【実話】5年前「北朝鮮」に行ったときの話(2ページ目)

・万景台の生家

平壌市内を観光する日。なんでも、初めての訪朝時には「必ず行かなければならない訪問地」があるらしい。私は指導員に「サーカスを観て、遊園地で遊んで、人民服を買いたい」という希望を伝えたが「そんな時間はない」と一蹴されてしまった……超バタバタの2日目が幕を開ける。

で、最初に行くことになったのが「金日成主席が誕生して幼年時代を過ごした」という『万景台の生家』だ。

万景台の生家では「貧しかった金日成主席は、ゆがんだカメしか買えなかった」という説明を受けたが、確かにカメは「失敗作にもほどがあるだろ」と思ってしまうレベルでゆがみまくっていた。

ササッと見学を済ませると「さあ行きましょう」といった感じで、すぐに次の訪問地へ。予定はギッシリなのだ。

・万寿台大記念碑

休む間もなく次に訪れたのは、平壌で最も有名な観光地、巨大な金日成像と金正日像が並ぶ『万寿台大記念碑』である。北朝鮮人にとっては聖地中の聖地なので、おふざけは絶対にダメ。銅像と同じポーズで記念撮影など絶対に許されないらしい。ウソみたいにデカい銅像は、威厳も迫力も抜群であった。

・昼食は冷麺

その後もダダダッと、朝鮮労働党50周年記念で建てられた『党創建記念塔』や、アメリカの武装スパイ船だという『プエブロ号』を見学。ランチタイムは北朝鮮自慢の本格冷麺店へ行ったが、突然始まった美女たちのカラオケ大会に夢中になってしまったので、味の記憶はゼロである。

・地下鉄乗車

午後の観光は、世界一深いとされる地下鉄からスタート。平壌の地下鉄は「核シェルター」としての役割もあるらしく深さは平均90m、ざっと大江戸線の倍以上といった感じだ。私が利用した「復興駅」は、地上からホームまで1本のエスカレーターで約3分かかった。


ホームで待っていると、天井の豪華なシャンデリアとは釣り合わないボロい車両が登場。利用者は意外にも多く、シートはほぼ満席状態であった。また車両ごとに、並々ならぬオーラが漂う金日成、金正日両氏の肖像画が飾られている……さすがとしか言いようがない。

・凱旋門と学校見学

栄光駅」で下車後、またまた長いエスカレーターで地上へ。ゴミが落ちていない平壌の街並みを眺めた後に、パリの凱旋門より10m高いという『凱旋門』で写真をパシャリ。指導員も「これ世界一なんです!!」と自慢げな表情を浮かべていたが、数秒後には「さ、次へ」といった感じで私を車に乗せた。

夕方に訪れたのは、教育施設だ。施設の先生に「さあさあ、小ホールへ!」と案内されると、子供たちによる歌と踊りの大発表会がいきなりスタートッ……! 感動を通り越して絶句するレベルの圧倒的歌唱力と本気すぎるダンス。気がついた時には、なぜか私も子供たちと手をつないで一緒に踊りまくっていた

・最後はやっぱり

最後の最後、これまで厳しかった指導員が表情を緩めて一言「サーカスには行けませんが、遊園地に行きませんか」しかも「あなたは行儀がよかったので、人民服も用意しましょう」って……最高かよ指導員! 

いつの間にか芽生えていた指導員との友情に目頭が熱くなる。ガッチリと握手を交わしてオッサン4人でいざ遊園地へ……だが、しかし! 

突然降りだした雨により遊園地は閉園……マジかよ乗りたかったぞジェットコースターーー! 仕方がないので「夜景がキレイな場所」をお願いしたが、到着したのは本日2度目の万寿台の大記念碑であった。

確かにキンキラキンに光っている……奈良の東大寺で買った「なんでやねんTシャツ」も輝いていた。

そんなこんなで平壌観光のシメは、柔らかくてあっさりしたアヒルの焼肉。店内は外国人観光客でパンパン、きっとラストを飾るにふさわしい店なのだろう。2泊3日のスケジュールだと観光できるのは実質1日のみだが、正直もうお腹いっぱいである。

ホテルに戻って人民服を試着してから、平壌の地下鉄ばりに深い眠りについた。出かける前の不安がウソのように、なんだかんだで楽しかった2泊3日。これまで様々な国に訪れたが、北朝鮮は私にかなり強い印象を与えた。

・無事帰国

──帰国後、テレビではいつも通り「不気味で恐ろしい国」という北朝鮮の特集が組まれている。そんな番組を観るたび、いつもぼんやりと平壌で出会った人々の顔が思い浮かぶ。

北朝鮮がヤバイ国なのは知っているが、出会った彼らまでは嫌いになれない……偏った思想に違和感を覚えることはあったが「カラオケの時に必死に高音を出そうとする姿」などは、正直私たちと何も変わらないとも思った。

彼らは今も元気に暮らしているのだろうか……どのような人生を送っているのだろうか? 北朝鮮の人々がもっともっと平和な生活ができることを願っている。

Report:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.

▼北朝鮮の風景





▼平壌駅

▼党創建記念塔

▼プエブロ号

▼金日成広場



▼入れなかった遊園地

▼冷麺は本格的だった

▼アヒルの焼肉も美味かった

▼帰りの飛行機で読んだ新聞

▼遊園地が楽しそうだった

▼思い出のプレイボーイ