こんにちは。バンドマンの中澤です。バンドと言えばやっぱりライブ。ある意味出たとこ勝負なライブの緊張感は他にないものがあり、良いライブが出来た時の高揚感はクセになります。そんな私が、似た高揚感を感じるのが祭り。町全体が活気づく感じはウキウキしますね。
しかし、生まれも育ちも大阪の私。地元の「地車(だんじり)」に比べると、東京の祭りってスピード感に欠けるんだよなあ……。と、そんな風に感じていたんですが、先日気づきました。これ、音楽性が違うんや。本記事では、そんな音楽性の違いをロックの知識で説明してみます。
・地車の迫力
まず、東京と大阪の祭りの違いと言えば、神輿か地車かというのが目に見える一番大きなポイントではないでしょうか。担ぐ神輿に対して、地車は車輪と長い縄がついており60人くらいで引き回す形。大きさも大人が8人くらいは余裕で乗れるサイズです。
そんなサイズの物体がダッシュで角を曲がるわけですから、迫力は神輿の比ではありません。なんなら私が地元にいた時は、たまに死人も出ていましたし、通っていた算盤塾の先生は、地車で事故って片耳がありませんでした。
・地車の祭り囃子
それはさて置き、地車は “車” なので、とても動きが直線的です。曲がる時はドリフト。それが地車。そんな動きに合わせるように、お囃子もかなり直線的です。
テンポはBPM180くらいで8分ノリ。小太鼓と金物がユニゾンでリズムを刻み、大太鼓がアクセントをつけてます。ポイントは掛け声含めて全てのアクセントがリズムの頭に集まっていること。今にも裏拍にスネアが聞こえてきそうでワクワクします。Helloweenの『I Want Out』みたいですね。
このお囃子を聞いて育ったら、そりゃあメタル好きになりますよ。80年代のジャパメタが関西から広がったのも、裏には古から受け継がれる “血” があったからかもしれません(適当)。メタルではありませんが、KANA-BOONとか今流行りの関西ギターロック勢も直線的なビートがウマイです。
・東京の祭り囃子
そんな直線的な勢いのお囃子を聞いて育った私。東京の祭りのお囃子を同列に並べて「なんか掴みどころがないなあ」とずっと思っていたんですが、先日、鳥越祭のお囃子を聞いていてやっと合点がいきました。
小太鼓と金物がゆるいビートを刻む中、大太鼓が裏拍に入りリズムの裏が強調されています。笛の音のメロディーも裏拍から入ってくることが多く、ずっと聞いているとなんとも言えない浮遊感が。しかも、奏でているのは呪術的な雰囲気さえ感じる音色の和楽器。
あ゙あ゙あ゙これエエわ。ずっと聞いてラレる。
頭上高くそびえる黄とか緑のセロファンの花。みんなにこにこしてる。改札口の回転バーにいるのは万華鏡の目の女の子だ。キラキラしたダイヤモンド。ルーシーは空の中空の中空の中……
ハッ!
気づいたらヨダレ垂れてた。なんかBeatlesの『Lucy in the sky with diamonds』の女の子が見えた気がしたんだけど気のせいだろうか?
それはともかく、何の話だっけ? ああそうそう、祭囃子の違いでした。東京の祭り囃子ってどっちかと言うと浸る感じですよね。ロックで言うと、サイケデリックロックのようなトランス感があります。ふわふわしてると言いますか。だから東京からはFishmansみたいなバンドが生まれるのかなあ(言うまでもなく適当)。
ちなみに、地車のお囃子が始まったのは一説によると、豊臣秀吉の時代なので1500年代後半頃、鳥越神社は651年に始まったとされているので、1000年間の差が音楽性の違いにも出ているのかもしれません。
楽器を使用してのクラシック音楽が確立されたのが16世紀頃と言われており、ロックは圧倒的に歴史が浅く1950年代。そんな若輩者の知識で、東西の祭り囃子の違いを考察してみました。これから各所で開催される祭りに参加する際は、お囃子にも耳を傾けてみるとより楽しめるかもしれませんよ。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.