どんなニッチなものであろうと、日本一にはなかなかなれるものではない。必ずその道を極めんとする猛者がいるものである。そして当たり前だが、分母が多くなればなるほどに道は険しくその称号も輝く。

ウマいそば屋を求めて色んな街を放浪する「立ちそば放浪記」。今回は、「日本一ウマイ駅そば」という呼び声も高いそば屋だ。とてつもないスケールの分母を持つ駅そば界において、No.1とは一体どんなそばなのか? しかとその目に焼き付けよ!

・札幌から電車に揺られて

そのそば屋の名は『常盤軒』。伝説のそばをひと目見るべく、私(中澤)は北海道に飛んだ。目指すは、北海道一小さな村・音威子府(おといねっぷ)の駅舎である。

札幌から旭川に行き、さらにJR宗谷本線で北上。建物はすぐに無くなり、電車は地平線まで続くような田園風景と雄大な山々の中をひた走る。

・蒸気機関車が走っている時代から話題の店

旭川を出て約2時間後──稚内と旭川の中間にある音威子府駅に到着。この音威子府村で作られているそばが非常に特殊であり、そのウマさは蒸気機関車が走っている時代から旅行者の間では話題であったという。


現在では、そば自体は通販が行われているが、調理してメニューとして出している店は非常に少ない。しかしながら、その人気は根強く、私が常盤軒を訪れた際も、村人から村に似つかわしくないスーツ姿のサラリーマンまでさまざまな人がそばをすすっていた。そんな伝説のそばがコレだ!

・そばのダークサイド

丼に鎮座する麺は、光すら吸い込まんがごとく真っ黒だ。これぞ、まさしく暗黒麺! ダークサイドに堕ちたそばと言っても過言ではないだろう。

・味はいかに

つゆは関東風と関西風の中間くらいの色だが、このそばと比べたら透明度が高いように見える。シスの暗黒卿とダースベイダーがいたら、ダースベイダーが若干良いヤツに見えるのと同じ原理だ。それはさておき、どんな味がするのだろうか。ひと口食べてみたところ……

濃・厚! 噛んだ瞬間に、強烈なそばの風味が口いっぱいに広がる。その味は田舎そばをさらに濃くパワーアップさせたような感じで、泥臭くも香ばしいそばの味が舌にまとわりつくようだ。

つゆの味付けが薄めなことも、そば自体の味を引き立てている。余計な飾り立てのない真っ向勝負が心地良い。ガチでウメェェェエエエ!

・全てがそばのトッピング

ふと、駅舎から窓の外を見ると、吹き抜ける風も見えるような音威子府駅のホーム。何もない美しさがこの場所にはある。この風景や道のりもそばのトッピングとなっているような気がした。

なお、札幌から音威子府へは、朝の7時40分に札幌発のJR特急宗谷・稚内行に乗れば、乗り換えなく3時間ほどで行くことができる。ただし、音威子府から旭川方面の電車は1日6本なので、どちらにしても行って帰ってくるのに1日かかるが……。

・衝撃の結末

ともかく、そばも食べたし帰るか。そんな感じで切符を買おうとしたところ、改札前に看板が出ていることに気づいた。なんだこれ? その看板にはこう書かれていた。

列車運休のお知らせ。は? 列車運休って何? うんきゅう……運休ぅぅぅぅぅ!? 2時間後の帰りの電車が運休して、次の電車はさらに2時間後だと!? 秘境恐るべし。これには、他のお客さんたちも「マジかよ~~~」と声をあげていた。やはり行くなら1日かける覚悟をした方がいいぞ(泣)

・今回紹介した店舗の情報

店名 常盤軒
住所 北海道中川郡音威子府村字音威子府JR音威子府駅
営業時間 10:00~15:30
定休日 水曜日

Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼かけそば(370円)


▼天玉そば(520円)



▼オマケ:音威子府駅の風景


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