加え、あらかじめスウィーツやドリンクが含まれた料金になっているのだ。同じものを食べるのでも、自分で注文して買うのではなくサービスとして「提供される」のが、おもてなし感があって最高だと筆者は思う。若い頃は何でも自分で選ぶのがいいと思っていたが、最近は「おまかせ」とか「パッケージ」とかが大好きだ。
ほどなくアテンダントさんからスウィーツが配られた。内容は月替りで、今月は「福島県産とちおとめチーズクリーム」「福島県産とちおとめチョコクリーム」の2種。
あ、違いますよ。2種から選ぶんじゃありません。2種ともいただけるんです。
ケーキは福島県郡山市に本店がある『fruits peaks』の提供で、この列車のために開発したオリジナル商品とのこと。普段、ケーキの2個食いなんてそうそうしないと思うけど、周りを見ても残している人もなく、筆者もペロリといけた。まったくクドくなく、胃もたれもせず、最後まで美味しかった。たぶん2品を一度に食べることを想定して開発しているんだな。
それにホットコーヒー1杯と福島県産品を使用したフルーツジュース1本がセットということで、今回は『桃の恵み』という桃ジュースだった。この桃ジュースがめちゃくちゃ濃厚でびっくり。青森のりんごジュースといい、愛媛のみかんジュースといい、ご当地フルーツジュースって驚くほど旨いことが多い。特にJAのね。
・カフェカー
この列車の特徴でもある1号車は、まるまるカフェだ。カウンターがあり、アテンダントさんが常駐している。昨今はカートの車内販売が主流で、食堂車や売店のある列車がなくなってしまったから、懐かしく感じる人もいるかもしれない。両側が大きな窓で、すごい開放感!
セルフサービスでおかわり自由のコールドドリンク。水、アイスコーヒー、アイスティーが常備。
お土産コーナーには『フルーティアふくしま』がデザインされたオリジナルグッズや、お酒、特産品が並んでいる。
窓に面したカウンターもあったので、ここでドリンクを飲みながら過ごすのも良いかもしれない。
・車窓風景は……
『世界の車窓から』なんていう長寿番組があるくらいだから、列車といえば車窓風景が楽しみだが……申し訳ない。覚えていない。というのも仙台〜福島間の乗車時間は1時間ちょっと。その間に2種のスウィーツを食べ、コーヒーを飲み、アイスティーのおかわりをし、お土産を見て、写真を撮り……としていると時間があっという間なのだ。
この間も車掌さんが記念撮影に回ってくれたり、切符に記念スタンプを押してくれたり、乗車プレゼントのキーホルダーをくれたりと、おもてなしをしてくれる。最高だ。
・福島駅で下車
15時50分、福島駅着。筆者は福島駅で途中下車したが、終点の郡山駅まで乗ることもできる。どちらにしても1〜2時間の小旅行だ。しかし、片道5000円の料金は、はっきり言って安いと思う。特別に作られたおしゃれな車両にワクワクし、スウィーツやドリンクのおもてなしを受け、記念撮影でキャッキャウフフして、短い距離だが十分に「旅気分」だった。
加えて福島県産フルーツ、福島県内のスウィーツショップが開発、お土産も福島県のもの、と全てが “福島推し” で、強い地元愛が感じられた。ティーポットとフルーツがデザインされたオリジナルグッズもどこかのブランド? と思うほど個性的で可愛らしく、本気度が伝わってくる。東日本大震災で農産物の大きな風評被害を受けた地域だけに心から応援したいし、とても好感を持った。
観光列車は線路の上を走るから、自分で自由にルートを選べるわけではない。普段は行かない土地に思いがけず行けたり、その地域のことを知れたり、地方を元気にする起爆剤としての可能性を感じる。
・めちゃめちゃ楽しかった
今まで知らなかったが、観光列車ってすごく楽しい。他の「のってたのしい列車」にも乗ってみたい! が、車を置いてある仙台駅まで戻るのに折り返しの普通列車に乗ったところ、一気に現実に引き戻されたことも申し添えておきたい。車の回送サービスがあればいいなぁ。
車がなければ駐車料金も気にならないはずなので、福島市や郡山市に宿を取って滞在することを強くお勧めしたい。逆に郡山発で仙台行きの列車もあるので、目的地に応じて使い分けるのも良い。
仙台駅発着は2020年3月末まで。それ以降は郡山駅〜喜多方駅の運行となる。運行日はお盆期間を除く土日祝日。乗車区間やプラン(スウィーツセットか、ドリンクのみか)で料金が変わるため、詳細は公式サイトをチェックして欲しい。
参考リンク:JR東日本「のってたのしい列車」、JR東日本仙台支社『フルーティアふくしま』
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
▼車両後方
▼車両側面
▼お土産コーナー
▼記念撮影用パネル
▼乗車証明書をいただきました
▼期間限定プレゼントの「赤べこキーホルダー」
冨樫さや























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