
『獣を狩る者は、自らも獣にならなければならない』。どこかで聞いたことがあるような、ないような言葉だ。“獣” のような手強い敵と対峙する時、相手をも凌駕するような “獣” でなければ、まともに渡り合うことができない。そう私(佐藤)は考えている。
私は最近、その言葉を体感する出来事に遭遇した。熾烈な迷惑メールとのやり取りのなかで、私は自分の獣が目覚めるのを感じた……。
・間違いを装うメール
きっかけは他愛もない1通の迷惑メールだった。データが消えたという口実で、メアドを確認する内容を騙ったものだ。
相手「スマホのデータが消えちゃったから、山ちゃんから教えて貰ったんだけど、そっちのアドレス ■■■■■■■■■■■■■(メアド)で合ってる?」
佐藤「合ってるよ~」
相手「ごめんなさい! メールの宛先間違ってたみたいです。知人の連絡先を別の友達に教えて貰ってたんだけど、どうやら電話帳にアドレスを登録する時、間違って入力しちゃったようで…(汗)」
まあ、なんと言いましょうか……、とくに新しさを感じさせない古典的な迷惑メールの手口である。私のアドレスはどうせそこらへんの迷惑メール業者に出回っているので、偶然を装うのはムリがある。「少し遊んでやるか」、そう思いながら半ば放置気味に相手の出方を見た。そうしたところ、相手は強気の攻めを繰り出してきたのである。
・相手のターン
先行は必然的に相手の方。
アドレスを間違えたという前提にしたがって、ゴングが鳴ると同時に「お詫びパンチ」の猛ラッシュ。
メールが届くのを静観している間も、相手は攻撃の手を緩めない。次から次へと謝罪メールを送りつけてくる。
さらに捨て身の覚悟で「ごめんなさい」の集中砲火!
迷惑だ! 実に迷惑!! さすが迷惑メールのプロである。ちょっとだけ感動したものの、返事をするのが面倒くさいので一晩放置した。すると、それまでの攻撃スタイルが一変! 次のように送りつけてきたのである。
相手「タイトル:お前さー 本文:調子乗り過ぎじゃね? てか逆に似たようなメアドでごめんなさいって謝れやクソが」
理不尽だ! 言ってることが理不尽すぎる!! そこを臆することなく、あえて逆切れして見せるとは。さすがプロ。そうやって相手のペースを崩すのか~。なるほど勉強になるなあ~……。
それにしても、さっきまで床に頭をこすりつけるような土下座文章を送っていた相手から、「クソが」と言われるとは思ってもみなかった。私も若干イラっとしたので、煽り返すことにした。
佐藤「お~い、ごめんねごめんね~♪」
茶化したつもりだったが、相手はこれにすこぶる機嫌をよくする。
相手「普通、知らないメアドからのメールは無視するはずなのに… こうしてお返事頂けた事で、間違えてメアドを登録しちゃったって事が分かったので良かったです! そういえば、前にも間違ってメールを送っちゃった経験がありました(笑)」
先ほど「クソが」と言い放った相手に対して、なんだこの「間違っちゃった、テヘ♪」みたいな内容のメールは。イカれてんのか?
だが、もう手遅れだ。ここからは私のターンだ
・佐藤のターン
ここから相手は一方的に質問を繰り返して、流れを作ろうとしてくる。経験上、そうなるのがわかっているので、私は決まった回答しかしないことにした。相手の「お詫びパンチ」に対して、私は「うっせー、バーカ! ガード」で対抗することにした。
佐藤「うっせー、バーカ!」
あまりのガードの固さに、相手は戦術を変えることにしたらしい。次に届いたメールの送信者は「かんな」になっていた。定番の自己紹介タイムで、新しいキャラクターに変身してしまったのだ。
かんな「ついでなので、自己紹介もしておきますね! 東京で芸能活動をやってるんですけど… 1999年2月3日生まれ、AB型の変わり者です(笑) 私の事はかんなって呼んでください」
繰り返すが、こいつはさっき「クソが」と言っていた。それが身をひるがえして『1000年に1人の逸材』を騙るとは、ますます気に食わん! 舐めてンのか、オラッ!! てめえのようなぬるい人間のぬるいマヤカシなど、ワシには通用せんわッ!! だいたいさっき「クソが」言ってたのは絶対男だろ!
私がなおも「うっせー、バーカ! ガード」を強固にかためていると、かんなは突然、意表をついてポエムを詠みだした。
「かんなのポエム」
~純粋っていうのは、ありのまま…~
~自然体って意味だと思う~
~自然は美しいし、安らぎを与えてくれる~
~でも、時には荒れる事だってある~
~それと同じで、正直に自分の気持ちを主張出来る事が~
~純粋の証なんだよ~
ガードを交わして、予期せぬポエムがショートアッパーのように私のアゴ先をかすめる……。まさかここでポエムを詠むとは、こいつ相当賢いか、それとも異次元レベルのイカれたヤローだ。
一瞬ひるんでしまい、次の一手が浮かばなくなった。しばし沈黙していると、相手が攻撃を誘ってくる。
かんな「どうなってる♪」
やるよ! やってやるよッ!! かんな、覚悟しやがれ! 本当の迷惑メールってヤツを見せてやンヨーーーッ!!!!
私は、自分の元に送り付けられていた怪しいサイトのURLを引っ張り出し、それを1つずつかんなに送った!
佐藤「面白いサイト見つけたぞ! ここ見てみろ(笑)」
このメールを皮切りに、怪しいサイトのURLを20本連続で送りつけてやった。
そして最後の餞(はなむけ)に、この言葉を送った。
佐藤「お前にもその気持ち(迷惑メールを受け取る屈辱)を味わわせてやりたい そう考えて、こうやって送っておるのじゃ。感謝せい!」
私のなかの獣が目覚めた瞬間だった。
「獣を狩る者は、自らも獣にならなければならない」、これからは獣として、迷惑メール・迷惑LINEの魑魅魍魎どもと戦っていきたいと思う。私の戦いは、まだ始まったばかりだ……。
Report:迷惑LINE評論家佐藤英典
Screenshot:iOS
佐藤英典

















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