ロケットニュース24

【真相究明】記事を無断でYouTubeの動画にした “転載YouTuber” に挨拶しに行き「どのくらい儲かるのか」を聞いてきた!

2016年6月13日

atsuiseki1

私はロケットニュース24のライター、佐藤英典。実はそれは “表の顔” であり、“裏の顔” は世の中の怪しい所業をクリアに洗い流す「洗浄カメラマン」である。最近、YouTubeを閲覧していたところ……とんでもない動画を発見してしまった。

その動画とは、当サイトの記事を勝手に転載するという、いわゆるひとつの “転載パクリ動画” だ。それのみならず、どういう訳だか動画のタイトルに私の名前まで入っているじゃないか! おいおい、転載して動画化しただけでは飽き足らず、人の名前までタイトルに織り込むとは……エエ度胸しとるやないか! 洗浄カメラマンの血が騒ぐ!! ということで、早速洗浄に乗り出した! 真っ白に漂白してやるッ!!

・2016年5月某日

私の1日は大抵、YouTubeを見ているか、食レポの取材と称してメシを食いに行ってるか、記事を書くフリをしてタイピングゲームをしているか……。それで、なんとなく1日が終わる。

5月のある日、YouTubeで面白動画を見漁っていたところ、驚くべき動画を発見した。なんとウチの記事が、勝手に動画化されているではないか! 転載された記事は、5月17日に公開したものだが、問題はその動画のタイトルだ。

【独自取材】人気グラドル今野杏南出演の「晴のどごし」ウェブ限定ムービーの撮影現場に潜入! 完ぺきな美ボディに思わず見惚れる 佐藤英典 2016年5月17日」(当該動画はすでに削除済み)。独自取材と銘打ってるのに、わざわざそれを転載することないだろ。しかもだ、なぜ私の名前をタイトルに入れてるんだよ。動画の中には、何度も私の顔写真が登場している。

・YouTubeコメント欄での攻防

よろしい、“洗浄の時間”だ。こうなったら直々に抗議だ!! 動画の投稿者の名前は、仮に「マスオさん」としておこう。まずはマスオさんに対し、動画のコメント欄で軽いジャブを打ってみることにした。

佐藤「これ、勝手に記事を動画か(動画化)してますよね?」

と、コメントすると……

マスオさん「ごめんなさい。気を悪くされたのであれば削除いたします。。。」

まずい、このままではマスオさんは動画を削除して逃げてしまうことになる。せめて一言挨拶させろ! 面と向かって挨拶してこそ、洗浄だ。このままでは逃げられてしまうので、YouTubeのメッセージ機能を使って、連絡を取ることを試みた。さらに動画にコメントを続ける。

佐藤「YouTubeでメッセージをお送りしております。そちらもご確認頂けますか?」

マスオさんのアカウントの概要を見ると、2010年からYouTubeを利用している。キャリアとしては長い方だ。6年間に相当数の動画を公開しているから、当然YouTubeをマスターしていると思ったら……

マスオさん「ごめんなさい。見方がよくわかりません。。。」

何年YouTubeやってんねん! それだから、うだつが上がらずに、動画を転載するようなせこいマネをせなあかんのとちゃうんかい? せっかく関係を構築できそうなのに、前に進まない可能性が出てきた。まずいな、洗浄達成するためには、なんとかしなければ……と思ったら!

幸い、マスオさんにアクセスする道はもうひとつあった。それはブログだ。

動画の概要ページには、マスオさんが運営しているブログのURLが載っている。しかも、そのブログにはメールフォームがあった。よし、ここで渡りをつけよう。ということで、さらに動画へのコメントは続く。

