人間は眠い時に寝たくなる生き物である。IQの低い哲学者みたいなことを書いてしまったが、しかしこの世の真理ではある。睡魔に抗うことはなかなかに難しい。とはいえ、外出先などでは自宅の寝床とは環境が異なり、眠りたくとも安眠を確保しづらい場面も多い。

そんな時に便利なのが携帯用枕だが、今回筆者が情報を入手したのは「顔面に巻きつける携帯用枕」である。商品紹介によると、光を99.9%ブロックして眠りを快適にしてくれるようで、さらには壁面などに寄りかかって眠る際にも役立つらしい。いや、まずそもそも「顔面に巻きつける」って何……?

・実際に巻きつけてみた

どうにもヤバそうな商品だったため、逆に買わずにはいられなかった。商品名は「オーストリッチピロー LOOP」。価格はAmazonだと3980円だ(2019年7月4日現在)。さっそく実物を確かめていきたい。

最初に驚かされたのは、商品が筒状のケースに入って届いたことだ。知らなければこの中に枕が入っているとは思えない。一瞬「高級な味付け海苔頼んだっけ?」と思ってしまった。

いよいよもって中身が気になるのでケースを開けようとしたところ、筆者の視線はある一点に強烈に吸い寄せられた。


あっ、ヤバい


モデルの方が商品を使用している写真がケースに載っていたのだが、己の顔面を縛りつけているようなその絵面(えづら)が悪い意味で刺激的だった。見た目の背徳感がすごい。普通の携帯用枕ではこうはならない。

ヤバそうとは思っていたが確信に変わってしまった。この場に親子連れが居合わせていたなら、親が子の目を手で覆っていた可能性は高い。

しかしここで検証を止めるのもはばかられる。使い心地が良ければ、多少の見た目のアレさなど気にならなくなるかもしれない。多少ではないかもしれないが。

ともあれ、気を取り直して中身を取り出す。出てきたのは1本の太いひも状の物体。物体というか、これがその枕だ。実にユニークである。

触ってみると、柔らかな布地とその中にある細かなビーズの感触が気持ち良い。やや期待感が出てきた。

ケースに「巻きつけ方」が書いてあったので、そのように巻きつけてみることにする。

なにぶん顔面に枕を巻きつけるのが初めてなので、不安はぬぐえない。

「これでいいのか? 大丈夫なのか?」と思いつつ巻きつけていく。

大丈夫か? はた目には「視覚を封じてそれ以外の感覚を研ぎ澄ます修行に入ろうとしてる人」に見えてるだろうけど、いいんだよな?

とやかく考えながらも、首の裏側辺りで布地の端についたテープを留めて……


巻きつけ完了


案の定の見た目のアレさは置いておくとして、装着感はキツくもなく緩くもない。長時間の使用も苦にならなそうな、ほどよいフィット具合である。そして商品紹介の通り、この状態だと光は全く入ってこず、真っ暗だ。これなら何も着けずに目を閉じるよりも眠りやすいだろう。

アイマスクに比べて着け心地がふんわりしているのもポイントが高い。アイマスクならぬアイピロー(枕)というわけか。なんか……結構良い。思っていたより全然良い。

装着すると耳の部分は空くので、外からの情報を聞き逃すこともなく安心だ。

逆にそれが気になる人は、枕を着けたままヘッドフォンなどをはめてしまうこともできる。

悪い意味でただ者ではない感じが飛躍的に増すが、できるにはできる。

さて、個人的に気になっていたのは、この枕を着けたままどこかに寄りかかった時の使用感だ。例えば新幹線や飛行機などで窓側の席に座っている際、壁面に寄りかかって気持ち良く眠れるなら、商品の価値がグッと上がるように思う。

というわけで、試しに自室の壁面に寄りかかってみると……


おっ、良い……


枕が上手いことクッションになって全然痛くないし、姿勢も安定している。欲を言えばもう少し枕のサイド部分に厚みが欲しかったが、これでも十分に快適だ。

光をシャットアウトしつつ、寝そべることのできない環境で寄りかかって眠れる。移動中などに役に立つアイテムであることは間違いない。

見てくれは本当にもうなんか退廃的なのだが、それ以外は及第点以上と言えよう。

付け加えておくと、枕を使わない時は首元に下げてハンズフリーで持ち運びが可能とのことなので、それも試してみたところ……

筆者の場合、「根暗だけど頑張って野球観戦に来た人」みたいになってしまった。オシャレな人でなければファッショナブルに見せるのは難しそうだ。

首元に巻きつけるパターンも試してみると、先ほどよりはオシャレさが増したように感じる。夏場は蒸れそうだが、冬は暖かくて心地良さそうだ。

間違っても心地良いからといって、顔に巻きつけたまま出歩かないようにしよう。物理的にも外見的にも危ない。


・巻きつける人は増えるのか

ここまで使用感を検証してきたうえでの結論を言うなら、「見た目が気にならないならアリ」ということに尽きる。使用感は本当に全く問題ない。「進化して用途も増えたアイマスク」という感じだった。ただやはり、個人的にはどうしても見た目が引っかかった。

「私は気にならない」という方にはぜひともお勧めしたい。「むしろ気になる方がおかしい」と言われるくらいに使用者が増えて大ブームに……そんな可能性も秘めている一品だ。

参照元:Amazon「オーストリッチピロー LOOP」
Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.