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2016年1月、日本中に「ウソだろ!」という衝撃を与えたバレンタイン商品といえば、『明星一平ちゃん 夜店の焼きそば チョコソース味』である。インスタント食品史に残るであろうそのマズさは、ある意味で清々しいほど鮮烈なものであった。だがしかし……。

超一流食品メーカーである明星食品が、意味もなく激マズな商品をリリースするだろうか? これは何か裏があるに違いない……。というわけで、明星食品に問い合わせたところ、エラい人が会って直接 話を聞かせてくれるというではないか。ウホ! 激マズとか書いちゃってるし、やべえ気まずい……!!

・マジでエラい人が対応してくれた

今回話を聞かせてくれたのは、明星食品のマーケティング本部のトップ「中村武マーケティング部長」と、マーケティング部の一平ちゃん責任者「松川賢一副主事」のお二方。先述したように筆者は “激マズ” と書いたにもかかわらず、お二人は笑顔で応対してくれた。紳士で助かったぜ……! そして始まった約1時間のインタビュー。詳細は以下をご覧いただきたい。

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筆者:「今回は激マズと書いたにもかかわらず、お話を聞かせていただけるということでありがとうございます。さっそくですが、“一平ちゃん チョコソース味” はどういった経緯で発売となったんでしょうか?」

松川氏:「弊社では、チョコソース味だけではなく月に約1本のペースで新しい味の一平ちゃんをリリースしております。そのシリーズの一つとして、バレンタインといえば……ということでチョコソース味を発売させていただきました」

中村氏:「実は約1年前から松川からチョコ味の話は聞いていました。ですから約1年がかりの構想ということになります」

筆者:「なるほど。1年間もチョコ味を温め続けていたのは、むしろスゴイと思います。やはり開発には苦労されたんでしょうか?」

中村氏:「私は当初、チョコポテトチップスや柿の種チョコ的な “甘じょっぱい” 味がいいのでは? と思っていたんですが、何度も試作を重ねた結果、甘さを強調する仕上がりになりました」

松川氏:「我々は通常、麺チーム・ソースチーム・かやくチームがそれぞれテーマに沿って開発を行うんですが、細かな調整を含めると100回通り以上のレシピは試したと思います」

筆者:「100回! それはスゴイですね!! いやー、それなのに激マズとか言っちゃってすみません……」

中村氏:「いやいや。私も昔ならシュンとしていたんでしょうが、今は話題にならないことの方がツラいです。そういう意味では、毎月リリースしている新味の一平ちゃんの中では、断トツの反響をいただきました。もしかしたら明星食品全体でも、ここ数カ月で一番反響があったかもしれません」

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筆者:「なるほど。でも、王道の一平ちゃんがある中で、御社はアグレッシブに色々な展開をされていますよね。ちなみに、レギュラー商品だけでどれくらいの売り上げ規模なのでしょうか?」

松川氏:「一平ちゃんは、ソース味・塩だれ味・辛子明太子味がレギュラー商品なんですが、その3つを合わせると9割くらいにはなると思います」

筆者:「ほうほう。でも残りの1割のために、しかも毎回売れる商品ばかりではないのに、わざわざ新商品を開発するのは面倒ではないですか?」

中村氏:「お客様のアンケートなどを見ると、一平ちゃんは “若い” というイメージを持っていただいているようです。親会社が日清食品ということもありますが、社風的にどんどん挑戦していこうという空気はありますね。

また、おかげさまでレギュラー商品が支持をいただいており、“帰る場所” があるというのも大きいです」

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筆者:「ふむふむ。ちなみに、他社さんのカップ焼きそばなども食べられたりしますか? 例えばペヤングとかUFOとか」

中村氏:「もちろん食べますよ。カップ焼きそばやインスタントラーメンに限らず、世の中で支持されているものなら一度は試してみます」

松川氏:「特に若者に支持をいただいている一平ちゃんなので、お菓子なども参考にしますね」

筆者:「なるほど。ちなみに開発の際は、やはり女性目線だったりするんですか? 例えばサワークリーム味とかトムヤムクン味、パクチー味なんかがあったら女性ウケしそうな気もするんですが」

中村氏:「たしかに女性は重要です。ただカップ焼きそばだけを見た場合、男性にも支持される商品でないとダメなんです。これが難しいところですね」

松川氏:「開発の段階ではトムヤムクン味も試したことがあります。その辺りは十分に製品化の可能性はあると思いますね」

筆者:「ちなみに、“これ外したな~” というのは何味ですか?」

中村氏:グリーンカレー味ですかね」

松川氏:「だと思います」

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筆者:「わたし、これ食べてすごく美味しかった記憶がありますよ。本格的なグリーンカレーを再現してましたよね」

松川氏:「そうなんです。実は日本エスニック協会から金賞もいただきまして、本格的な味には自信がありました。ただ本格的すぎて、受け入れられなかったのかな? と思ってます。トムヤムクンなどの東南アジア料理が一般的に普及しているので、イケるかと思ったんですが……」

中村氏:「味と売り上げは必ずしもリンクしないですね。そういう意味で方程式は無いのだと思います

筆者:「ですよねー。我々ライターも同じです。ちなみにお二人のやり甲斐はなんでしょう?」

松川氏:「ブランドとして100億円を超える一平ちゃんに携われるのはやり甲斐がありますね。一平ちゃんが元気だということは明星も元気だということですし」

中村氏:「わたしは新商品を開発する際、どんなに小さなことでいいから “NEW” であってほしいと思っています。これだけものがある時代ですから、全くの新製品は難しいとしても、新しさを追い求める姿勢は大切にしたいですね」

筆者:「チョコソース味に代表されるように、なぜ一平ちゃんがアグレッシブなのかなんとなくわかった気がします! 本日はお時間いただきましてありがとうございました!」

……と、一平ちゃんチョコソース味は「帰るところがある強さ」と「アグレッシブな社風」から生み出された商品のようだ。開発に手間暇をかけた上、何が飛び出してくるかわからない一平ちゃんから、今後も目が離せないぞ! 1年に1回くらいはぶっ飛び系をお願いします!!

取材協力:明星食品
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

▼左が松川賢一副主事、右が中村武マーケティング部長。両方ともマジでエライ人なのだ。
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