名古屋の名物といえば? というと、鰻のひつまぶしを挙げる方は多いのではないだろうか。筆者も真っ先に鰻のひつまぶしを思い浮かべた、美味しいし。しかし、名古屋で密かに鰻のひつまぶしの地位を脅かす食べ物が誕生していた。その名も──「海老まぶし」。
名前からひつまぶしの海老Ver. であることがうかがえるが、果たして美味しいのか!? 名古屋の新名物になりうる食べ物なのか、さっそく食べてみた!
・まさに海老づくし
名古屋で1866年から海老菓子の製造・販売などを行なっている老舗、桂新堂。以前当サイトで取り上げた高級海老せんべいも、ここ桂新堂の商品だ。そんな桂新堂が営む海老料理専門店「百福庵」でお昼にのみ、海老まぶし膳が提供されているらしい。
受付で前菜の海老を塩焼きにするかお造りにするかを選択して百福庵のある地下へ降り、席へ案内される──かと思いきや、店員さんが桶を持ってきた。「こちらがこれから前菜になる海老です」と桶を差し出され、中を覗き込むと……
生きた海老!! 生け簀(いけす)があるお店は多いが、これから食べる魚介類をわざわざ桶に入れてまで見せてくれるお店は初めてだ。間近で生きている姿を見たあとだと、ちょっと食べづらいかも……と思っている間もなく運ばれてくる、前菜のお造り!
時折ピクピク動くので、心の中でごめんねと謝りながら口に含むと……はちゃめちゃに美味しい! 普段食べている海老のお刺身と全然ぷりぷり感が違う。甘くて旨味もあって、まろやか。さすが、さっきまで生きていただけある……。最高でした、ありがとう海老さん。
海老さんに思いを馳せながら余韻にひたっていると、メインの海老まぶし膳が運ばれて来た。
一緒にやってきた椀物は甘海老のしんじょう、吸物は桜海老とおかひじき。何から何まで海老づくし。徹底している……。
そして海老まぶし膳はご飯が見えないほどに海老が乗せられている。ここは海老天国か?
一面に敷き詰められた車海老に食欲を掻き立てられながら、まず一膳目はそのままいただく。車海老たちの旨味も最高だが、ご飯に満遍なくまぶされている赤海老のそぼろがイイ味出してる! 口いっぱいに優しい海老の風味が広がる。
続いて二膳目。今度は薬味のネギと柚子コショウを入れ、海老の風味を消さないよう注意しながら、ダシ醤油をほんの少しだけ垂らしていただく。意外なことに、ふんわりとしていた海老の風味が消されるどころか、際立ってきた。味が締まって、これもまた良い。
お次はいよいよ出汁をかけて……と思いきや、なんと卵をかけていただくそう。
少し温められて口当たりの良さが増した卵をかけ、一口。
こんなの美味しいに決まってるじゃないか……! 卵を入れると味がマイルドになりすぎるかと思ったが、海老の旨味は卵をも包み込む。優しい味わいなのに、海老は意外と根強く主張してくる。まろやかな食感と海老の風味を楽しみながらつるっと三膳目を食べきり、ついに出汁をかけていただく。
あ〜、締めにふさわしいお味。落ち着く……。出汁の香りとともに立ち上がる海老の香り。優しいのに決して物足りなさを感じない、豊かな味わい。夢中になって食べていたら、あっという間に食べきってしまった。寂しい。もっと食べたかった……。最後に季節の海老せんべいをいただき、ついに海老づくしランチが終焉を迎えた。
最初から最後まで海老づくしだった、最高。一膳目からもう一周したい……。
・予約は出来ない
海老料理専門店の本気が味わえる「海老まぶし膳」がいただけるのはランチタイムのみ、おまけに1日50食しか提供されない。さらに、予約は一切受け付けていない。筆者は平日の11時半ごろに入店していただくことが出来たが、すでに店内はほぼ満席だった。
海老まぶし膳は鰻のひつまぶしと並ぶ名古屋の名物になりうる美味しさだったが、食べられるかは運次第な幻の名物になりそうだ。
・今回訪問した店舗の情報
店名 桂新堂 金山本店 百福庵
住所 愛知県名古屋市熱田区金山町1-5-4
営業時間 11:00〜15:00(L.O. 14:00)
定休日 日曜日
Report:伊達彩香
Photo:RocketNews24.
▼お箸置きまで海老さん。
▼器のフタ裏にまで海老さん。抜かりなく海老づくし。
▼お店へは裏からも入れる。なんだか風情がある。