30代以上の皆さんは覚えておいでだろうか? suicaが登場した2001年までは、現在のように改札を「ピッ」で通れなかったことを。

あの頃みんな使っていたパスネット。いつの間にか忘れていた旧時代の遺物が、我が家のタンスから出てきた。


しかも未使用だ。あれ? パスネットって今でも使えるんだっけ?



……ダメでした。


2015年3月で使用できなくなり、払い戻しも2018年1月に終了とのこと。ギリギリアウト!


金券としての価値は無いらしい我がパスネット。しかし逆に考えると、もう生産されていないということはもしかするとプレミアがついているかもしれない。よく見ると在来線のイラストがたくさん書かれていてかわいいし、鉄道ファンが欲しがるのではないだろうか?

・お宝の街……それは中野


と、いうことで中野にやってきた。


中野ブロードウェイといえば、コレクターズアイテムが集う複合ビルとして知名度は今や秋葉原と肩を並べるほどだ。その中にカードばかりを取り扱う店があることはなんとなく認識していた。ここに足を踏み入れる日が来るとは、人生何が起こるか分からない。

鑑定してくれたのはブロードウェイ1階にあるカードショップ「トレジャー」の長尾社長。1999年の創業からプリペイドカード一筋で鑑定買取をしてきた目利きの腕は本物だ。


社長! ここはひとつ高額査定よろしくお願いします!


・パスネットの悲劇

「これはねぇ、値段はつかないです」


──エッ!?


「珍しくないんですよね。パスネットの中でも、特にダメな図柄ですね」


──しゃ、社長……! そこをなんとか、買取していただくことはできないのでしょうか? ゼロ円ですか……?


「うーーーーん……そうですね……難しいですね……うーーーーーーん…………まぁ、せっかく来てくれたんですからね。じゃあ、5円で!」

慈悲深い長尾社長のご厚意で、無事に我がパスネットは買い取られていった。


「これが100枚あるから500円で買ってくれって言われたら、それは無理ですよ。この先、値段が上がることもあり得ません。基本的には買取できないものです。まぁ1枚だけということでしたらね……仕方ないです」


──社長……なんか、すいません!


・交通系カードで高値は難しい

金券としての価値がゼロなパスネット。それでもレアモノならプレミアがつく場合もある。この店で現在一番高値がついているパスネットは「芸能事務所が10周年記念に作った希少な非売品」で、販売価格は2000円であった。

地下鉄のカード、ハイウェイカード、バスカード等すでに廃止された交通系カードに関しては、当時から入手困難だったものやタレントもの以外ほとんど価値がないのだそうだ。すでにパスネットファンと化しているわたしは少し悲しい気持ちになるのだった。

・最高値は驚きの……

我々が公衆電話を使う機会は少なくなったが、お店の主力商品は今も昔もやっぱりテレホンカードとのこと。この日も熱心にショーケースを見つめる客が何人も店を出入りしていた。テレカコレクターは多いのだ。

そこで長尾社長にこの店で最高値のテレホンカードは何かとたずねてみた。

すると「ああ。クマニチだね」と、あたかも「ミスチルだね」くらいの当たり前っぽい感じで返されたので思わずクマニチについて考え込んでしまった。


はたしてクマニチとは一体……?


正解は「熊日(くまにち)ニューウーマンカレッジという団体のテレホンカード」でした!


……えっ、これ!?


そしてお値段なんと、80万円!!

素人目にその価値は全く分からないが、テレカコレクターの間では「クマニチ」で当たり前に通じちゃうくらい有名な逸品ということだ。

コレクターの間でポピュラーなレアモノといえば、他にも通称「斉藤由貴の卒業」などがあり、長尾社長いわく「テレカブームが起きるきっかけになったカード」なのだそう。お値段14万円。

なんか……コレクターの世界ってめちゃくちゃ奥が深い!!

・あなたの家にも眠っているかも?

年末は買い取りの依頼が急増するという。

どのカードにおいても高額査定のポイントはひとつ。「珍しいかどうか」それだけということのようだ。クマニチの例で分かるように、必ずしも有名タレントやアニメ等の図柄ばかりに高値がつくわけではない。

年末の大掃除で家から謎のカードが出てきたなら、それはもしかすると、とんでもないお宝かもしれない。



・カードのことなら「トレジャー」へ!

もともとカードコレクターだった長尾社長がこの商売を始めたころは、コレクターも業者も今と比べものにならないほど多かった。それが時代とともにだんだん減っていったという。


「今はまだテレホンカードが中心だけど、だんだん図書カードやクオカードに変わってきていますね。カードの鑑定買取を店舗でやっているのは、都内ではもう、うちだけだけなんじゃないかな? やっているというか……やめていないだけですね」


時代とカードが変わっても、社長はこれからもこの地でカードコレクション界を牽引していくに違いない。

・ミイラ取りが……

トレジャーで商品を眺めているうち、つい欲しくなって我が青春のギターヒーローhideさんのパスネットを購入してしまった。

パスネットを売りに行ってパスネットを買って帰る……カードコレクター人生の始まりだったら大変だ。

・今回ご紹介したお店の詳細データ

店名 カードショップ トレジャー
住所 東京都中野区中野5-52-15ブロードウェイ1F
時間 12:00~19:30
休日 無休(今年の年末年始は12月30日〜1月3日の間お休み)

参照元:東京メトロ
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

日本、〒164-0001 東京都中野区中野5丁目52−15