【特殊な浴場で働く人に聞いた「よいお風呂屋さん」の見分け方 / 本日4月26日は『よい風呂の日』だよ〜!(後半)】

阿輪「もし俺がお客さんの立場だったら、まずは店に電話するね。金額でも時間でも何でもいいから確認するんだ。そこで相手の電話対応が雑だったらその時点でパス」

──厳しい〜!

阿輪「そんで店に着くだろ。まずチェックするのが、受付の周辺にタオル袋があるかどうか

──タオル袋? 脱衣所とかに置かれている大量のタオルとは違うんですか?

阿輪脱衣所っつーか個室な。そこに置いてあるのは違う。タオル袋っつーのは、文字通りタオルが詰まった袋さ。ゴミ袋くらいのサイズで、布製で中身が見えなくなっている。うちらの業界は大体タオルの洗濯を外注してて、いつも営業前に業者さんがタオル袋にタオルを詰めて持ってきてくれるんだよ」

──アウトソーシングとか言うヤツですね。

阿輪「そんで使用済みのタオルをまたそのタオル袋に詰めて業者さんに返すと、業者さんは洗濯して翌日持ってきてくれる。要は、店に置いてあるタオル袋には、使用後の色々なモノも含まれてるってことなんだ。

そんな生々しいモノを客の目の届く場所に置いている店は、残念だけどプロ意識が欠けてるって思っちゃうな。だから、もし店の受付周辺にタオル袋が見えたら、俺は『あらら金が足りなかったわ』とかなんとか適当なこと言って、そのまま帰っちゃうね」

──さすがプロ中のプロの目! お風呂界の特殊部隊員ともなると、見ているところが全然違いますね!

阿輪「逆に、俺は写真なんて気にしねえ。つーか、見ねぇ。こいつは大丈夫だと思ったボーイに『お兄さんのオススメでヨロシク』って言って終わりさ。写真と実物が違うなんて当たり前で、むしろ自然なことだと思っているから。まあ、あまりもド派手に修正してる店はさすがに問題だけどな。

つまり、手がかりになるのは人だけってことさ。『写真を信じるな! 自分が信じた人を信じろ』ってな」

──カッコいい〜〜〜〜〜!

阿輪「あと、最後に言わせてくれ。いい風呂屋っていうのは、いい従業員を抱えている店だって、さっき言ったよな」

──はい。

阿輪「“いい従業員” ってのを具体的に言うと、プロ意識、責任感を持ったヤツらのことさ。男とか女とかオカマとか一切関係ないぜ。そしてそんな連中は、最終的には間違いなく “いい経営者” の元に集まる。利益だけでなく、従業員の生活も考えて、ビジョンも責任感もしっかり持っているヤツな。

つまり、いい従業員というのは、いい経営者の元に集まり、いいお客さんを呼び込んで、いい流れを作り出すんだ。いい風呂屋っていうのは、このサイクルがいい感じに回っている店のことだと思うぞ」

──なんか深いっすね!

阿輪「なんでこんなことを言うかっていうと、逆に全てがクソなサイクルで回っている店も少なくないからな。クソな経営者の元にクソな従業員が集まって、客は大体クソという。そんな店を見分けるのには、ボーイの態度がヒントになることが多いからな。ちゃんと見ろよ。

そして、もし『自分が今働いてる店がまさにクソな方だ』と思ったら、すぐにそこから逃げ出すんだ。まあこの業界だけではなく、カタギの企業でも同じだと思うがな」

──確かに、それはブラック企業の対応とかにも当てはまりそう……。

阿輪「早い話、自分がいい風呂屋に巡り会いたければ、つまりいい感じのサイクルに乗りたければ、まず自分がいい客であらねばならないってことさ。少なくともマナーを守れってことさ。ちゃんと爪を切れってことさ。店の女性には敬意を持って接しろってことさ。要は自分を磨けってことさ。

『金払えば何してもいい』って思っているヤツなんて、それだけで失格だからな。かと言って、馬鹿正直に客引きに付いて行くんじゃねえぞ。あとは……まあ、あまり深く考えずに楽しんでくれ。『考えるな、感じろ』ってな」

──それ言いたかっただけじゃないっすか……。

これにてインタビューは終了〜! どうだろう? あなたのバスタイムの参考になる内容はあったかな? 温泉の効能とかお湯の質には一切触れずに、「人」だけについて語っていたのが、ハードボイルドなプロって感じだよね。さすがお風呂の特殊部隊!

個人的には、いつも行ってる銭湯のおばちゃんがお姫様扱いされていることに、ちょっとビックリしたかなぁ。とにかく、阿輪さんも言っていたように、銭湯や温泉に行ったときにはマナーをしっかり守ってね。あとは考えるよりも、感じることが大事みたい。それでは〜Have a nice bath time!

Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.