7月27日の「土用の丑の日」が近づいており、何かと うなぎ が話題になる。最近だとチェーンの「松屋」がうなぎメニューに参戦したことも話題になったばかり。味わってみたところ、伝説のうなぎ屋が監修したこともあってか群を抜いた一品だった。

そして伝説のうなぎ屋というのが東高円寺にお店を構える「小満津(こまつ)」だ。チェーン店のリーズナブルな価格で一線を画すうな丼の提供を実現したその手腕……是が非でも味わいたい!

・東高円寺から徒歩数分の歴史あるお店

ということでホームページを調べたところ、なんと同店は完全予約制で電話の時点でメニューを決める必要があった。ドキドキしながら電話をかけた私は日にちを調整してもらい、当日食べるメニューはうな重(税込4644円)でお願いした。そして予約から数日後、いよいよお店へ到着。

東京メトロ東高円寺駅から徒歩3分くらい。青梅街道沿いにあるお店は決して目立たずこじんまりとした外観だが、どこか歴史ある雰囲気が漂っていた。事前にホームページから仕入れた情報によると、以前お店は京橋にあって多くの食通や文化人が魅了されたのだそうだ。

昭和期に一世を風靡(ふうび)した小満津。その後、店主の高齢と後継者がいないこと、上質のうなぎが手に入らなくなったことで1964年に惜しまれつつも閉店した。しかし、再び暖簾(のれん)を掲げたのがお孫さんの現店主。1979年12月に京橋から東高円寺に場所を移してお店を開けた。

・伝説のうなぎ屋のうな重、いただきます!

さて、お店の歴史を簡単に説明したところで実食といこう。予約していた時間よりも早く着いてしまったが、快く席に通してもらった。店内にはテーブル席が4つほど。高級なうな丼を食べるだけでもワクワクドキドキが止まらないのに、4人席に1人だけ座るという特等席のような感覚がさらに緊張を加速させる。

待っていると、うなぎの焼きあがるイイ匂いが漂ってきた。1番いい状態で提供したいとの思いから電話でメニューを聞いているとのことだが、この匂いなら何時間待ってもいいくらいだ。ここからは後ほど店主の前田治雄さん、女将の前田恭子さんにお話を聞くことができたので、そちらを交えてレポートしていこう。

まず味の方だが、当然ながら美味しい。そして美味しいから美味しいとしか言いようがないのだが、何かに例えるなら雲だろうか。口に入れたらフワッとした食感が舌を包んでくれる。もし舌の上に乗せ続けたら、そのまま溶けてしまいそうな感じさえする。というのも……

うなぎが上質なことはもちろん、すべて手作業で繊細に仕上げられているのが舌から伝わってくるのだ。生臭さや余分な脂は一切なく、無駄を削ぎ落とした一品。焼き方はもちろん、蒸し方、さばき方……すべてが頂点に達するように持っていかれているように感じた。

さらに気配りはご飯まで。聞けば提供する時間に合わせて炊いており、電話越しの声で年齢を推測してお米の硬さも調節しているとのことだ。基本は柔らかめで若い年齢なら硬めといったように、目指すは三位一体のうなぎ料理。実は私も電話でチェックされていたことになるし、女将さんに聞いたら “した” とのことだった(笑)

・松屋との制作秘話

あっという間の至福の時間。とても美味しかったこと、松屋のうな丼を食べて来店した旨を伝えると、制作秘話というか監修に至るまで、それに加えて松屋のうな丼がどう提供されているのか話を聞くことができた。なんでも、始めは “断っては頼まれて” の繰り返しだったそうな。

それがいつしか「やるからには業界で1番を」という気持ちで合致。松屋では中国産のうなぎを使用しているそうだが、その中でも素材にこだわっている。それから店主、女将、4代目の息子さんが何度も中国へ視察に行き「これならば!」と納得したことで商品化されたのだという。

当然、現地でもさばき方にこだわり、包丁の入れ方1つ1つが厳しくチェックされるシステムを確立。松屋の担当者もうなぎに詳しく、機械や人材など、てっぺんをとるために力を注いだそうだ。ちなみに同店のタレが松屋のうな丼のベースにもなっているのだとか。

思い返せば松屋のうな丼は「骨」をほとんど感じなかったし、美味しさも想像をはるかに上回ってきた。お互いにプロフェッショナルな仕事をした結果、クオリティーの高いうな丼が実現したのだろう。チェーンだからそこそこで……なんて気持ちはゼロだったようだ。

お店を訪れた私が感じたのは、店主と女将のプロ意識の高さ。当たり前を当たり前のようにやる──これは簡単なように聞こえるが、実を言うと1番難しいことである。継続は力なりという言葉があるように、続けていくことの重要性は時代が移り変わろうとも変わらない。

それができるからこそ時代を越えて愛される。お店の先代店主は天然物しか扱わず、良いうなぎが入らない日は店を開けないような職人肌の人だったらしいが、現店主と女将も最高の状態で料理を提供するという信念が通じるところがあるように感じた。うな重の美味しさといい、伝説のうなぎ屋の系譜に感服せずにはいられなかった。

最後になるが、同店は冒頭でもお伝えしたように完全予約制。こだわった素材しか使わないので、どうしても数が限られてしまうのだ。もし予約する場合、来客中の手が離せない時間を避けて営業時間外に電話するようにしよう。夏バテ防止に近いうちでもよし、9月から天然の仕入れが始まるらしいので秋に至高のうなぎを食べるもよしだ。

・今回ご紹介した飲食店の詳細データ

店名 小満津
住所 東京都杉並区和田3−62−3−101
時間 11:30〜14:00 / 17:00〜20:00(ラストオーダー)
休日 月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、第2火曜日
予約専用番号 080−8734−1091

Report:原田たかし
Photo:RocketNews24.

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▼うなぎを持ち上げると湯気がフワリッ!

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