飲食店を続けるのに、立地は欠かせない要素である。むしろ立地がそのお店の運命を左右するといっても過言ではないだろう。だが、ごくまれに立地条件を無視するかのように長らく愛され続けるお店が存在する。おそらく、東京・千駄ヶ谷の洋食・カトーもそんなお店なのではないだろうか。
なぜなら、比較的閑静な住宅街にあるだけでなく、お店の外観は入りやすいとは言えない。いや、入りづらい。その昔、テレビ番組で話題になったときよりもキレイにはなったが、ふらりと立ち寄る感じではなく、お店の様子を知っていなければ遠慮してしまうかも。しかしここは多くの人の胃袋を満たし続けているのである。
・大盛りで有名な店
このお店は以前、カレーライスの大盛りで知られていた。その量はハンパではなく、軽い気持ちで「大盛りで」などとお願いしようものなら、返り討ちに合いそうな勢いだったのである。私(佐藤)の見間違いでなければ、私が訪問したときには、「しばらくの間、カレーの大盛りは休みます」と書かれていた。
・懐かしさを覚える店内
しかも昼をとっくに過ぎた時間に入店したため、カツカレーは品切れ。仕方なく、あなごカレーを注文したのである。店内は昭和の佇まいが色濃く残っている。テーブルや椅子からは年季を感じ、かすかに表面に油膜が張っているような感触。もしかしたら、揚げ油が店内に回っているのかもしれない。しかし不快という訳ではなく、ほのかに飴色を帯びたそれらを見ていると、懐かしささえ覚える。
・昭和を感じさせるカレー
しばらくしてカレーが運ばれてきた。私は器を一目見て、小学生くらいの記憶がよみがえった。不意に同級生宅で食べさせてもらったカレーライスを思い出したのである。色艶といい、器から少しはみ出す感じといい、大変家庭的なカレーだ。見た目からして甘口のように思っていたのだが、これがちょっと違った。
・思った以上に辛かった
口当たり滑らかで、ストレートな辛さを感じないのに、食べているうちにボディブローのような辛味が舌を刺激し始めるのである。先入観で家庭的イメージを勝手に抱いていた分、余計に辛く感じるのである。すると、お店のおかみさんが、「辛いでしょ」と一言。辛いのはそこまで苦手ではないが、先に言って欲しかった。
とはいえ、そこはかとなく漂う昭和感はカレーの味も含めて、安心感を覚える。こんなに安心できるお店が近くにあったら、やっぱり通ってしまうに違いないだろう。近所の人が親しみをもって、長らく愛するのにも納得である。
・今回紹介した店舗の情報
店名:洋食・カトー
住所:東京都渋谷区千駄ケ谷1-23-10
営業時間:11:30~17:00頃
定休日:土、日、祝
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24