電車を降りて改札を抜けた後、しばらく歩いているとフッと気づく。

「あれ? 〇〇がない……! 電車に忘れた!?」

右ポケット左ポケット、お尻の右ポケット左ポケット、そして胸元のポケットをFBI顔負けの素早さでセルフボディチェックするが、無い。「……そうか!」と、カバンの中を荒々しく捜索するも、やはり無い。「……もしや」とわずかな希望を持って股間を握るが、絶対に無い。

鉄道大国・日本で暮らす多くの人々がつい犯してしまう「電車にモノを忘れる(落とす)」という、うっかりミス。でも、そんな忘れ物たちの “終着駅” はどこだかご存じだろうか? それは「鉄道忘れ物市」である。

電車に忘れ物をしたとしても、駅員に届け出れば(誰かがネコババをしていない限り)自分の手元に戻ってくる場合もある。私も過去にノートPCや携帯電話などの貴重品を電車内に忘れたことがあるウッカリさんだが、運よく全て戻ってきている。(日本は本当に平和な国だ)

一方で、そもそも物を忘れた(落とした)ことに気づかなかったり、「どうせ誰かに盗られてるか、捨てられてんだろ」とあきらめてしまったことも少なくない。「傘」や「本」など、ちょっとした小物だとそう思う傾向が強いように思う。

落とし主が迎えに来なかった忘れ物たちはその後どうなるかというと、一定期間、鉄道会社や警察で保管された後、専門業者に落札され──

全国各地で定期的に開かれる「鉄道忘れ物市(※名称は様々)」の売り場へと行き着き、激安価格で販売されるのだ! 親(落とし主)とはぐれてしまった子たちの、なんとも悲しい末路……いや、私も我が子を見放した罪人の1人だ……。

そこで私は過去に “引き取り放棄” した忘れ物たちへの罪滅ぼしをするべく、先日とあるショッピングモールで開かれていた「鉄道忘れ物 掘り出し市」へ足を運んでみた。そこで見たのは、大量の忘れ物!

なかでも特に多かったのが予想通り「傘」だ。しかも、ご婦人方が使いそうなオシャレなやつばかり! お気に入りの傘は、絶対に電車の手すりに掛けてはダメである。

ワゴンでドカ売りされている傘の値札をみると、平均500円前後といったところか。安いものだと100円を切るような激安価格だ。通りがかった主婦のみなさんは「アラ~こんな素敵な傘がこんなに安く買えちゃうの!?」とばかりに次々と傘を開いて楽しそうに物色していた。

続いて目についたのは、上着類。「ちょっと暑いから網棚に置いとこ~っと」……と、脱いだその上着のことをスッカリ忘れて電車を降りたのだろうか。いや、きっとそうだな。私もそんな経験がある。

“早い者勝ち!” というPOPで販売されていたのは、大量の電子機器コード類。とりわけイヤフォンが多い!  ざっと見たところ、80円~数百円で売られていた。

私もイヤフォンをいくつも失くしたものである。満員電車に乗ると、誰かのナニかに引っかかって、知らないうちに抜けていることがしばしばだ。(Bluetoothイヤフォンにして以降、こういう事故は激減した)

「BOSE」など有名メーカーのイヤフォンも売られていた。さすがにイイお値段(13000円)だったが。

驚くことに「靴」も何足か商品として並んでいたのだが、この日見つけたのはADIDASのスタンスミス(2000円)! これ、お店で買うと1万円はするはずだ。ウ○コでも踏んだヤツなのかなと思ったが、ソールは綺麗だった。なぜ電車に忘れたのだろう……。

さらには、SONY製のデジカメ(18750円)も。何かしらの理由で、このカメラで写真に収めた数々の思い出と決別したかったのかもしれない。あるいは、単純にポロっと落としたモノか。

他にも様々な忘れ物があったのだが、残りは記事の文末にまとめて写真で紹介するとして、ここからは私が初めての「鉄道忘れ物市」で買った3つの忘れ物をご紹介しよう!


