突然だが、王子と言えば誰を思い浮かべるだろうか? ハンカチ王子、ハニカミ王子、クリエイターの広井王子さんなどなど……様々な王子がいるが、個人的には王子と言えば『THE ALFEE』のギタリスト・高見沢俊彦さんが元祖だと思う。
デビューから42年目を迎えた現在、THE ALFEEはもちろん、ソロでも精力的な活動を展開している彼。その中心には常に揺るがないギターへの愛がある。今回は、500本以上のギターを所持する高見沢さんにとって「ギターとは何か?」ということをテーマにインタビューを行った。
・初の試みであるオーケストラとのセッションで得たもの
2016年6月29日にクラシックコンサートの映像を発売した高見沢さん。このコンサートは、今年2月21日に「渋谷Bunkamuraオーチャードホール」にて、指揮者の西本智実さん率いるイルミナートフィルハーモニーオーケストラと共演したもの。曲目はすべてクラシックのナンバーで固められた異色のコンサートであり、彼自身にとっても初の試みだったという。
ロックバンドとオーケストラの大きな違いの一つに「バンドには指揮者が存在しない」ということが挙げられるが、そういう環境の中でギタリストとして苦戦することはなかったのだろうか? まずは、この時のコンサートについて聞いた。
──オーケストラとの共演でバンドだけより難しかった点と楽だった点を教えてください
高見沢さん「楽なことは一切ないよ(笑)今までポップ、ロックの世界で42年やってきたけど関係なかったね。完全に別物だった」
──どういった点が難しかったですか?
高見沢さん「やっぱり普段指揮者に合わせて演奏することがないし、特にクラシックってアクセントが独特で、ピアニッシモからフォルテッシモまでの強弱の流れに合わせるのが難しかったな。
最初、西本さんから話が来た時は、クラシックの表現に興味があったんで受けたんだけど、『こんなのやりたい』って送られてきた譜面を見た瞬間倒れたね(笑)見たことないくらい複雑な譜面だった」
──複雑と言うと?
高見沢さん「まずロックやポップスだと、ギターの場合コードがあるじゃない? クラシックではそのコードという概念がないんだよ。すべてメロディーなんだよね。で、そのメロディーが重なり合ってハーモニーになる。
おまけに、クラシックの譜面だからエレキギターのパートがないんだよね。だから、クラシックの曲を自分なりに解釈しなきゃいけない。ヴァイオリンとかチェロのフレーズをどうやって表現するか……とかね。それが凄い大変で、久しぶりにギター練習しちゃった(笑)」
──それは厄介ですね……。
高見沢さん「あと、一番求められたのは、譜面に書いてあること以外……ロックギター独特の即興性だった。ただ、西本さんはどんどん譜面からはみ出てくれって言うんだけど、はみ出ようがないんだよね。
最初は、ヤベーとこ来ちゃったな~って思ったんだけど、本番ではもう覚悟を決めて自分なりの解釈でやったよ。いろんなライブをやってきたけど、今回のセッションは興味深かったね」
──なるほど。そんなライブではヴィヴァルディの四季から『夏』を演奏されてますよね。ライブの季節的に普通『春』かと思うのですが、この選曲の理由は何でしょうか?
高見沢さん「まず、西本さんから四季をやりたいって連絡が来て、俺は有名な『春』をやるのかと思ってたんだよね。じゃあ、送られてきた譜面を見たら『夏』だった。それで『夏』を聞いてみたら “これギターでやんの?” みたいなエライ速弾きなのよ(笑)
1音1音コピーしていって試しに弾いてみたら、完全にメタルになってさ。西本さんとしては、ギタリストとやるんだったら個性を際立たせたいっていうイメージがあったらしくて、結果的には四季のセッションは面白かったね!」
高校生時代によくディープ・パープルとロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のライブ音源を聞いていたという高見沢さん。今回のクラシックセッションは、ギターに対する憧れの原点に立ち返るものになったという。500本以上に上る所持ギターの本数は、そんな彼のギター愛の表れと言えるだろう。
しかし、500本とは……軽く狂気を感じる数字だ。何が彼をそこまで駆り立てるのか? そして高見沢さんは500本ものギターの区別はついているのか。さらにグルーヴするインタビューの末に出たマジ王子な回答は次ページで!
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.