佐藤「承知しました。では、あなたのブログ「××××××××」にメールフォームから、メールをお送りします。必ずお返事ください」

そして、戦いの場、つまり「戦場」は、タイマンのメールへと移っていくのであった……。手に汗握る怒涛の展開は次ページへと続く。

Report:洗浄カメラマン 佐藤英典
Photo:Rocketnews24

・戦場はメールへ

私は彼のブログのメールフォームから、以下の内容を投稿した。

「貴方の公開された動画「【独自取材】人気グラドル今野杏南出演の「晴のどごし」ウェブ限定ムービーの撮影現場に潜入! 完ぺきな美ボディに思わず見惚れる 佐藤英典 2016年5月17日」(URL)は、弊社メディアの記事「【独自取材】人気グラドル今野杏南出演の「晴のどごし」ウェブ限定ムービーの撮影現場に潜入! 完ぺきな美ボディに思わず見惚れる」(https://rocketnews24.com/2016/05/17/738604/)を無断で転載したものに、相違ありません。

動画に関しては、すでにダウンロードしデータを保管しております。著作権に関しまして、弊社顧問弁護士と相談のうえ法的な手続きを進めております。つきましては、どういう意図で転載したのかを伺いたいと思います。会ってお話ししたいと考えております。お話の内容によって、今後の対応を弊社で検討したいと思います。

ですので、弊社にお運び頂きたいと考えておりますが、いかがでしょうか? 早急にお返事を頂きたく存じます。何卒、よろしくお願いします」

この段階で法的な手続きなど進めていなかった。とにかく会って挨拶をしたいという思いから、どうしても返事が欲しくて、ちょっと強めの言葉を並べ立てたのだ。いつになるかわからないけど、返事は来るでしょう……と思ったら!!

なんとフォームからメールを送った翌日、返事が来ていた! やった、これで会える!! と思ったら、マスオさんからの返答は、意外なものだった。

マスオさん「大変申し訳ございませんでした。意図と申しますのは、いい記事でしたので、単純に視聴いただけるのかと軽く考えておりました。また、御社への訪問ですが、私、山口県に居住しており、勝手を申し上げますが、もし、可能であれば電話で対応できればと幸いでございます。何卒寛容なご処断いただければ幸いでございます」

・まさかの山口在住

ぬ~ん、山口か~……。遠い。たしかに電話で済ませるのはスマートだ。たしかに、お互いに手間と時間を省くことができる。たしかに賢い提案だ……が!

会わなければ、このやり取りさえ意味がなくなってしまう!! 諦めるなマスオよ、俺たちは出会うべき宿命にあるんだよォ! いや、出会わなければダメなんだよ。それなのに、電話で話を済ませるだなんて……俺が許しても、読者は許さないだろッ!! 仮に俺が寛容な処断をしても、読者は寛容ではいられないぞ! ということで、こちらから出向くしかなくなった。

ちなみに最初にちょっと強めのことを伝えちゃったから、返答はちょっと優しく、「怖くないよ」って感じにしておかないとイカン。だってだって、怖がられちゃったら、会うことすらできなくなっちゃうから。

佐藤「ご連絡頂きまして、ありがとうございます。山口県在住とのこと、承知致しました。ちょうど私の方で、そちら方面に伺う予定がございます。つきましてはお会いしてお話をさせて頂ければと考えております」

ウソである。そんな都合よく、山口県に行く予定なんかある訳がない。でも、こうなったら山口県に行くしかないでしょうが。

そんな訳で、この後にメールを何度もやり取りをして、会う日取りの調整を行った。その間も、「怖くないよ」っていう感じの演出を続け、なんとか、マスオさんの恐怖感を和らげることに努めた。その結果、無事に時間を調整することに成功したのである。

・一路広島へ

決戦の日は、5月某日の午前9時。山口県内のファミレスである。もっとも早い便で羽田から飛び立っても、9時には到底間に合わない。そこでわざわざ前乗りして、岩国市の旅館に宿泊することにした。まさかこんな大変になるとは、私自身も思わなかった。

そして迎えたフライトの日。私は広島に飛び、そこから山口入りする予定を立てていた。午後の空港は比較的空いているように見えたが、広島行きの搭乗便は満席だった。

きっとこの空港から飛び立つ人たちは、待つ人のいるところへと行くんだろうな。私もそのひとりだ。山口のマスオさんの元へと、これから飛び立つことになる。待ってろマスオさん。「今、会いに行きます……」

