牛ひき肉、トマト、チーズ、野菜などを白ご飯と和えるタコライス。そのスパイシーな味に暑い地方の風を感じる沖縄県の郷土料理である。
ある日、酒屋に行ったところ、そんなタコライスの缶詰が置いてあった。えっ、タコライスって缶詰にできるの? 肉はともかくご飯とかチーズどうなってんの? 中身が気になって仕方なかったので購入してみた。
・酒屋で発見
その「タコライスの缶詰」が置いてあった店の名前は『鈴木酒販』。東京メトロ日比谷線三ノ輪駅前にある角打ちのできる酒屋である。
レジに持っていくと、缶詰は税込194円。タコライスの相場から考えると大分安い。194円でタコライスを食べられるなんて。
・タコライスを缶詰にすることは可能か
それにしても、この小さな缶にタコライスが詰め込めるものなのだろうか? 確かに細かく刻めばいけるかもしれないが、その場合タコライスと呼べないぐちょぐちょな代物になっている可能性が高い。中身が気になりすぎるため、さっそく開けてみることに。カキョッ!
缶のフタの爪を立てた瞬間、立ち上るメキシコっぽい匂い。おお! 匂いはタコライスだ!! 思い切って全部開けきってみたところ……
ひき肉がミッチミチや!
そう、中身はひき肉だけだった! フォークですくってもひき肉だけ! 皿に出してもひき肉だけ!!
・ホットドックパターン
どうやら、以前の記事でご紹介した「ホットドックの缶詰」と同じパターンのようだ。つまり、「これを使ったらタコライスが簡単に作れるよ」という缶詰である。じゃあタコライスじゃなくて、タコスミートって書けや!
と思ったが、よく見たらフタの逆側にあたるパッケージの部分に小さい字で「タコスミートだよ」的なことが書かれていた。ごめんなさい。私(中澤)が焦りすぎました。
・味について
それはさて置き、中身は非常にタコス的な味が再現されている。スパイシーかつジューシーなひき肉は、店で食べるようなタコライスの味とそん色なく、特に温めたりしていないのに缶詰臭さは一切ない。このまま混ぜるだけで多分イケる。マジで即戦力。缶詰開けたら2分でタコライスだ。
もちろん、そのまま食べてもイケる。こうなってくると、中身がひき肉のみで色んな料理に使えるのは逆に使い勝手が良いかもしれない。
タコライスと名乗っておきながら、ライスを切り捨てるという決断をしているこの缶詰。それは缶詰として生き残るための苦渋の選択だったのかもしれない。互いを必要としながら生き別れたタコスミートとライス。それはさながら大河ドラマの序章のようである。
缶詰はただの保存食ではない。そこにはそれぞれの物語が詰まっている。今回もそんな物語を知ることができた。194円は非常に安いと言えるだろう。
Report:缶詰研究家・中澤星児
Photo:Rocketnews24.