ウンコは突然やって来る。満員電車の中だろうが図書館だろうが一触即発。空気を読まずに「出たい」と言い始めるのがウンコさんである。
それでも自分のウンコならまだ良い。自分の頑張り次第でどうにでもなるからだ。どうしようもないのは、他人のウンコである。今回は、そんな他人のウンコによってとんでもない状況に追い込まれた話をしたい。
・事件発生
事件が起こったのは、まさに電車内。私(中澤)の隣に座っていた男性が漏らした。いや、確認したわけではない。ただ、隣に座っていた男性から突然濃厚な匂いが漂い出したのである。明らかに実が出てしまっている匂いだった。
ちなみに、その時私は椅子の端から2番目に座っており、匂いの本体は右隣……つまり1番端に座っていた。そのため、誰が漏らしたかは私の位置からは間違いようもなかったのである。
・私が取った行動
さて、あなたは隣の人がウンコを漏らしたらどうするだろうか? 隣の人の顔を確認する? それとも、何ごともなかったかのように席を移動する? しかし、その時私の取った行動はそのどれとも違った。
耐えたのである。ただただ耐えた。なぜそんな行動を? 想像して欲しい。自分が漏らしてしまった時のことを。ただでさえ恥ずかしいのに、顔を見られるとさらに恥ずかしくならないだろうか。「こいつが漏らした」と確認されているようで。席の移動も相手が傷つくんじゃないかと思いやめた。
のっぴきならない状況になったら誰だって漏らすことはあるだろう。汚いわけではない。ただ臭いだけなのだ。しかしながら、この濃厚な匂い。私がこの席を立ったら、次に座る人は彼を傷つける行動をするかもしれない。そう思い隣に座り続けたのである。
・犯人探し
大きな駅で次々と乗って来る人・人・人。私の座っている付近に来ると、明らかに顔をしかめて逃げていく。車両に入った瞬間、大声で「くっさ!」と声をあげる人も。変な緊張感が私の周りに漂う。まだまだ私の降りる駅は遠い。と、その時、驚くべきことが起こった。
左側の隣の隣に座っていたイカツめの兄ちゃんが身を乗り出して私にメンチを切ってきたのである。彼ではなく明らかに私に無言の圧をかけて来ている。あれ? これひょっとして、私が疑われている!?
確かに、匂いはもはや車両中に充満し、元がこの一帯に座っている誰なのかはわからないレベルかもしれない。それこそ隣にでも座っていない限りは。
・悪魔の証明
さて置き、まだ見てる。まだメンチ切ってる。そんな兄ちゃんの「犯人はお前」的視線が開始の合図のように、車内の人も私を見てクスクスひそひそ話し始めた。「この車両アカン匂いしない?」「……だってー」誰も私に直接言う人がいないので弁解のしようがない。便だけに。
違う! 俺は漏らしてない……。漏らしてない……よな?
よくわからなくなってきた。ひょっとしたら、私も隣の人が漏らしたと勘違いしてるだけで、本当は自分が漏らしてるんじゃないだろうか。姿が見えないウンコを誰のものか証明することができない。悪魔の証明である。
・隣の人はどうしてたか
ここに至って私は初めて隣の人物の様子を伺おうと思い立った。もし、犯人ならこれだけの騒ぎになっているのだから、少しくらい動揺しているはずである。逆に、平然としていれば私が犯人なのかもしれない。
気づかれないように慎重を期して、身をかがめ脇の間から覗き見る。だらんと座る足、膝に投げ出すように置かれた腕、脱力した肩……
寝とる!!!!!
犯人を傷つけたくない一心から、逃げ場のない状況に追い込まれたが寝ているなら話は別だ。立ったところで相手は気づかないはず。そこで、駅に着いたタイミングで立ち上がり場所を移動。そのまま自宅の最寄り駅に着いたため降車した。
場所を離れても、しばらくついてきた強烈な匂い。本気で不安だったので、家に帰って速攻でパンツとズボンを確認したところ……
ウンコはついてなかった。
ちなみに、私が乗ったのは藤沢から池袋まで。彼は、どこまで行ったんだろうか? 旅路の先に想いを馳せずにはいられない。彼が目覚めた時、隣が優しい人であることを祈った。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]
▼GO羽鳥が体験した「真夏の出勤ラッシュ時に小田急線の女性専用車両に乗ったら車内のド真ん中に立派なウンコが落ちていた事件」はこちら