・広島空港アクセス悪すぎ

さ~て、広島空港に着いたで~。

帰りにもみまん(もみじまんじゅう)買って帰ったろ。

広島空港が信じられないくらい山深いところにあって、まずそのことに驚いた。さらに、ナビがおかしな道を案内したせいで、街灯もないような山のなかを霧に包まれながら、ひた走る。道が見えなくて、ガードレールに突っ込むんじゃないかって心配になった。ちなみに今回の冒険で、この時が一番怖かった……。

・岩国で一泊

車で約1時間半走って、岩国市の旅館に到着。部屋が10畳くらいあってビビった。さすがに1人で泊まるには広すぎだろ!

よ~し! お茶飲んで寝る!

明日はついに洗浄決戦だ。まだ見ぬマスオさんを夢見ながら、おやすみ!

「Zzz」

翌日、ついにマスオさんと感動の対面! 私が想像したのとは、ちょっと違うタイミングで、彼の姿を見つけることとなる。その様子は次のページへ!!

Report:洗浄カメラマン 佐藤英典
Photo:Rocketnews24

・錦帯橋のアーチのように

この日は気持ちの良い快晴だった。東京では雨が降っているらしい。まるで私とマスオさんの遭遇を歓迎しているようじゃないか。出発時刻までにはまだ十分にある。それなのに5時30分に目が覚めてしまって、それ以上眠ることができなかった。まるで、遠足の日を心待ちにしていた子どものような心境だ。

錦川にかかる錦帯橋が、美しいアーチを描いている。そうだ、私とマスオさんの間には、すでにこのような心の架け橋がかかっている。ふたりを隔てているものは、もはやなくなろうとしているのだ。待ってろ、マスオさん!

行くで~! 待ち合わせのファミレスまで。待ち合わせの9時には早すぎるけど、行くで~!

・開店時間10時じゃないか!

そしてついに目的地に到着した! 約束の時間より随分早い。まあ、待っていればいいか。そう思ったのだが……。

おい、このお店の営業時間10時からやないか! 9時の約束だったのに、なんでやねん!

たしかに指定していた場所はここだ。そして時間は9時で間違いない。それなのに営業してないってどういうことだ? もしかして、山口まで来てハメられたのか? その可能性も十分にあるだろう。わざわざ東京から来たというのに、今になって騙されたんじゃないのか? 幸いマスオさんの電話番号はわかる。とにかく電話して確かめてみよう。

佐藤「もしもし、マスオさんですか? あ、はじめまして」

そうだ、これが初めての声でのやり取りだ。マスオさん、人がよさそうな声してるな~。それはさておき、お店の営業時間のことを聞かねば。

佐藤「あの~、お店営業してないんですよ。10時の営業開始みたいで。え? ここじゃない? あ、市内にもう1店あるんですね? あ、はい。すみません。間違えました。すぐにそっち行きます、すみません……」

興奮のあまり、待ち合わせの店間違えてもうた。まさか先に謝ることになるとは……。という訳で改めて、行くで~!!

・ついにマスオさんと遭遇!

たしか、車で10分くらいの距離だってことだったんだけど。ここら辺かな~?

あ! アレか? 黄色い看板見えた。

アレ? 入り口のところに誰かいる?

まさか……。

も、もしや!?

マスオさんだろッ! 絶対あんたマスオさんだろーーーッ! 律儀に入り口で立って待ってたのかーーッ!! 想像してた以上に普通のオッサン。いや、普通の人だ。

そしてついに語られる、勝手に記事を動画化するYouTuberの実情。彼は一体どのくらいの収益を上げているのだろうか? その真実が明らかになる。次のページへGO!!

