英語にしろフランス語にしろスペイン語にしろ、外国語を習得しようと思ったら「恥をかくこと」は避けて通れない。例を挙げると、相手が何を言っているのか聞き取れない、意味を誤解していた、ワンパターンの返答しかできない……などなど。正確にはそれらを “恥” とは言わないのだろうが、どうしても「恥ずかしい」と感じてしまう日本人は多いはず。
そこで、自分の “恥エピソード” を自ら晒(さら)すことにより、みんなの「恥をかきたくない」という意識を和らげよう……なんて大げさな意図は特にないが、率先して公表していくのがこの企画「外国語の聞き間違い大公開」のコーナーだ。その第1回目は、私が数年前に体験したことを紹介したい。
・英語ペラペラの香港人から聞かれた質問
あれは今から3年以上前。アップルの福袋(ラッキーバッグ)をゲットするために、私が大阪・心斎橋で行列に並んでいたときのこと。私の前に「香港から来た」という爽やかなカップルがおり、男性の方が私にこう質問してきたのだ。
香港男性:「イズ・ゼアー・マッダンナー・アラウンド・ヒア?」
——強引にカタカナにすると上のような感じなのだが、これを聞いた私は完全に混乱した。ハッ!? マッダンナー!? もしかして……マッダンナー = マドンナのめっちゃええ発音? つまり、香港人の彼は「このへんにマドンナいる?」と質問しているの? マドンナって……あのマドンナ? 『Like A Virgin』の?
いや、待て待て。そうだとするなら、むちゃくちゃ不自然だ。ありえない……が、マドンナ以外に一体何があるのか? もしかしたら、マドンナ様はワールドツアーか何かで来日してるのかも。それとも、タレントショップ的な感じで、近くにマドンナショップとかがあるのだろうか?
なんて思いながら、私は「ナウ マッダンナー イズイン ジャパン? ワールドツアー? ハハハ」って感じで返すと……香港人の男性は「?」という表情。あれ? 歌手のマドンナじゃなかったのか? ってことは何だ?
……
……
……
ハッ! わかった!!
もしかしたら……香港人の彼は、クラスのマドンナ的な意味で聞いてるのか? すなわち、「このへんに可愛い子いるかな?」という意味なのか? それもありえない気がするが、まずはどういう意味のマドンナなのかはっきりさせなければ! というわけで、続けて彼に質問してみることに。
私:「マッダンナー? ポップシンガー?」
香港男性:「??」
私:「ライクァーバージン?」
香港男性:「????」
私:「オワー、ユーミーン、ビューティフルウオマン?」
香港男性:「????????」
私:「…………」
香港男性:「????????????????」
——なんという手応えのなさ。恐ろしいほどに会話が噛み合っていない。ボビー・オロゴンが『徹子の部屋』に出たとき以上の噛み合わなさである。
・マッダンナーの意味とは?
あまり引っ張るほどのものではないので、そろそろ「マッダンナー」が何だったのかを公表したい。それは……
マクドナルド
つまり、香港人の彼は「このへんにマクドナルドないかな?」と聞いていたのである。知ってしまえばどうってことない。「なんやマクドか!」って感じなのだが、意味が判明するまでに繰り広げた苦闘っぷりたるや……。泥沼の中に腰まで埋まりながら卓球していたような気分であった。
その泥沼にハマった原因は、「マッダンナー」と聞いて私の脳内で変換される言葉の候補が「マドンナ」しか出てこなかったからに尽きる。「不自然だろ」とは思いつつも、他に変換候補がないためどんどん泥沼にハマっていったのであった。特に、
自分の発音が悪いから通じてないだけかも?
と考えはじめるとさらに泥沼の深みにはまり、もがけばもがくほど抜け出せなくなったのである。「ゆっくりと丁寧に発音すれば通じるのでは?」と思い、何度も同じフレーズを繰り返しながら……。たとえば、こんな風にだ。
ライクァー
ブッッッァ(下唇噛み〜の)
アーーーーーーーー(舌巻き〜の)
ジンッ!
——中でも、「バージン(Virgin)」のV とR は難関だったので、V で下唇を噛んでぇの〜R で舌を巻きぃの〜と、メチャクチャ丁寧に伝えたのだが……アレは恥ずかしかった。心斎橋のど真ん中で、バージンバージンと全力で発音していたのだから。
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
▼あのときの『Like A Virgin』を再現してみた
▼行列の様子。メチャクチャ寒かった…
▼なお、マドンナの代表曲『Like A Virgin』はこちら