ごく一部の漫画家が極限状態のとき限定で体験しているとウワサされているのが、“神との交信” ならびに “神とのシンクロ” である。漫画界の神といえば……そう! 日本漫画界のスーパーレジェンド・手塚治虫先生に他ならない。

そんな手塚先生の魂が自らの身体に舞い降りることを「手塚先生降臨モード(てづかせんせいこうりんもーど)」と私(筆者)は勝手に呼んでいる。

はたして手塚先生降臨モードとはどんな状態なのか。そして、どのような発生条件下で降臨するのか? そのあたりを今回は徹底的に解説してみたい。あまり褒められたものではないが、“いつもギリギリな漫画家” ならば、絶対に読んでおいて損はない。

・スーパーサイヤ人的な状態になるのが手塚先生降臨モード

まずはどんな状態になるのかを説明したい。手塚先生降臨モードに入ると、まず「筆に迷いがないペン入れ」が可能となる。たとえ下書きをしていなくても、ボンヤリと「正解の線」が見えてしまうのである。ゆえに、超絶マッハに仕事が終わるという寸法だ。

また、たとえネームやラフを描いていなくても、自らのマンガの登場人物が勝手にセリフを話し始め、そのままペン入れしながらストーリーは展開して行き、気がづいたらオチまで付けてくれていた……といった “奇跡の一発描き” も可能な状態になるが、編集者が泣くので絶対にやってはならない。せめてネームくらいは見せるべきだろう。

・何が起きても動じない集中力

さらに集中力が極限まで研ぎ澄まされ、よけいな雑音は一切耳に入らなくなり、自分のオナラの音にもまったく気付かないほどの集中力を維持できるようになる。小学校の図工の時間に、時が過ぎるのも忘れて作品を作っていた……みたいな状態だ。

だが、スマホで設定したアラーム音にも気づかないので「15分だけ寝よう」としたところ「ガッツリ8時間寝ていました」的な地獄展開になったりもするので注意が必要。いや、そもそも手塚先生降臨モードであればベッドに寝転ぶなんて展開にはならない。なったとしたら、それはまだまだ手塚先生降臨モードになっていない証拠とも言えよう。

ふいに尿意や便意を感じても「少しくらい漏らしてもいいか」と、何かにキマったようなマッタリ系の思考回路になりつつも、あと1ミリで漏らすというタイミングで「このコマを描いてからトイレに行く!」と、ギリギリ土俵にノコッタノコッタできる火事場のクソ力(くそぢから)が発揮できるのが手塚先生降臨モードたるゆえんなのだ。

・間違いやすい “降臨” もある

また、気分転換のために窓を開けたら、東京・東長崎の「トキワ荘通り」の景色が見えてしまったり、出前のラーメンを持ってきてくれた中国人のオッサンが「松葉のお姉さん」に見えてしまったり、何を食べても「ンマーイ!」と言ってしまったりする場合は、単に『まんが道(藤子不二雄A)』の読み過ぎからくる幻覚なので注意しよう。

ちなみに現在も東長崎には中華料理「松葉」さんが健在であるが、ラーメンが美味いのはもちろん、実はチャーハンと唐揚げが激ウマであることを付記しておきたい。マジで美味い。そして、店内に飾られているサイン色紙にも注視していただきたい。

・魂を呼び寄せるシャーマニズム

それはどうでもいいとして、要するに「手塚先生降臨モード」になると、人間のパワーを超えた超絶スピーディーなマンガ執筆が可能になるわけだ。別に何かのクスリをキメているわけでもなく、“ナチュラルに天空から手塚先生のパワーを体全体で感じてしまう” という、ある意味シャーマン的なスピリチュアル現象である。

──漫画家ならば、いつなんどきでも降りてきて欲しい漫画界の神・手塚先生。だが、おいそれと「じゃあ降りましょうか」なんて手塚先生が言うはずがない。空から「そんな簡単に降りてきてたまるか!」という声も聞こえてくる。生半可な気持ちで手塚先生を降臨させようとしたら廃業に追い込まれる可能性もあるので気をつけて欲しい。

ということで、いよいよ次ページ(その2)に、「手塚先生降臨モードを発生させるための条件」を書くとしよう。手塚先生の力を借りないと締切に間に合わない漫画家は必読だ! だがしかし、漫画家を担当する編集者のみなさんは、次ページに書いてあることを絶対に読んではならない。漫画家ならびにクリエイターのみ(その2)へGOだ!

情報提供: マミヤ狂四郎
執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.