翌日、私はバイトに出かけた。仕事内容は「アダルトビデオのモザイク入れ」であり、なんと勤務地は先述の出版社が入っている「摩天楼ビル」から徒歩1分以内に位置する雑居ビルの狭い一室だった。バイト先と摩天楼ビルが近いのは単なる偶然だ。
世間話が大好きなバイト先の上司は、昨日の私の「早退してからの行動」を聞いてきたので、「すぐそこにある摩天楼ビルでおばけを探しました。赤ランプが異常反応して……」と、事細かく身振り手振り付きで説明した。すると上司は急に真顔になり、
上司「GOくん、それヤバイよ……。ガチかもよ……」
と言い出した。私は「またまたァ〜(笑)」と返したが、なおも彼は真顔で話を続けた。
上司「オレさ、昔からここに住んでるじゃん。だから摩天楼ビルが作られている最中のことも知ってるんだ。なにせ毎日、通勤中に横を通るからね。こりゃデカいビルが建つぞ〜って、さら地の時代からよく見てたよ。
あそこは工事も速かった。どんどんデカいビルになっていった。ところがある日、大変なことが起きた。工事現場に救急車やら消防車やら集まって、大変な騒ぎになっていたんだ。あ、これは何か事故が起きたな……ってすぐにわかった。
で、その事故ってのはエレベーターの工事中に起きた事故だった。かわいそうに、1人の作業員が亡くなったらしい。ウソじゃないよ。ニュースにもなってた。その赤ランプ反応は、この作業員さんが何かを訴えているのでは……」
──とのこと。疑い深い私は「マジすか……」と言いつつも正直ウソだと思っていたが、調べてみると本当にニュースにもなっていた。さらにそこには、“エレベーター設置中、落下したわけではなく、上階で挟まれて死亡” 的なことが書いてあったのだ。
・さらに衝撃的事実が発覚
ひどく動揺した私は、すぐさまコラムの担当編集さんに連絡した。彼もまた「エーーーーッ! そんなの知らなかった!!」と驚いており、「社内に何か知ってる人がいるかもしれないから、それとなく聞き込みしておきますね……」ということに。
数日後、社内リサーチが完了したのか、担当さんからメールが届いた。そしてそこには、以下のようなことが書いてあったのだ。
・事故が起きたのは事実
・数台あるうちの、どのエレベーターで事故が起きたのかは不明。
・何が理由なのかは不明だが、事故後、当初入れる予定だったエレベーターのメーカーから、違うメーカーに変更された。
・ちょうどばけたんが赤反応したあたりの階は、社内でも「おばけが出る階」として有名だった。
・あまりにも謎の現象が発生しまくるので、そのフロアから別の階に移る部署が続出し、ついには誰も使わない無人の階になってしまった。
──情報を簡潔にまとめると、こうだ。「かつてエレベーターの設置工事中、とある階の位置で挟まれて事故死した作業員がいる。その事故が起きたあたりの階は、怪奇現象が起きていた。そして、ばけたんもドンピシャで異常な反応した」……である。
私と担当さんは「さすがにこれをそのまま書くのはマズい……」と青ざめ、連載コラムは “いろいろ反応したよ〜” 的な、無難な内容に留めておくことにした。そして、「もしや事故が起きたのは、まさに我々が乗ったエレベーターだったのでは……」と、心の中で手を合わせながら、天に召された作業員に思いを馳せるのであった。──合掌。
参照元:ソリッドアライアンス「ばけたん」
Report:GO羽鳥
イラスト:マミヤ狂四郎
Photo:RocketNews24.
▼ちなみに私が使っていたのは「ばけたん2ストラップ」というモデルだ。