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いまだかつて、これほどまでに「地獄」という言葉が相応しいバンドがいただろうか? いや、いないはずである。おそらくこの先も、彼らを凌ぐ地獄のバンドは現れることはないだろう。なぜなら、日本の音楽界にあって強烈な異彩を放ち、25年もの長きにわたって活動してきた2つのバンドが1つになったからだ。

巨大な大きな渦が重なりあって、さらに大きな渦になる。そんな緊張と恐怖、偉大さと高揚感に満ち満ちている。「筋肉少女帯人間椅子」とは、一口に名状しがたい大きな渦だ。巨大な混沌なるうねりは観客を巻き込み、2015年6月7日東京・渋谷公会堂を文字通りに揺らした。ダークサイドの面々は、爽やかならざる雄たけびを上げ、「アロハオエ!」と夏の兆しを届けたのである。

・唯一無二の地獄のバンド

この日の出演バンドは、活動25周年を迎えた人間椅子と、長年彼らの盟友として同じく長き活動を続けてきた筋肉少女帯である。そしてもうひとつ、これまでに明確な活動歴を持たない真新しいバンド「筋肉少女帯人間椅子」である。そう、2つのバンドが合体してライブを行ったのだ。いわゆるサブカルチャーを代表する2大バンド、これがひとつになった以上、これに勝る地獄のバンドは存在するのだろうか?

・地獄のヒットパレード

ライブは人間椅子と筋肉少女帯がそれぞれのパフォーマンスを惜しみなく披露した。この日はそれぞれのファンに配慮してか、セットリストは往年の名曲のオンパレードである。

人間椅子は『人面瘡』、『死神の饗宴』、『相剋の家』などの定番曲を披露。一方の筋肉少女帯は『日本印度化計画』、『踊るダメ人間』、『イワンのばか』で迎え撃つ。まさに地獄のヒットパレードに、観客はこの日の主役筋肉少女帯人間椅子を見る前からボルテージマックスだ。

・最初から最後まで悶絶!

主役を迎えるまですでに2時間を経過しているというのに、後半にはさらに濃い内容が続いていく。入れ替わり立ち代り両バンドのメンバーが入り乱れながら、ブラックサバスの『Iron Man』、KISSの『Detroit Rock City』。筋肉少女帯の『日本の米』、人間椅子の『りんごの泪』など、ビックチューンが炸裂しっぱなし。ファンは息継ぐ暇なく、地獄のロックに身もだえしたに違いないだろう。ライブのすべてを通して悶絶しっぱなしだったに違いない。

・最後に『地獄のアロハ』

そして最終的にアンコールで全メンバーにより、筋肉少女帯人間椅子のデビュー曲『地獄のアロハ(Heavenly Version)』が披露された。アンコールまでの道のりはかなり長い戦いである。本当にまばたきの暇も惜しいと感じるほど、濃厚かつ重厚な内容だ。あえてお酒に例えるなら、チェイサーなしで銘柄ウイスキーを片っ端から飲んでいる感じ。後になるほど心地よく、酔いがより深くなっていくというのに……。

・ソロの長さに大槻氏も思わず座る

最後の最後でもっとも強烈な一発が待ち構えていた。全員が楽曲制作に携わったこの曲は、実力者全員のアイディアが詰め込まれているうえに、7分を越える超大作である。ボーカルの大槻ケンヂ氏はソロの長さのあまりに、途中でパイプ椅子で休憩していたほど。聞き応えアリまくりである。

・さよなら天国

よもや地獄のロックに酩酊した観客も、この一発で激しく脳と身体を揺さぶられ、きっと「さよなら天国」と思うに至ったに違いないはず。いやもしかしたら、地獄のロックに陶酔して夢見心地。天国に居るかのような境地に達したのかもしれない。

とにもかくにも、これほどまでに華々しく激しいデビューを飾ったバンドは彼らをおいてほかにいない。筋肉少女帯人間椅子はある意味反則の新人バンドではないだろうか。はたして地獄の饗宴は再び催されることになるのだろうか? 気になるところである……。

取材協力:徳間ジャパン
Report:佐藤英典
Photo:柴田恵理

▼筋肉少女帯人間椅子デビュー曲『地獄のアロハ』

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