アノマロカリス at 魚市場。しかも時価……ッ! この衝撃がネット界隈をざわつかせたのはつい先週のこと。あまりにぶっ飛んだイメージ画像の数々に、古生物マニアはもちろん、子供のころに図鑑で見て以来という方まで巻き込んだのが『リアルサイズ古生物図鑑 古生代編』である。2018年7月21日の発売を待たずに重版が決定した。

この度、当サイト(ロケットニュース)では著者の土屋健氏や担当編集者の大倉誠二氏をはじめとする製作陣のご好意でインタビューすることに成功。古生物好きを自称する記者(江川)からの「きっと気になってる人も多いだろう」という質問にいくつか答えていただいた。本記事が初出と思われる古生物の画像やとっておきの新情報もあるぞ!!

・重要種をピックアップした理由

まず図鑑を作るにあたって気になるのは、やはり「その生物をピックアップした理由」ではないだろうか。判明している全ての種を掲載できれば理想だが、それだととんでもない量になってしまう。

しかし古生物好きなら、誰もが胸の中に秘めているであろうそれぞれの「推し生物」には掲載されていてほしいものである。「こいつが載ってるのにあいつが載ってない……だとォ!?」となり、場合によっては戦争もありえる。一体どういう基準で選んでいるのか、土屋氏に聞いてみた。


土屋「まず、いわゆる『図鑑』に載っているような “重要種” をピックアップしています。ただし、ある程度、根拠のある『サイズ情報』があるものです。次に、グループが同じ種。たとえば『アノマロカリス類』は、カンブリア紀の種、オルドビス紀の種、デボン紀の種をピックアップしています。

これによって、グループ内における大きさの変化を追うことができます。サカナもそうです。古生代というおよそ3億年間で、どのようにサカナが大きくなっていったのかが分かるように、できるだけピックアップしました」


なるほど、サイズが判明している種という理由はまさに本書ならではで興味深い。こういう「その図鑑独特」な事情というのは興味が尽きない。


土屋「そのうえで、『最終的には著者の好み』です(笑)。ボツになった種はたくさんあります。『どれを挙げよ』というのを絞りにくいですね。『あれが載っていないぞ!』という方は、ぜひご要望を出版社まで。『古生代編2も欲しいぞ』とつついてください(笑)」


やっぱりボツになった種はたくさんあるのかぁ。個人的には、子供のころに眺めていたからこそ知る機会があった生物というのも多いので、この手の図鑑に載ることは少ないものとかも見てみたい。もっと色々見たいという方は、ぜひ出版元の技術評論者まで要望を出しまくろう。

・色はぶっちゃけセンス

次に気になるのは「色」だ。『リアルサイズ古生物図鑑』で注目すべきは、やはりこのカラフルなイラスト。通常、図鑑であるからにはまったくのデタラメというわけにはいかないので、似た生態を持つ現代の生物を参考にして学術的におかしくない色をあてがうことが多い。

例えば、他の図鑑やフィギュアなどでは茶色っぽく描かれることが多いアノマロカリス。今回は鮮やかな青の中に黄色い模様が入っており、どことなくキハダマグロやシイラっぽさを感じる。本図鑑においてそれぞれの生物の色はどうやって決まったのだろうか?


土屋「古生物の色は、基本的には謎です。したがって、これはイラストレーターのセンスに任せています。たしかに、現生の近縁種を参考にする例は多いのですが、古生代の生物はその近縁種が存在しないものが多いのです。それに、近縁種がいても、それはあくまでも参考程度で、はたしてどれだけ科学的に正しいのかは議論のあるところです。

そのため、『これは学術的に見て、どう考えてもおかしい』という場合以外は、イラストレーターに任せています。なお、例外もいます。例えば『マレッラ(Marrella)』というカンブリア紀の生物は、ツノの部分が構造色だったことが指摘されています。構造色とはCDの裏面のような色です。それを意識して色をつけてもらっています」


ちなみにマレッラとは、主にカナダのバージェス頁岩(けつがん)と呼ばれる約5億年ほど前の地層から発見された、もっとも一般的な動物のうちの一つ。その化石から、おそらくは海底を這い回りながら他の動物の死骸や堆積物などを食べていたと考えられているカワイイやつだ。

土屋氏も解説してくれているが、構造色とはCDの裏面、生物で言うとモルフォ蝶やタマムシのように、見る角度で色が変わるタイプだ。マレッラのイラストを見たら、ツノの部分がそれっぽくなっているのが分かる。これは他の動物についても、イラストを細かいところまでチェックする楽しみが増えてしまった。

しかし、イラストといえば最も気になるのはどうしてこうなった感満載なシチュエーションだろう。実際、表紙のスフェナコドン科? と思われる生物が駐車場にいる時点で突っ込みどころは満載だ。そのあたりはどうなのか、気になる回答は次のページへ!

参考リンク:土屋健公式ブログINSANECLOPEDIA
画像提供:技術評論社
Report:江川資具