daigoro

「しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃん」と言えば、そう、あの『子連れ狼』である。その、子連れ狼で出てくる子どもの名前が「大五郎」。前髪とモミアゲの上の部分と、後頭部だけ長く伸ばし、あとは刈り上げた独特の髪型でも知られているアレである。

その「大五郎」をそのままバンド名にした外国のバンドがいる。それはスイスの西部フランス語圏に属するフリブール出身の「Daïgoro」だ。

・フランス語圏スイス出身

「i」には「トレマ」と呼ばれるフランス語の分音記号である「Ï」が用いられているが、これはメタルバンドで盛んな「ウムラウト」(装飾効果を意図して使用されたもので、へヴィメタのバンド名表記でよく用いられる)と似たような効果を狙っているのだろう。

・活動休止で元々知名度が低い

「Daïgoro」は2006年に活動を開始し始めたが、2014年以降は動向が報じられておらず、Facebook での動きもそれ以来止まっている。知名度や人気はかなり低く、Facebook での「いいね」は171人で、音楽配信サービス「Last.fm」でのリスナー登録者数はわずか4人である。

・ブラッケンドクラスト風だが、相当レベルが高い

ジャンルのスタイルとしては、「ブラッケンドクラスト」(メタルのジャンルのひとつ)に近いと言えるが、そこまではっきりとした訳ではなく、「グラインドコア」と「ブラックメタル」を混ぜ合わせたかの様なサウンドだ。

人気や知名度が極めて低いにもかかわらず、音そのものを聴いてみると、かなりハイレベルで素直に格好いい。「Discordance Axis」(ベースレスの3ピースバンド)の様なハイテンションなブラストに時折、ブルータルデスメタル並のピッグスクイール(豚の悲鳴のような発声法)にすら聴こえるボーカルが入り、「Converge」(米ハードコアバンド)の様なカオティックハードコア風のリフが混ざり合い、なぜ無名のまま消えてしまったのか、よく分からないぐらいである。

・メンバーが日本映画のファン

さてこの「Daïgoro」のプロフィールを見てみると、なぜこの様な名前にしたのか説明がなされていた。メンバーの1人が日本映画やカンフー映画の大ファンで、特に『Baby Cart』、つまり、“子連れ狼” が大好きとの事である。また『座頭市』のファンでもあるとの事。

・曲名も日本語、ロゴも市松模様、琴のBGM

「Daïgoro」の曲名を見てみると、『Katana』や『Bushido』、『Sakura』などいかにも日本的なイメージの言葉が用いられている。複数種類があるロゴのひとつは市松模様をイメージさせたもので、洗練されておりオシャレだ。イントロやSEでも随所で日本料亭で流れる琴のBGMの様な音が流れ、子連れ狼からのセリフがサンプリングされており、和風イメージが随所に発揮されている。

・フィンランドの歌舞伎メタル「Whispered」みたいになれた可能性

最終アルバムとなる『The Other Moon』のジャケットアートは、林の茂みを刀で切り刻んだようなイメージで、それこそ、子連れ狼の雰囲気が出ており、秀逸である。このまま活動を続けて人気を博して予算を獲得すれば、あのフィンランドの歌舞伎メタル「Whispered」と並ぶ存在になれたかもしれないだけに、復活を期待したい。

・日本から声援を送ろう

この手の日本趣味バンドは本国以上に日本で人気が出たりするものだが、確認した限りでは日本ではほとんど話題になっていない。「Daïgoro」自体は活動を休止しているものの、メンバーは「Blue Herps」や「Tschäggättä」など他のバンドで音楽活動を続けている様だ。そしてそれぞれのバンドもかなりレベルが高い。

せっかく日本贔屓のカッコいいバンドがいたのに、日本で全く注目されなかったのは、もったい無いし、申し訳ない。彼らのサウンドを格好いいと思った方々は、是非、Facebook で「いいね」を押したり、声援を送ってみてはいかがだろうか。

・アメリカにもデスメタルの「Daigoro」が

なお調べたところ、実はアメリカのミネソタ州にも2006年にデモだけリリースして解散したデスメタルの「Daigoro」が存在したようだ。こちらの方も、子連れ狼をモチーフにしている様なのだが、マシンガンを持つ女性が登場したり、黒ミサをしたり、キル・ビル風の映像が出てきたりと、コンセプトが不明瞭。曲もドラムがわりと上手い以外には、特筆すべき点は見当たらない。

参照元:Daïgoro(Bandcamp.com)、Facebook
執筆:ハマザキカク

▼Daïgoroが最後に残したアルバム『The Other Moon』