 

・私が買った忘れ物①「“しょーん” のキーホルダー」

1つ目は「ぐでたま」というキャラクターのキーホルダー(80円)で、なんと “しょーん” と刻印されたモノ! そう、読者的には最高にどうでもいいことだが、偶然にも私(ショーン)と同名なのだ! 正直コレを見つけた時は「俺、持ってるな……」と感じざるを得なかった。

ちなみにコレを落とした “しょーん” がこの記事をごらんになっていたら連絡ください。無料でお譲りいたします。


 

・私が買った忘れ物②「ペットボトルのカバー」」

2つ目は地味だが「ペットボトルの保冷カバー(10円)」。ご存じの通り、ペットボトルに装着しておけば中身を保冷しつつ、水滴が他の物につくのを防いでくれるやつだ。こういうの1つは持っていてもイイかなと思いつつも、ついぞ買うタイミングが今までなかったのだ。


 

さて、いよいよラスト。私が買った3つ目の忘れ物は──!?


 

・私が買った忘れ物③「『ギリギリ★ファイティングマン』のCD」

メンズアイドルグループ・B2takes!さんの5thシングル『ギリギリ★ファイティングマン』のCD(100円)である。誠に申し訳ないことに私はこの日までB2takes!さんを存じ上げなかったのだが、持ち主に忘れられてもなお、場末の忘れ物市で値札をつけ、誰かの所持品になろうとしている──

つまり、ギリギリのところでファインティングしているマン達の姿に心を強く打たれたのだ。

で、実際にこの『ギリギリ★ファイティングマン』を聴いてみると──「うむ……まさにギリギリだ」というひと言に尽きる楽曲だ。こちらからは以上です。

・ロマンあふれる「鉄道忘れ物市」

ということで、今回は本当の意味で欲しかったモノは何も得られなかったが、それでも心がときめく多くの忘れ物と出会うことができた。聞けば、全国の忘れ物市をめぐる「忘れ物市マニア」もいるそうだが、その気持ちも少しわかる。

「忘れ物市」には、埋もれたジャンク品の中からキラリと光る宝石を見つけ出す “お宝探し感” があるのだ。さらに、忘れ物を手に取って妄想を膨らませてみると、落とし主との思い出や別れが目に浮かぶようで、なんとも言えないロマンを感じる。ちょっとしたサイコメトリーだ。

なにより、元の持ち主と離れ離れになったモノたちが、新たな主(あるじ)との出会いの場になっているのが素敵やん?

あなたの町にもきっとやってくる……いや、すでに来ているかもしれない「鉄道忘れ物市」、ぜひ1度は足を運んでみてほしい。思わぬ掘り出し物、あるいは “あの時の忘れ物” と再会することができるかもしれない。

Report:ショーン
Photo:RocketNews24.
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▼傘は、「日傘」や「折り畳み傘」も大量に山積みされていた。

▼ブランド物の傘は別枠で展示されていた。ちなみにビニール傘は多くの場合、廃棄されてしまうとのこと。MOTTAINAI。

★富士山の金剛杖。うっかり忘れたのか、下山したからもう不要だったのか……

▼大小さまざまな水筒。遠足かハイキング帰りに力尽きて、うっかり忘れてしまうのだろう

★弦楽器。20000円なり。

★文房具も大量。電車内で勉強をする学生さんが落とすのかな?

★財布とかパスケースも大量にあるが、中身はどうなったのだろうか……

▼子どもを乗せて押すヤツ? こんな大きなモノ忘れてしまうとは

★メガネ・サングラスも超多い! メガネって日常的に使う物だから、失くすとショック。

▼The Simpsonsのポーチ。私が女子なら買っていた

▼もしかしたら、ぬいぐるみとかおもちゃなど小物雑貨が一番多いかも

★ちなみに「新品」とタグがついているものは、かつて展示品やサンプル品だったり、在庫処分品などの “理由(ワケ)あり品” だそうだ。激安!

▼ギリギリのところに追い詰められても勇気が湧いてくる、超ゴキゲンなポップチューンです(マジ)

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