何事にも起源というものがある。先日親子丼を食べていた際、ふとそのルーツが気になった。一体どのようにして、どこで生まれたのか。決してある日突然、天から無数の親子丼が降り注いできたわけではあるまい。
調べてみたところ、発祥の地とされている「鳥料理 玉ひで」というお店が東京・人形町にあることがわかった。そこではどんな親子丼が拝めるのだろう。さっそく興味の赴くまま、「親子丼の親」であるお店を訪れてみることにした。
・原点にして頂点
「玉ひで」のHPによれば、親子丼誕生は明治20年(西暦1887年)頃まで遡るらしい。当時のお客さんに、軍鶏(しゃも)鍋の残りを卵でとじてご飯と一緒に食べる人がいたそうだ。それにヒントを得て、明治24年(1891年)に「玉ひで」5代目当主の妻が考案したという。
お店の創業自体はさらに遡って、宝暦10年(1760年)とのことだ。しびれるような由緒正しさである。
歴史に思いを馳せつつ、13時頃に現地に到着。店先の看板に案内が書いてあった。1階席と2階席でメニューが異なり、1階席は親子丼、2階席は昼膳やコースメニューとなっているようだ。
注目したいのは1階席の親子丼である。「進化(1800円)」、「超越(2400円)」、「極意(3000円)」と、3段階のグレードがある。「超越」の時点で大概すさまじそうなのに、「超越」を超える「極意」を食べたらどうなってしまうのか。俗世に戻れなくなりそうだ。
スーパーサイヤ人のごときグレード制に気を取られながら入店すると、座敷に続く広い廊下で、1階席への案内を待つ人々が並んでいた。並ぶ前に食券の購入を促されたので、清水の舞台から滑空する思いで「極意」を注文した。
決して安くない投資だが、「極意」見たさが全てに勝った。15分ほどで並び終えて広間に通され、4人がけのテーブル席に相席で座る。ほどなくして店員さんがお茶と一緒に「軍鶏のスープです」と言って、透明な汁の入った湯呑を差し出してくれた。
軍鶏のスープ。親子丼の前座なのだろうが、こんなに高貴な先制パンチを食らったことがない。飲んでみると、すっきりとした飲み口ながら香ばしくて美味しい。
親子丼への期待が振り切れて緊張に転じつつあるなか、とうとう丼がやってきた。蓋に閉ざされている。細く息を吐いてから、ありったけの神妙さを手つきに込めて蓋を開ける。
まぶしい。
黄金に輝く親子丼がそこにはあった。比喩的な意味で「まぶしい」という表現を使うことはあるが、今回ばかりはガチのマジでまぶしい。一瞬、本当に天から降ってきたものなのかと思ってしまった。
いざなわれるように箸を持ち、鳥肉を口にすると、さらなる衝撃が弾けた。なんという弾力だろう。しかし、押し返してくるような充実の歯応えは硬さや嫌悪感とは程遠い。こんなに食べていて快い鶏肉がこの世に存在したとは。
全ての親子丼に最高級ブランド鶏の「東京しゃも」が使われていると看板に書いてあったが、この肉質と、噛むほどにしみ出てくる旨味は確かに最高級と言えよう。健やかなる時も病める時もこの鶏肉を噛みしめていたい。
そしてもちろん、鶏肉をふわりと覆う卵の方も舌を巻くほどの高品質ぶりだ。どんな秘術を施したら、ここまでとろけるように柔らかくなるのか。タレも濃すぎず甘すぎず、具材をしっかり引き立てる仕上がりとなっている。
また、ムネ肉やモモ肉に加えて「熟成炙りささみ」が入っていたり、丼に烏骨鶏(うこっけい)の卵が付け添えられたりしているのが「極意」グレードの特徴であり、溶いた卵にそのささみをつけて食べるのがたまらなく美味しい。贅(ぜい)の渦中にいる心地が味わえる。
・親子丼を超えた何か
と、そんな感じで至上の体験を堪能していたものの、正直親子丼を食べている気はしなかった。別物だ。具材をとってもタレをとっても、クラシックな親子丼とは違う、それを超えた何かを味わっているようだった。
高い金額を払えば美味しいものが食べられるのは、ある意味当たり前ではある。とはいえやはり、わざわざそうすることにこそ価値があるのだと改めて学べた気がする。老舗だからこそ伝統を超えていく……そんな「玉ひで」の「極意」のおかげだろう。
・今回紹介した店舗の情報
店名 鳥料理 玉ひで
住所 東京都中央区日本橋人形町1-17-10
営業時間 [昼の部] 親子丼 11:30~13:30 昼膳・コース 11:45~14:30 [夜の部]17:30~22:00
定休日 お店のHPを参照のこと
参照元:鳥料理 玉ひで
Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.
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▼親子丼発祥のお店が作る親子丼
▼輝きすぎている
▼鶏肉の弾力の次元が違う
▼まさしく原点にして頂点の味
西本大紀









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