「事実は小説より奇なり」とはよくいったものだが、先日、中国である未解決事件が驚くべき展開を迎えたと話題になっている。

22年前に子供を含む4人が惨殺された事件なのだが、逮捕された容疑者に世間は驚いた。受賞歴もある有名作家だったのである。

・22年前の強盗殺人事件

事件が起きたのは1995年11月29日のこと。浙江省の旅館で経営者夫婦とその孫、そして宿泊客の計4名が惨殺されているのが発見された。4人は血まみれ。鈍器で頭を殴られた致命傷のほか、刃物による刺し傷もあったという。

宿泊していた男性2名の犯行と見られたが、宿泊時に実名が登録されていなかったこと、また監視カメラがなかったこともあり、足取りはつかめず。22年が経った。

・有名作家を殺人容疑で逮捕

しかし! 現地警察は諦めたわけではなかった。2017年、専門チームを結成。遺留品をDNA鑑定したところ捜査線上にある人物が浮上したのだ。

その人物とは、有名作家。中国作家協会の会員であり、安徽省で権威ある文学賞を受賞したこともある小説家 “劉永彪(りゅう・えいひょう)” だったのである。あまりの衝撃に世間は驚いた。

・作家「この日を待っていた」

逮捕されたのは8月11日だ。劉容疑者は特に抵抗する様子はなかったという。逮捕の瞬間に「今までずっと、あなたたちが来るのを待っていた」とつぶやいており、逮捕後、中国メディアの取材に対しても「逃げ切ることはできないと思っていた、この日を待っていた」と話している。

・場当たり的な犯行

事件当日に何が起こったのか。旅館に泊まっていた劉容疑者と友人は、別の宿泊客の部屋に侵入し、盗みを働こうとした。するとその様子を目撃される。口封じのために1人目を殺害。さらに騒ぎに気がついた経営者の男性を殺し、別の部屋にいた妻と孫も殺害したのだ。

4人を犠牲にしてまでして奪ったのは、時計と指輪、そしてわずかな金のみだったという。

・過去に「小説家が大量殺人をはたらく作品」の構想も

その後、劉容疑者は作家として成功するわけだが、ブログや別の小説の前書きで「大量殺人を犯す美人作家」の構想を発表していた。作中で事件は解決せず、「文学作品として人間の勝手さと社会環境の因果性を描く」としていた。

“作家の大量殺人” とは美人作家に自分を投影し、事件を描くつもりだったのだろうか。その意図ははかりかねるが、取り調べに対し「どうして書けるだろうか、書いたことはない」と話しているという。

・最初の10年は苦しみ、あとの10年は感覚が麻痺

逃走していた22年間について「最初の10年は苦しかった、あとの10年は麻痺してきた」と話す劉容疑者。その一方で「でも内心は辛かった。殺鼠剤を用意し、自殺できるようにしていた」とも。いったい何を思っていたのか。警察の発表によると共犯者も逮捕され、共に自供しているとのことである。

参照元:Facebook南方都市報新浪新聞NewYork Times中文版(中国語)
執筆:沢井メグ

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