Report:洗浄カメラマン 佐藤英典
Photo:Rocketnews24

・マスオさんの証言

車から降りて挨拶すると、マスオさんは開口一番に「すみませんでした」と謝罪した。問題の動画はこの時すでに削除していたので、あの動画への対処は何も求める必要はなかった。

私が聞きたかったのは、記事を動画化することによって、どれだけ収益が上がるのか? そしてなぜ、そのようなことを始めたのか? ほかに仕事に就いているか? ──などなど、彼にまつわることであった。

今回この記事を執筆するに当たって、マスオさんに承諾を得て、個人を特定できる情報は伏せた上で、顔出しナシで協力してもらったのである。以下は彼の発言を要約した内容となっている。

・実際のところ儲かるのか?

佐藤「そもそもなんで、ニュースサイトの記事を動画にしようと思ったんですか?」

マスオさん「ほかの人(YouTuber)がやっているのを見て、マネしようと思ったんです」

佐藤「何か専門のソフトとか使ってます?」

マスオさん「いや、パソコンに入ってる「MovieMaker」(動画編集ソフト)です」

佐藤「それで儲かるんですか?」

マスオさんいや~、全然ですよ。月に3000円くらい

佐藤「え? たった3000円? 割に合わないでしょ、かなりの本数をアップロードしてるのに」

マスオさん「全然儲からないですよ」

佐藤「じゃあ、やってる意味ないじゃないですか。儲かんないのに、なんでやってんの?」

マスオさん「いや~まあ、動画でお金を稼ぐ気はあまりなくてですねえ、再生回数が増えることが楽しかったんですよ」

佐藤「とは言っても、動画の再生回数かなり低いですよね。多くて数百回でしょ?」

マスオさん「そうなんですよ、それでも増えると嬉しくてですねえ。再生回数10回でも嬉しかったです

佐藤「わずかでも増えると、やり甲斐を感じるんですね」

マスオさん「そうですねえ」

佐藤「まさか月3000円で生活できないですよね。お仕事は?」

マスオさん「専門職なんですけど、今勉強中でして。これから必要な資格を取るところです」

佐藤「会社勤めですよね?」

マスオさん「はい、義父の会社で」

佐藤「メールの返信が鬼のように早かったんですけど、お仕事でパソコン使ってます?」

マスオさん「はい。あの~……、仕事しながら動画を作ってました……

佐藤「ダメじゃないですか。お義父さんの会社に勤めてるのに」

マスオさん「そうなんですよ。ダメなんですよね(苦笑)」

マスオさん「自分でもやめなきゃ、やめなきゃって思ってたんですけど」

佐藤「仕事中にパソコンでこっそりと作ってたと。裏でMovieMakerを立ち上げて?」

マスオさん「そんな感じです」

佐藤「仕事中はまずいですよね。せめて家でやられたら良かったかも。とはいっても、勝手に転載はまずいですが」

マスオさん家にパソコンないんです……

佐藤「それは……」

マスオさんこんなことを言ったら怒られるかもしれないんですけど、正直助かりました。やめなきゃって思ってたのに、やめられなくて。もしもご連絡を頂かなければ、いつまでも同じことを続けてたかもしれないですね。」

佐藤「何かのお役に立てたのならよかったです。お話お聞かせ頂き、ありがとうございます」

お役に立てたのは良いのだが、なんだか複雑な気持ちになってしまった……。

とはいえ、洗浄完了だ! 無事に物事はクリアになった。マスオさんも何かの踏ん切りがついたみたいだし。よかったよかった。そうだ、そういえば羽田空港でお土産を買っておいたんだった。それを車から取り出すと、マスオさんは「申し訳ないですね」と言いながら、頭をかいた。

はい、これにて一件落着~! なのかな?

なお、持参したのはサザエさんのファミリーケーキである。

山口のマスオさんにも、サザエさんのような明るい毎日を過ごして欲しいと願う。マスオさん、また機会があればどこかで……。もう勝手に記事を動画化したらダメだぞ!

Report:洗浄カメラマン 佐藤英典
Photo:Rocketnews24
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